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金原ひとみ「腹を空かせた勇者ども」感想~娘とママのぶっ飛んだブルース~

『母と娘の物語』
優しくなれるほっこりしたお話もあれば、女同士だからこそ抱く感情は根深く複雑なお話もある。

金原さんが描く『母と娘』の物語は、今までも型にとらわれない恋愛や生き方をするぶっ飛んだ人たちの物語は知っていたが、こんな破壊力のある『母と娘』の物語ははじめてでぶっ飛んだ。

そんでもって一番ぶっ飛んだのは、生きづらさを抱えた常識に囚われない生き方をする人が主人公ではなく、なんと今回は、どこまでも明るく前向きで頑張る陽キャの女の子が主人公だYO!

陽キャ中学生レナレナが、「公然不倫」中の母と共に未来をひらく、知恵と勇気の爽快青春長篇。

帯にも爽快青春長篇とあるように、青春小説なんだけど、私は『娘とママ』の物語と読んだ。

感情のままに動く娘に対し、文系脳で論理的説明で詰めてくるママ。

娘のレナレナにも隠さず、夫公認で不倫をしているママに後ろめたさなどない。
だって恋愛っていうのは、この世に於いて最も批判が及ばない範疇なものという考えを持っているからね。

ある日、ママの彼氏がコロナを罹患。
部活のバスケ試合に出れなくなり怒りが爆発するレナレナに、どこまでも論理的な説明で理詰めするママのヤバさ。

不倫はするは、論理的な説明で追い詰められるはで、私がレナレナなら怒りを通り越し、この母親には言っても無駄だと口を利かなくなるかも💦

でもレナレナはママを嫌いじゃないし理解してる。

ママは仕事も私の世話をするのもご飯作りも家事も、趣味の音楽とか読書とかも全部真剣に向き合ってように見えるから。

とにかくレナレナは、ママだけでなく友達の気持ちも大切したく、友達が困っていると真剣に向き合う。

向き合った結果学ぶのだ。
よかれと思ってしたことが相手を苦しめていることもあることを。

友達のためになにかもをしてあげたいと行動するレナレナの姿に、友達なんて欺瞞で軽蔑してたママが、これまで軽蔑してきた人たちのことを、少しずつ認められるようになってきた気がすると語る。

レナレナもママも、話してもわからないしめんどくさいと逃げないから、お互いに認めあうこともできるのかもね。

この世は話し合いでできている。話し合いでできているべき。暴力とか、民意を無視する政治が人間の尊厳奪うのは怜奈も分かるよね?(本文より)

話し合うことから逃げず向き合う母と娘の繋がりに、感情が先にきて向き合おうとしないことがあるよね...心の中でブツブツつぶやき向き合った一冊だった。


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