見出し画像

大宮見取図#20 大正時代から続く和菓子店。これからもずっと「街のお菓子屋さん」でありたい。

●風土菓房 福呂屋(ふうどかぼう ふくろや) 
  三代目:酒井 正次(さかい しょうじ)さん 
  四代目:酒井 洋実(さかい ひろみ)さん

 「SNS」映えなど、流行スイーツの話題には目もくれず、ただひたすらに伝統の和菓子を地元民に届け続ける……。
 
そんな職人魂あふれる和菓子屋さんが、1917年(大正6年)創業の「風土菓房 福呂屋」さんです。
 
長年大宮の人々を魅了してきた味にはどんな秘密があるのでしょうか!
そして、これまでの大宮の街の変化をどのように見てきたのでしょうか!


自家製餡が決め手の、幅広い世代に愛される味。

お話を聞いたのは、三代目店主の酒井さんと、その娘さんである四代目の洋実さん。
 
まずお店の特徴をお聞きしたところ、2人が口を揃えたのは「自家製の餡」と「一つひとつ丹精を込める手作りスタイル」です。
餡は北海道十勝産の小豆を厳選するなど、素材には特に強いこだわりを持っており、その姿勢は創業当初から変わらないものなのだとか。
 
酒井さん(三代目)「福呂屋では100%自家製の餡にこだわっています。和菓子は基本的に餡と生地の2種類しかなく、60%くらいは餡が占めている。つまり、餡の出来がそのまま和菓子の味に直結するんです。つぶし餡はもちろん、ぜひこし餡も食べてみてほしいです」
 
 
洋実さん(四代目)「私としては気軽に安心して来店していただける雰囲気を大切にしています。常連さんが話しやすい雰囲気は常に心がけているので、店頭ではいつもお客様から自然に話しかけてくれます。お手伝いとしてお客様と接している中で『これ美味しいわね』などと感想をいただくのが嬉しくて継ぐことを決めたくらい、話すことは好きですね」

和菓子=年配の人というイメージでしたが、とんでもない!
店内でお話を聞いている間も、学生、OL、若い男性2人組、年配の方、男性1人、夫婦、ベビーカーを押す母親、学校帰りの親子など、とにかくひっきりなしに、それもいろんな年齢層のお客様が来店されていました。
 
店頭に少し居ただけで、福呂屋さんが幅広い層に愛されていることが、話を聞かずともわかってしまいました。

季節感あふれる和菓子作りの伝統を守る。

次に、三代目に創業当時からのお店の変遷をお聞きしました。
 
酒井さん(三代目)「創業から手作り、自家製を貫いているので、時代の荒波があっても細々と続けてこられたと思っています。創業当初は、団子、餅、おいなりさんなどが並ぶ駄菓子屋といった感じでした。変化が大きかったのは昭和30~40年くらいですね。和菓子屋は大宮市の時代だと40〜50店舗くらいあったと記憶しています。そのなかでも大正時代から残っている和菓子屋は珍しく、現在のさいたま市内でも10件もないと思います」
 
 
歴史的に見てもかなり貴重な存在だと言えそうな福呂屋さん。
三代目は直接口に出しませんが、伝統を守り、後世に伝えていきたいという想いを、言葉の端々に感じます。
 
酒井さん(三代目)「世界的に見ても、季節を表す身近な食べ物は和菓子だけだと思っています。端午の節句には柏餅、夏には麩まんじゅう、水ようかん、水まんじゅう、1月には花びら餅……年中行事や人生のおめでたい席、事あるごとに和菓子が出てきますよね。先人が教えてくれた季節感あふれる和菓子作りを忠実に学び進めているからこそ、商売が成り立っているようにも思うんです」

 

「街のお菓子屋さん」であるために、地元のお客様を大切にする。

最も大切にしているのは「目の前のお客様」だと三代目と四代目は口を揃えます。
まず地元に住まう常連さんありき。だからこそ、イベントなどに出て不特定多数のお客様に宣伝することは控えているのだとか。
 
洋実さん(四代目)「創業当初から変わらず細々とでもいいので、ここ大宮でいつまでも『街のお菓子屋さん』でありたいよねということは、父とも常々話しています。今は大宮以外の場所に住んでいる友達や知り合いも、大宮に帰ってくると福呂屋に必ず立ち寄ってから実家に帰っていくんです。そうして地元の人にきちんと来続けてもらえるお店であることができればいいのかなと思います」
 

 
最後は、三代目が思う大宮の魅力を、福呂屋さんも含めた形でお話しいただきました。
 
酒井さん(三代目)「東日本の玄関口なんて言われますから、通勤しやすい街がひとつですね。それから2000年以上の歴史を誇る氷川神社もそうでしょう。あとは、時代とともに街が変わりゆくなか、新しいモノが次々に入ってきても変わらずがんばっている個人商店がたくさんあります。福呂屋もその一つ。手前味噌ながら、そういったお店も大宮の魅力として認識してもらえたら嬉しく思います」
 
 
大々的な宣伝はせず、まず地元の常連さんのためを考える。
そんな真摯な姿勢が、100年以上愛されてきた「街のお菓子屋さん」を体現しているような気がしました。
 
地元大宮の皆さん、もし行ったことがないなんて人がいたら大変です!
こんな素敵な和菓子屋さんが、すぐ近くにありますよ!

風土菓房 福呂屋(ふうどかぼう ふくろや) 店主 三代目:酒井 正次(さかい しょうじ)さん 四代目:酒井 洋実(さかい ひろみ)さん 埼玉県さいたま市大宮区大門町2-94

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?