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現実を漫画の世界にした、元彼

前回、同じマンションの斜め下に越してきた元彼とのその後。

朝起きて窓を開けてベランダにでると、出勤前の日課中の元カレがビックスクーターにちょこんとすわりタバコを吸いながら、ほぼ開いていない目で「おはよう」と見上げる。

「おはよう〜。天気が良すぎて仕事行くのが勿体無いよねぇ〜」
「そうだね〜。俺、明後日から出張で大阪だわぁ〜」
なんて会話が続き、しばし会話なく朝の光でぼんやりする。

仕事から帰ってくれば、ベランダで夜風にあたりながらタバコを吸っている元彼が「おかえり〜。出張のお土産あるからあとでもってくわ」といった感じだった。

ある日、夕飯を食べにいった際「なぜ、同じマンションに引っ越してきたのか?」について尋ねた。理由は、バイクの駐輪場、駅近、広さ云々であった。一緒に内見した他の物件よりも断然条件が良かったそうだ。
たしかに、誰か出るとすぐに次が入るといった人気物件だった。

「そういえば、彼女できたって言ってなかった?」
「できたよ〜。もう3ヶ月くらいかなぁ、問題なく続いているよ」
「元カノが斜め上に住んでいることは、ご存知?」
「言うわけないよ。おかあ(母)にも言ってないし」
「………….」

しばし、何も言葉がでてこなかった。
「私が今カノだったら、この状況嫌だし。知った暁には別れの展開だけど….」

元彼は教室の端にいるほうが似合う人で、静かで穏やかな人だった。
嘘をつくこともなかったし、たまについてもすぐに見破れる可愛いレベルだった。
だからか、その発言は時間の流れと経験による重みのような、彼の変化を感じさせた。ちなみに私は昔から、影がある派で赤レンジャータイプには惹かれない。

今カノとお付き合いを始めた時期は、元彼の父(内田裕也系の難あり)が他界した頃に重なる。とはいえ所詮「人の気持ちは人のもの」深読みしても仕方ない。

「うん。言いたいことはだいたいわかるよ。ただ、この件もおとう(父)のことも、彼女に言うつもりはないし….」
「そっか。人の交際にも生活にも口を挟む気はないから。気まずくなりたいわけでもないし、後悔なく、でね。それだけかな」

不思議と腹は立たなかったし、10年を超えた付き合いからも元彼は勢いで何かを決めるような人ではないと思っていた。
それに、偉そうなことを言う権利もなければ、それほど真っ当な人生を送っているという自負があるわけでもない私は、しばし様子をみることにした。

解せないことは、今でいう多様性として受け入れる(程よく放置?見守る)ことにしたのだ。
その約1年後。彼は同マンションを退去することになった。

その理由と経緯は、また今度。



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