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読書家は宝者

ほんとうの読書家はめったにいない。偽物はたくさんいるが、本物にお目にかかることは、一生に一度か二度かくらいじゃないかな。剣豪みたいなものだ。

もし知り合いの中にいたとしたら、はぐれメタルのように遇するべきだと思う。かつて、わたしにも、そういう知り合い(昔は友達だったけど、いまは疎遠になった)がいた。

彼は、パッと見、どんなに人柄ができているように装ってはいても、どこまでいっても、冷たかった。知れば知るほど嫌なヤツだと分かってくる。

基本的にはただの個人主義者だけど、その気になれば人を支配することくらい雑作もない。

けっして張り合わないほうがいい。口論もしないほうがいい。彼の吐く皮肉があまりに辛辣なうえに図星で、泣きそうになったことがある。

ちょくちょく理不尽に不埒な態度をとってくるが、けっしてやり返してはいけない。つねに敬意をもって遇するのだ。

彼と一緒に過ごした日々が”貯金”となって、今のわたしがいる。

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