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大宮見取図#19 東口商店街から考える、大宮の次のカタチ。

●大宮東口商店街連絡協議会 
  栗原 俊明(くりはら としあき)さん

 東日本の玄関口、交通の要衝、商業の街、人種のるつぼ……。
 
ひと言で言い表すのが難しい大宮。それなら、この街を俯瞰して見る立場の人に聞くことで、より明確なイメージが持てるようになるかもしれない。
 
そんな期待から、今回は若くして銀座通り商店街の理事長でもあり、大宮東口商店街連絡協議会(東口商連)の会長に就いた栗原さんにインタビューを試みました!


大宮は、生態系が豊かな汽水域。

ボリュームのあるパーマヘアにカジュアルな服装で取材場所に現れた栗原さん。
「エライ人」な感じがこれっぽっちもしないところが好印象です。
 
 
大宮で生まれ育ちながらも、一度は東京で就職し、生活の中心も都内に。
30歳を過ぎたあたりで大宮に戻って家業を継ぎ、現在は大宮駅前にあるビルを管理運営する有限会社銀座茶房の代表取締役でもあります。
 
東口商連の会長に就任したのは2019年。
大宮駅東口の街づくりにどんな想いで取り組んでいるのか、そして街としてどんな未来を描いているのか。
聞きたいことはいろいろありますが、まずは現在の大宮の魅力を聞くところから取材をスタートしました!
 
栗原さん「今風に言えばレトロなところだと思います。これだけのターミナル駅でありながら、昭和っぽいお店がいくつも楽しめるローカルな感じがいいですね。駅前の居酒屋のいづみやさんを筆頭に、挙げればキリがないんですが、老舗喫茶店の伯爵邸さん、いまだプラスチックの注文券を扱う街中華の多万里さんなんかも。それもただ残っているのではなく、それぞれのお店が地元住民の需要に応えるために努力し続けてきた結果なんです。その事実が、街の活気につながっていると思います」

 より詳しく聞いていると、大宮をエリアごとに東京の街で例えた表現が飛び出し、栗原さんらしいユニークな視点が感じられました。
 
栗原さん「大宮ってエリアによって特徴とか魅力が全然違うんですよ。住宅街に個性的なお店が並ぶエリアはどことなく代官山を感じますし、駅前からアーケード街は吉祥寺のサンロードあたりを思わせます。一の宮通りはひと昔前の裏原宿のようですし、新宿の繁華街的なエリアもあります」
 
 
東京の街との比較でも、大宮は楽しめそうです。
 
続けて栗原さんは、新旧が入り混じる大宮についても面白い言い方をしていました。
 
栗原さん「古いお店も新しいお店も混在するハイブリッドなところも特徴的でして、少しアカデミックな言い方をすると、大宮は『汽水域』なんです。川と海の間で淡水と海水が混ざり合う場所のことを汽水域と言って、多様な生物がいて生態系がすごく豊かなんだそうです。大宮は昔から交通の要衝として人の流れが多かったので、まさに周辺地域にとっての汽水域です。そこでさまざまな交流が起きることで、また新しいものが生まれる。そんな人々の循環を生み出す『受け入れてくれる街』として存在しているように思います」

音楽が好きでよかった。

栗原さんの人物像にも迫るため、大宮での幼少期時代からの生い立ちをうかがってみました。
 
栗原さん「僕が生まれ育ったのは今で言う北区です。大宮の駅前で銀座茶房という喫茶店を父が運営していたので、小さい頃はよく遊びに行っていました。大学まで実家暮らしだったので、このままではダメだろうと思い、東京の会社に就職しました。最初の会社で営業職、次の会社でイベントの運営に携わっていたので、今の商店街でのコミュニケーションや催事の進行などにおいて役立っていると感じます」
 
 
家業を継ぐことに対してはどんな想いがあったのでしょうか。
 
栗原さん「長男なので多少意識はしていましたが、具体的なことはまったく考えてなくて。ある日実家に帰ったときに『交代だ』と言われたので、ようやく覚悟を決めましたね。僕には3つ上の姉がいて、その頃姉はアメリカの大学に入ると言っていたので、いろいろと話したうえで『こっちは自分がやるから』と伝えて、正式に継ぐことになりました」
 
 
家業の経営とともに、商店街の定例会などにも顔を出し始める栗原さん。
精力的に活動をする一方、当時プライベートでひとつだけ悩みがあったそうです。
 
栗原さん「友達がいなかったんですよね(笑)。社会人になってからはずっと東京だったので、仕事終わりに一緒に飲みにいくような友達がいなくて。しばらく寂しい思いをしていたんですが、大宮に戻ってきて最初の夏祭りのときに風雷坊(現在はスパークリングハーツ)という串揚げ屋のマスターと仲良くなって。お店に行くようになり、そのお店の常連さんたちとバンドを組むことになり……音楽やっててよかったなと思いました。好きが高じて、今は音楽のイベントサポートも事業として展開しています」
 
 
当然ながら、音楽がひとつの主役となるアートフルゆめまつりでもスタートから役員を務め、現在は二代目の会長として携わっている栗原さん。
 
音楽が好きというだけで、人はどんどんつながっていけますよね!

 お世話になった人と街への恩返し。

これからの大宮について。東口商連の若き会長は、この街にどのような未来を描いているのでしょうか。
 
栗原さん「まずは、諸先輩方がつくってきたこの魅力的な街をちゃんと受け継いでつないでいきたいという思いがあります。そのうえで、やっぱり新しい世代の人間として、次のカタチを示していければいいですね。商店街なのか、あるいはもっと違う組織なのかわかりませんが、街を維持する仕組のような大きな視点から考えていきたいと思っています。例えば、大宮って仙台まで1駅、盛岡まで2駅なんですよ。そうした都市と交流を盛んにして関係人口を増やすなど、人流を加速させることなんかは、大きな可能性を秘めていると感じます」
 
 
街づくりにおける栗原さんの原動力をお聞きすると、慎重に言葉を選びながら、最後は人と街に対する感謝が語られました。
 
栗原さん「正直、街に対する思い入れが強いとか、俺には大宮の血が流れている! とか、そこまでのものは僕にはありません。ただいろんな活動をしていくうちに、少しずつそのへんの感覚がつかめてきて。僕はよく『世話になった』という言い方をするんですが、最近はとにかくお世話になった人に、そしてお世話になったこの街に、恩返しをする感覚で活動しているんです。大宮には顔の見えるお店がまだ多いですし、人と人とのつながりのなかで、これからも街が発展していくと思っています」

人に対する感謝の思いを持ちながら、人と人との交流を通じて街を盛り上げていく。
 
大宮の若き会長に、そしてこれからの大宮の発展に、期待せずにはいられません!

大宮東口商店街連絡協議会  大宮東口商店街連絡協議会 会長 銀座通り商店街 理事長有限会社銀座茶房 代表取締役 栗原 俊明(くりはら としあき)埼玉県さいたま市大宮区宮町1-5-9F
アートフルゆめまつり2023

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