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気を使う電話

 友人から電話があって話していると、違う場所で誰かが電話を取り、少しして電話を切る音が聞こえることがあった。
 ポケベルも携帯もなかった頃は、クラスの女の子たちは友人と交換日記をしたり、毎晩のように長電話したり。自分の部屋に電話機がある子が羨ましかった。私の家の電話は玄関の近くと母の部屋、両親の寝室にあった。中学生くらいになると、近くにいる家族に内容を聞かれるのも嫌に感じ、部屋に電話を持ち込めたらなあ、と思うこともあった。家は、友人の家に比べると厳しかったように思う。なかなか話が終わらないと察すると近くに母が来たし、後で詮索されるようなのも嫌だった。
 例えば、母が電話を使っている時、わたしが電話を使おうと受話器を上げると通話している声が聞こえるようになっていて、うっかり聞いてしまうと悪いことをした気分になったものだった。その逆もあるのだけれど、それが冒頭の部分だ。誰かが電話の受話器を上げたようなのだけれど、すぐ切らない。そうすると、話を聞かれているようで不快な気分になった。電話中は、けっこう相手に気を使っていたということかのかも知れない。
 今はその心配はなくなったが、電話をするのも、誰かにメッセージを送るのも得意ではない。人間関係作りが得意ではないのが原因と思っている。こちらから何か話しかけたとき、相手の表情が見えないので反応が分からないと思うのだ。実際に会って話している時は、ずっと相手の顔を見ているのかというと、そうではない。でも、近くにいることによって、雰囲気が伝わって安心する。家に帰ってからの電話やメッセージだと、どういう気持ちでの返事なのか伝わらない部分がある。
 グループ通話というものもあるが、あれに気軽に参加できる人は、違う星の人だろうとさえも、思う。人間関係のスキルのようなものが、試されるように感じるのだ。

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