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卵かけご飯「に」ではなく、卵かけご飯「を」

極端な意見かもしれないが、卵かけご飯のレシピはどれも似たようなものに感じないだろうか。

卵かけご飯のレシピを見たり読んだりしたときに、どこかで見たな、アッそれ知ってる、と思われたことはにだろうか。

私はある。

街中を始終とびまわっているシジュウカラとスズメのように、卵かけご飯のレシピは似ているに思われる。

それは、なぜか、日本人が卵かけご飯の「に」。この「に」にこだわっているからである。

卵かけご飯の可能性を「に」という強固な殻が包んでいる。では、ヒナ鳥が産まれるように、強固な殻をぶち破るにはどうすればよいのか。

卵かけご飯「に」を、卵かけご飯「を」にかえるだけである。
「を」にかえるだけで、卵かけご飯のレシピの創造性は、灰からよみがえる火の鳥のようにリボーンされる。

新しい卵かけご飯のレシピ「を」お見せしようと思う。

卵かけご飯を用意する。

卵かけご飯「を」粉にいれる。

あれだけクジャクの求愛行動のように大見得をきったのだが、粉「に」卵かけご飯「を」いれるとも言いかえられる。

ニホンゴムズカシイ。

塩や水を少々追加し、木べらやゴムベラで卵かけご飯と粉を混ぜあわせていく。

卵かけご飯と粉がしっぽりと湿るまで水をいれながら混ぜあわる。
粉が3mm~5mmほどの粒状になるまで混ぜあわせる。

粉状になった卵かけご飯と粉は、手にくっつきにくい。そこで、手をつかい卵かけご飯と粉をひとつの塊にまとめていく。

ボウルに押しつけたり、のばしたり、折りたたんだり、森の賢者ふくろうのような顔をしつつ、それっぽくまとめればOKだ。

ねりおえてすぐの生地は、ハゲワシの頭のようにゴワゴワとしている。そこで生地をサランラップにくるみ、ペンギンの足のすきまで温めている卵のように熟成させる。すると濡れた鵜の羽毛にようにしっとりとした生地になる。

冷暗所に生地をおき、1時間ほど熟成させよう。割った卵をいれているので、くれぐれも暑く、むしむししているところで熟成させてはいけませんゾ。

お時間があれば、おおきめの清潔な袋に生地をいれ足でふむ、そして、のびた生地をおりたたむ、もう1度ふむ、おりたたむ、この作業をくり返す。

卵かけご飯を粉のなかに見つけられる。もう1度サランラップにくるみ、生地を熟成させておく。

生地をふみ、のばしたり、まとめたりすることで、クロツグミの鳴き声のように滑らか食感になる。

そして、大空をかけるオオワシのように雄大な弾力になり、ハヤブサのように急降下するコシがでる。

しばらく寝かせた生地を清潔な作業台にとりだす。

調理作業をおこなわない生地は乾燥しないようにサランラップにくるんでおく。

卵かけご飯をふくんだ生地をめん棒でのばしていく。はじめのうちは、なかなか生地がのびない。のばしたとしてもすぐに生地がもとにもどる。

生地が、めん棒にくっつくときは打ち粉をふるとよい。

なんどもなんども生地のうえをめん棒を往復させる。そうすると、あきらめて危険が渦巻く海へ飛びこむファーストペンギンのように生地がのびる。

お好みの太さに生地をのばし、包丁で生地を切る。めんを切る包丁や抑える木があれば、楽に麺を切れる、切れるはず、理論上は幅のそろった麺を切れるはずなのだが。

麺の幅がそろっているか、どうかの判断は、読者さまに任せる。

それはそうとして、いよいよ、私が提案する卵かけご飯の新しい姿が、
キンピカに輝く金閣寺のてっぺんに鎮座する鳳凰のように姿を現した。

卵かけご飯「を」麺にしたてあげた。

ぼこぼこと、マグロなどに追いたてられ海面にあがってきた小魚たちを狙う海鳥が飛んでいそうな沸騰しているお湯に、卵かけご飯麺をいれる。火傷には注意しましょうね。

麺の太さやお湯の温度のちがいから、卵かけご飯麺のゆで時間はかわってくる。

卵かけご飯麺の表面が、ゆるみ、てかる瞬間をタカの目にて見つめ、ここだと思ったタイミングで卵かけご飯麵のゆで加減をチェックしよう。

お好みのゆで加減になっているのを確認してから、卵かけご飯麺をお湯からひきあげる。
冷たい麺として食べたいときは、流水で卵かけご飯麵のヌメリを洗いながし、麺の芯まで冷やすとよい。
また、ヌメリをとったあとに再び温めなおして食べてもよい。ヌメリを洗いながしたほうが夏羽毛の野鳥のすっきりとした口あたりになる。

青い鳥のように誰も見たことがない、あたらしい卵かけご飯のできあがりだ。

とれたて割りたての黄身のように燦然と輝くオンリーワンの卵かけご飯レシピができた。

白身のように滑らかな口あたり、もっちりとした噛みごたえがあり、噛んでいると、白米と粉、そして、卵の旨味があわさり、ロバとネコ、そして、ニワトリの楽団が喜びの歌声をあげる。

さらに、追い卵かけをしてもらってもかまわない。

まんねりと言われかねない、カツオ節や海苔、ねぎをトッピングしたとしてもオリジナリティが産卵される。

新しい卵かけご飯の扉がすこしだけ開かれた。
さらに、鵬(ほう)が何千里も飛びだつように卵かけご飯の可能性を大空いっぱいにひろげてみよう。

人力では、卵かけご飯麺の幅がそろっていなかった。
麺の幅を人力でそろえられないのであれば、機械の力を使えばいいのである。

たったらたった たーったたー♪

パスタマシーン。

見事に、麺の幅だけでなく、厚さも均等の麺を作れる、パスタマシーンを使えば。

卵かけご飯麺をゆで、冷水でひやしザルに盛りつけた。
ザル卵かけご飯麵。

暑すぎるほど、むし暑い日本に住みつづける日本人が大好きなザルにのせられた麺。
その冷涼な麺と卵かけご飯のコラボ。さらには、卵の栄養までを摂取できる、夏場にすすり続ければ夏バテ知らず。

湖に浮かぶ白鳥のように可憐に清潔、そして、白鳥にふきつける凍えるような吹雪のように厳寒な装い。

カラスのように黒く、カラスのように国内にひろがっている焼きそば文化。

その焼きそば文化に、ゴミの日にカラスが襲来するように卵かけご飯のレシピが襲来す。

百鳥繚乱、百鳥斉放といえるほどの数の焼そばソースが売られている。オタフクやらブルドッグやら、そこにカッコウのように卵かけご飯をそっと托卵させた一品。

焼きそばソースの表面のなかには、栄養たっぷりの卵の風味が潜んでいる。

日本の国民食、いや、日本を飛びだし、渡り鳥のように世界にまで飛びだしたラーメン業界にまで卵かけご飯が黄船となり襲来。

考えてみると、卵黄や卵白をねりこんだ中華麺はある。そこに白米がくわっただけである。また、文献にのこっている最古の麺レシピには、白米の粉が混ぜられていた。

米が先から、卵が先か、鶏が先か、卵が先か、そのような哲学的な問いかけを投げかけてくる卵かけご飯レシピ。

ペペロンチーノとカルボナーラを混ぜたペペロンナーラ。
イタリア人であれば、怒髪天をつかれるかもしれないが、怒らることはない。

なぜならば、これはパスタではなく、卵かけご飯だからである。これは、パスタではない、卵かけご飯である。だから、ペペロンチーノとカルボナーラを混ぜても問題ないと答えると、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をなされるかもしれない。

中華料理やら西洋料理をとりこんできた日本人の食生活に、あらたな卵かけご飯レシピが追加された。

ながらく停滞していた卵と白米は、倦むことなく、熟成され、ねりあげ、卵の殻をわり、若鳥は叫びごえをあげ、そして、巣から大空へと羽ばたく。


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