オクノモト

好きなもの:山椒魚は悲しんだ。の書き出し、喫茶店の硬いプリン、5月の公園。 40代、…

オクノモト

好きなもの:山椒魚は悲しんだ。の書き出し、喫茶店の硬いプリン、5月の公園。 40代、(小さな)医療法人役員、毎日が少しだけ楽しければいいなと思ってる☺︎

マガジン

  • エッセイ𓆸こういう事を考えている

    何も考えず生きていくのは楽で怖いので、時々考えるようにしている。 思いつくまま。エッセイ。

  • 日々のこと

    年齢や仕事など、もろもろに折り合いを付けながら、ジタバタとした日々を。

  • 生きるのに必要、と思えるnote

    いっぱい笑えたり。いっぱい泣いたり・いっぱい学べたり出来ます。電車の中では読まない方が良いでしょう。

  • 短歌にまつわる

    短歌にまつわる事のエッセイなど

  • ショートストーリー

    短歌小説。

最近の記事

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それってほとんどアイラブユーじゃん。(散文)

ある火曜日。2023.7.25  クリニック(職場)の休憩室のエアコンは直した3日目にまた壊れた。  昼。灼熱の休憩室か、ついさっきまでコロナ陽性者を診ていたクリニックの片隅か、悩んでクリニックの片隅でサンドウィッチを齧る。  最高気温37度だって。  発熱外来の予約電話が鳴り止まない。  1日1人は必ず「(電話つながん無くて)来ちゃった」っていう発熱患者がいて、「遠距離恋愛中の彼氏じゃ無いんだから」って思う。ご本人に「遠距離恋愛中の彼氏じゃ無いんだから」っていっても

    • 怖いこと

      2024.4月 子供の頃、死ぬのが怖かった。 怖くて怖くてたまらなかった。 あの頃死ぬ事は、ママとパパと(ついでに兄にも)会えなくなるということだった。 次に怖かったのが誘拐される事で、誘拐も会えなくなるから。 -完全に母に見せられていた火曜サスペンスの影響だったと思う。火サスは私の人間形成に大きく関わっている。- 子供の時、だから私はいつも毎夜、死神にも悪い大人にも見つからない様に、布団を頭まで被って寝ていた。布団にそっと潜り込む、両手両足を伸ばして布団の四つ隅をピ

      • 私きっと慣れないよ。

        ちょっと振り返って2月のこと 「ここに骨壷でいてもおかしくなかったなぁ」 炬燵で寝転がりながら父が言った。 …本当だよ 私にもリビングに骨壷が置かれている光景が容易に想像できた。 「神様がパパを返してくれた。最高のプレゼント。」 2日後が誕生日の母が涙ぐみながら喜んでいる。 同じリビングで、同じ日のことだ。 …カオスだ。 ※ 1月突如入院した父は、家族に大きな打撃と数えきれない恐れを植えつけたまま、「このままだと精神的に死んでしまう」となかば主治医を脅す形で、ま

        • 頭の中の蜘蛛の糸

          2024.1月末 白い半透明の糸が1本、左右に渡っている。 その糸は時にピンと張ったり、だらりと垂れ下がったり、太くなったり千切れそうな程に細くなったり、朝露をたたえたり、カラカラに乾いたり、変容していく。 ああ、蜘蛛の糸だ。と思う。 横に張った、蜘蛛の糸。 という情景がもう1週間頭の中に浮かんでいる。「切れないで欲しいと」ずっと。ずっと。ずっと、 原因不明の発熱で父が入院してから約2週間。コロナ禍から続く面会制限で会いにいけず、かといって父のLINEに既読もつかず

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        それってほとんどアイラブユーじゃん。(散文)

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        記事

          水玉の世界を生きている

          2023年、年末 あれ、あの人最近見かけないな。 職場に向かうバス停で、ふとそう思った。 朝、テレビで目にした『今年亡くなった有名人特集』のせいかもしれない。 1年を振り返るみたいに思い返す。 クリニックで働いている。 患者さんの中にはやっぱり印象的な方もいて。 祖母に瓜二つのあの方や、おばあちゃん役の片桐はいりさんにそっくりなあの方や、来たことを忘れて日に何度も来ちゃうあの方や、笑い方が可愛らしいあの方や…中には、理不尽な事で1度怒鳴られたあの人や(案外忘れないもの

          水玉の世界を生きている

          それってやっぱりアイラブユーじゃん?(散文)

          12月の、たぶん今年最後の満月の日 四分の1ほど残ってた綿棒を落っことして全部ダメにしちゃったのはクリスマス前で、ひとり大騒ぎしていたら夫に「俺、綿棒使わないしな」って言われた。 クリスマスを何日か過ぎた夜、会社から帰ってきた夫が「買ってきたよ」って渡してくれたのは綿棒だった。 毎日毎日買い忘れて帰ってくる私に気がついていたんだって。 それってやっぱりアイラブユーじゃん 「愛してるってこと?」 綿棒を両手で掲げて感動に打ち震えている私を夫は呆れ顔で見ていたけれど。

          それってやっぱりアイラブユーじゃん?(散文)

          それはもう綱渡りをする人みたいに

          12月末 すごく年の瀬。 遅い通勤、駅までの道を俯いて歩いていたら視界に靴下が入った。 靴下? ちょっと色褪せた水色地、側面に沿って白い線が一本入った靴下がすいすい視界の左上を出たり入ったりしている。 え?と思って顔を上げたら2メートルほど先で若い男の子が右足の靴を脱いで逆さまにしていた。バランスをとる靴下の右足は器用で、綱渡りの人のそれの様で、何度かすいすい、すいすーいとした後に一度も地面につくことなく、またすいっと靴に吸い込まれていって、素晴らしかった。 私だっ

          それはもう綱渡りをする人みたいに

          もう味がないガムを噛み続けるみたいに

          2023年12月、今年もあと1週間ちょっとの水曜日。 仕事帰り夫にLINEをした。途中駅にいた夫から「おんなじ電車になりそう」とLINEが返ってきて、少し嬉しい。 同じ電車になったって駅からのほんの10分弱の帰り道が一緒になるだけだ。だけなのに一緒はうれしい。 毎回毎回、なぜだか突然の一緒はワクワクするのだ。 唐突に一緒の帰り道、いつもの倍は饒舌になる私は、たぶん後ろから見たらはずんでいるだろう。相手はただ、夫なのに。 夫が乗り込む駅で本当に同じだと確認しあった、電車

          もう味がないガムを噛み続けるみたいに

          たこ焼きを丸くしてよ

          2023.12月のある週 Aさんは旦那さんの強引なところが本当に嫌なんだって。 Bさんは、旦那さんの優柔不断なところが嫌だし、Cさんは旦那さんの愚痴っぽいところがたまらなく嫌らしい。 (今週のスタッフとの会話より。) 「でも、結婚前からそうだったでしょう?」 当たり前の質問をしてみたら、結婚前はそこが好きだったんだよねってみんな口を揃えて言った。 「男らしいと感じたんだよね(強引さ)」 「優しいと思ってた(優柔不断さ)」 「可愛いなぁと思ってさ(愚痴)」だって。 「

          たこ焼きを丸くしてよ

          call and response.(明日はデート)

          2023.12.8 職場で出た今日のお弁当はオーベルジーヌだった。オーベルジーヌにはじめて出会った。 オーベルジーヌ、芸能人がよくロケ弁No.1とかって褒めているカレー屋さん、テレビでよく見る。今日のお弁当はそこのカレーで、(テレビでよく出てきたものとは弁当の形状が少し違って)立派などでかい箱に入っていた、どでかい箱は横にちょろっと紐が出ていて、紐を引いたら湯気が出て自力で温まってくれるやつ、温まる装置まで付いていて、つまり、どでかくて立派で、すごく重い。 お弁当が余っ

          call and response.(明日はデート)

          時差

          2023.11月末 水曜日。身体が軋みはじめた。 節々が痛かったり、肩口に予防接種の後みたいな痛みがあったり、もしかして発熱?と思ってピッとして…平熱、ピッとして平熱、ピッ…絶対にこないだのあれじゃん。と気づく 土曜日に階段から転けて、ひい.ふう.みい..時差が過ぎる。 ※※※ 先々週のこと、バルミューダの電気ケトルが壊れた。買ってピッタリ5年。まあそんなものか。 直せるような気がして(なんだか自信満々で)裏のネジを開けた。 (ネジは星型で、星型のネジは素人さん手

          戻らない事と。

          2023.11.25 日曜日。 寒い。朝起きたらリビングの床だった。リビングの床で緩い床暖に守られたままそれでも寒さで起きる。冬がきた。 またやってしまった、と思う。化粧も落としていない。 冬場はうだうだとしてしまいリビングで寝落ちが多い。 あーあと思う。ひとしきり後悔した後に無かった事にしようと顔にスチームを当てる。スチームをあてながらスマホを見て丁寧に生きる人のnoteを読んだ。 規則正しい生活、いつそんな生活をできる様になるのか。 スチームを浴びて、いつもより

          戻らない事と。

          よだかになった日

          11月のある土曜日、東京が突然冬になった日。 2023.11.11 「トンネルを抜けると雪国であった。ぐらいに突然の冬だね。」 環七を走り出して何個目かの陸橋の上、頂上から少し下ったあたりで夫に言った。 幹線道路の陸橋(下の交差が道路の場合のやつ)を私はワープだと思っていて、もしくはズルだと思っていて(大概は陸橋横の道の方が信号待ちで並んでいるから)、少しの罪悪感をいつも抱えてしまう。けれど今日は不意の開放感。トンネルを抜けたみたいな。雪は降ってなかったけれど。 「そう

          よだかになった日

          老眼鏡と恋と愛

          「ケント・デリカットみたい、やめてよ愛が枯渇しそう」 今週の後悔。 10月、日曜日。 「老眼鏡を買おうと思う」 朝、少しだけ改まった夫に言われた。 夫が、ついに。 夫と私は同じ歳で、だからかなんだか、まあ、割とショックだ。 まあ、そういう歳だよね、うん、うん。恋だの愛だの言っていた私たちは、老眼鏡をかける歳になった。ついに。 恋だの愛だのはまだ言うつもりだけれど。 高校生の時、眉が薄くてアイブロウを使おうとした私に「眉毛ってね描き始めると、ああもう頑張んなくて良いんだ

          老眼鏡と恋と愛

          安全なこっち側の世界で卵の如く(散文)

           9月、台風がきた。金曜日  雨は言われていたよりもひどくなくて、少し肩透かし。被害が無くて喜ぶべきだ、わかっている。喜んでいるしホッとしている、けれど少しだけ残念に思ってしまうところもあり、私の大人の部分が罪悪感を抱える。私の中にはまだ初めての雷に興奮したあの頃の、保育園児の私が生きている。脈々と。  昼。歯医者に行こうと外に出たら寒くて、出掛けに部屋に戻ってシャツを羽織った。東京で真夏日じゃ無いのは2ヶ月ぶりだと、テレビが言っていたのを思い出した。  前回虫歯はない

          安全なこっち側の世界で卵の如く(散文)

          これもまた、恋の様なもの

          9月、夏の様な秋  靴下の片方が突然行方不明になる事は年に1回はある様な『よくある事』だ。昨日まできちんとふたつ揃っていたのに。 ある土曜日。前回の洗濯物がたたみきれずにカゴに溜まっていて(平日のたたみが追いつかなくて、細々したものを残してしまう悪習が私にはある)今日のものと一緒にたたむ。  いつも最後にたたむ夫の靴下が奇数で、ああ…と思う。ああ、また無くなってしまった。  夫は常に同じ黒い靴下を会社用に買っていて、購入時期やおろした時期の違いで色やくたびれ具合が微妙に

          これもまた、恋の様なもの