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vol.6 黒猫の喫茶店

(これまでのお話)

しましまねこのクックは仲良しのクロタと一緒に旅に出ることになりました。クックは約束の日の朝、クロタの住む黒いマンションの前でクロタを待っていましたが、クロタは約束の時間をとうに過ぎても外へ出てきませんでした。心配になったクックがマンションの中へ入ろうとすると、なかから3匹の大きなトランクを持った猫が飛び出してきてクックをバカンスへと誘います。クックはそれを断りクロタが出てくるまで待つことにしました。しかし三匹の猫がバカンスへと旅立つと、途端に辺り一面が漆黒の闇に包まれてしまいました。

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突然包まれた闇の中で呆然と佇むクックでしたが、先ほど旅立って行った黒猫から貰った天女の星飾りがクックをぼうっと青い光で包んでくれました。

その明りをたよりにクックはクロタのマンションの方角に向かって慎重に進みました。そして扉の前に立つと力を込めてゆっくりと押して開きました。

クックは暗闇に包まれた時より唖然としました。

そこは暖かい灯と穏やかな談笑、それからなんとも美味しそうな匂いが充満した空間だったのです。

入る扉を間違えた!と驚いたクックは急いで外へ飛び出そうと思ったその時、黒猫の店主が「ようこそ黒猫カフェへ」と声をかけました。

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「カフェ??」クックがすっとんきょうな声を出すとカフェのお客さんが一斉にクックに注目をしました。

カウンターに座っていた女の子が「あらっ?」そう少し驚いた様子でクックの星飾りを見つめると、クックに隣に座るように椅子を示しました。クックはおずおずとその椅子に座ると、女の子とカフェ店主にこう話しました。

「僕は、ともだちを探しているんです。黒い兔のスーツを着ている子を知りませんか。」

店主は店の奥の扉を指さすと「黒い兔が扉の向こうへ迷い込んで行くのを見たよ。彼だけじゃない。多くの者が吸い込まれるように消えていった。」

クックは椅子から飛び降りるとその扉のノブを掴んで押したり引いたり力任せに試みました。でも固く閉じられた扉はピクリとも動きませんでした。

店主は言いました。「光の中に誰もが行けるわけではないように、闇の中に入れる者だって限られているんだ。その証拠に君はその鍵を持っていないじゃないか。」

うなだれるクックに店主は暖かいミルクティーを作ってくれました。

クックが暖かいミルクティーをぜんぶ飲み干すと先ほどの女の子が言いました。

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「その瓶の中の星飾りは私のよ。一年前にここで落としてずっと探していたの。」

「あなたが、あの黒猫が言っていた天女なんですね!」クックは急いで天女に星飾りの入った瓶を手渡しました。

「ありがとう。お礼に あなたをお家に 帰してあげる」そう言って天女は微笑むと、クックは目も明けていられないぐらい眩しい光に包まれて、気が付くと自分の家に戻っていたのです。

窓にかかったカーテンを開くと星の瞬く夜空はたいそう明るく、通りの向こうの千鳥足のおじさんがけつまづいた拍子に持っていた酒瓶が空を飛んでいく様まではっきりと見えるほどでした。 疲れきっていたクックはそのままベッドに倒れ込んでしまいました。

夜が明けるとクックはクロタの黒いマンションへと向かいました。すべてが夢の中の出来事のように感じました。

しかしクロタの住んでいたマンションが有るはずのそこには黒い花が咲き乱れる空き地が広がっていただけでした。

女の子が空き地の真ん中に、すくっと立っていました。

初めて見る子でした。クックと似たシマ模様の女の子です。クックは西の城下町のモモに似てると思いました。でも女の子の耳はモモのように垂れてはいません。

女の子はクックに気がつくと

「こんにちは。私はナーナ。ここに喫茶店を建てようと思うの。」

ナーナと名乗るしましまねこの女の子はそう言うと太陽みたいに笑いました。

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こんにちは。「しましまねこクックの物語」をご覧いただき、ありがとうございます!

令和元年6月16日より開催されます市川こずえ先生主催の少女塾 企画展「喫茶 黒☆兎☆星」に参加いたします。お話しに出てくる兔スーツのクロタや、他にも小さめの猫のお人形やポストカード等等も出品致します。企画展では黒をテーマにした作品が多数揃ってお待ちしております。ぜひお立ち寄りくださいませ。


少女塾企画展 第廿四回「喫茶 黒☆兎☆星」
<企画・主催>
市川こずえ

開催日
令和元年6月16日、23日、30日、7月7日、14日、21日
(6月16日~7月21日の毎週日曜日開催)

参加作家
うのきょうこ rihaco  大須賀理恵 nakaotome
Merlin BUBUYA Plastic+Prin ドッティ おもちゃばこ

少女塾
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-28-3
ジャルダン吉祥寺105号

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www2.plala.or.jp/omocyabako/ おもちゃばこ

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