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とうもろこしの皮を剥く ✈︎(コロナが5類になった日)

5.8 月

 褒められる事が好きなタイプなので、連休は夫の好きなものばかり作ってしまった。(どうせ作るなら褒められたいじゃない)
 初日こそ手巻き寿司だったけれど(カレーが食べたいと言い張る夫をねじ伏せて)、コロッケ、ハンバーグ、唐揚げ、カレー、ささみカツ、コロッケパン、生姜焼き。間にマックを挟んだ。
 実にやんちゃである。昼・唐揚げ、夜・カレーなんて日もあって、もう完全に成長期。身長伸びてるかもしれない(体重は伸びてた)。
 で、胃がボロボロです。連休明けの月曜日、胃が、もたれにもたれてる。もうそれ以上もたれると倒れるよってぐらい、もたれてる。あながち比喩でも無く。

 もたれた胃を抱えながら、今日からコロナが5類になる。
 ああ、コロナが5類になるんだなぁと思うとなんだか感慨深く、甥っ子の成長を見守る様な気分で、あの頃を思い出す。

 2年前にコロナ渦になってからの1年を振り返って書いた自身のエッセイを読み返してみた。

ブルーインパルスが飛んだ日の事を思い返すと、今でも胸が締めつけれる。

2020年5月 ブルーインパルスが飛んだ

 ブルーインパルスが飛んだ映像をニュースで見た。テレビで見たブルーインパルスの映像は美しく、確かに少し感動的で、けれども胸が苦しくなるものであった。

「医療従事者にエールを」日々言われていた。

 もう一度言う。ブルーインパルスってやつが飛んだらしい、と言うことを私達は、ニュースで見た。
 仕事の合間の休憩中、休憩室の窓をあけ、看護師と医療事務のスタッフと、等間隔に極力離れながら食事をしていた。休憩室にはテレビがついていた。
「何これ綺麗だね・・」
 言葉少なに食事をしている中ニュースを見ながら誰かが言った。
「医療従事者にエールを送るために、ブルーインパルスが飛んだらしいよ。」
 テレビに1番近い誰かが説明する。
「ほんとだ、綺麗だね・・この辺にも来たんだね・・」
 惚けながらテレビを見ていた。私達は医療従事者だった。

※中略※

私たちも「医療従事者」では無いのか?

この先に出口があります。[この1年とこれからの事]より



近隣病院でクラスター発生の電話を受けた時の手の震えは今でも、感触が残っている。気がする。

秋 クリニック近隣の病院でクラスターが発生した。

 知らせを受けたのは私だった。
「クラスターが発生しました。当分の間、外来診察、入院患者の受け入れの停止、CT・MRI等の検査の受け入れの停止が決定しています。申し訳ありません、貴院からの紹介や検査予約をしている患者様ですが・・」と続けるいつもより畏まった病院の事務の方の言葉に被せる様に言っていた。
「もちろん、当院からの患者様への説明はこちらで引き受けさせていただきます。」必要以上に謝って欲しくなかった。この場合「頑張ってください」も適切では無い気がした。
 私に出来ることは、私が出来ることを引き受ける事だけだった。

この先に出口があります。[この1年とこれからの事]より


 マスクや防護服不足で喘いでいた時届いた最初の寄付を思い出すと涙が滲む。


 絶対に忘れないと思っていた。忘れてなんかやらないと。それでも日々は朧げになり、『絶対に、絶対に忘れない』と思っていたあの日々は、アクリル1枚隔てた様に、甥っ子の成長の様にくっきりとしない。

 それが良いのかもしれない。忘れるから生きられるって、忘れる事が出来るから気が狂わないんだって、そういう事があるって、誰かが言っていたもの。

 2類から5類に変わったところで、(医療費は別として)何も変わんない、コロナはコロナだし、感染力も変わんないんだし。って少し思っていたけれど、心は軽くなった。1枚1枚とうもろこしの皮を剥く様に、私がセミだったら脱皮しまくって今頃米粒だなと思う程に(少し浮かれている)。

 今ブルーインパルスが飛んだら、私は素直にはしゃぐのだけれど。

 「人間みんなで頑張りました」の花丸が欲しい。
 私達は頑張ったのだし。
 私は褒められたい人間なのだ。


 ゴールデンウィーク明け、うちのクリニックでのコロナの陽性者は案外急増している。
 コロナだし…でも、5類だし…でも…と心は右往左往して、どういう心づもりで居れば良いのかわからない気分ではあるけれど。

 とりあえずは褒めよ讃えよ。

最後までありがとうございます☺︎ 「スキ」を押したらランダムで昔描いた落書き(想像込み)が出ます。