泣き声
我が家は通学路に面している。
子どもの泣き声が聞こえた。
「お友達いや」
「先生いや」
大泣きしながら訴える声が聞こえる。
幼稚園のバス停が近くにあるので、幼稚園の子かな……と思っていると、ランドセルを背負ってお母さんに手を引かれながら歩く女の子の姿がカーテン越しに見えた。
「学校いや」
「先生いや」
泣きながら体中で訴えている。
手を引くお母さんが言葉をかける。
「ママは〇〇のことが大好き」
〇〇は女の子の名前だろう。
なにがあったのかわからない。
お母さんもきっと泣き叫びたいようなお気持ちでおられるのだろう。
もし今、私が無理やり手を引かれて職場に連れて行かれたら……
そう考えると
女の子を抱き抱えて
「行かなくていいよ」
と伝えたくなった。
「行けない」
がこんなに切実なものだとは
自分がこうなるまでわからなかった。
私が今の状態で女の子と同じようにされたら
どうなるか想像がつかない。
心が死んでしまうかもしれない。
心だけじゃなく……。
そこからの回復には、さらに時間がかかるんじゃないかな。
想像を絶する恐怖なので、どうなるのかわからない。
でも
聞いていて辛くなった
朝の女の子の叫びにも近い泣き声でした。
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