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父の日だし、たまにはね。 〜The easy way becomes harder, and the hard way becomes easier.〜

父との記憶を遡っても、楽しかった思い出はあまりない。
彼は仕事人間で家族旅行なども少なかったし、口下手でユーモアもない。
私が高校生の頃には、父が経営していた会社が傾いたため自宅を売却した。
当時の家計は高校生の私から見ても綱渡り状態で、両親の関係も最悪。家庭はほぼ崩壊していた。

家族を楽しませることもなく、経済的に家族を振り回し、酒に酔うとデリカシーというものが全て消え去る父。
反面教師として見ることが多い父だが、そんな彼にも感謝していることがある。

私に座右の銘を与えてくれたことだ。


険しい道こそ進むべき

The easy way becomes harder, and the hard way becomes easier.
容易な道はやがて険しい道となり、険しい道はやがて易しい道となって己を助ける。

この言葉は、私が小学生の頃から父に口うるさく言われていたものだ。
彼の座右の銘らしい。
元はケンタッキーフライドチキンの創業者であるカーネル・サンダースの言葉らしく、父の手帳に書いてあったことを覚えている。

進学、就職、転職など、目の前の選択が今後の人生に影響を及ぼすような時、いつもこの言葉が頭に浮かぶ。
いや、日常の些細な選択ですらも、この言葉が頭に染み付いて私に影響を及ぼしている。
苦しいこと、しんどいことからは目を背けがちだ。それでも、険しい道を歩むことが、未来の自分自身を助けることになる。
苦しみから逃げそうになった時、自分の心にそう発破をかけて険しい道へ飛び込んでいくのだ。

昨年、転職をしようとしていることを父に告げると、彼は「険しい道こそ進むべき。険しい道が目の前にあることはチャンスなんだ」と私に言った。
その言葉を受けて険しい道に進んだ結果、今の自分がある。
過去に自身の会社で失敗した父も、現在はリベンジに向けて準備を進めているようだ。
その息子である私も、次のチャレンジに向けて新たな険しい道へ進もうとしている。

悔しいが、親子だ。

大人になって、ようやく父からもらった言葉の意味をしっかりと理解できるようになった気がする。
大人になって、父の尊敬すべき点も少しは見えるようになった。
大人になって、父への感謝が込み上げてくるようになった。

父の座右の銘が、いつしか私の座右の銘にもなっていた。


初めての父の日企画

先日、少し早めの父の日ということで、彼に会いに行った。
生まれて初めて購入した花は、少し照れてしまって「あー、これ、父の日のやつ」とぶっきらぼうに渡してしまった。
その後向かった先は、子どもの頃、父によく連れてきてもらっていた横浜スタジアム。
思い返してみると、2人で野球観戦に来るのは私が小学生の頃以来13年ぶりだった。
時が経ち、今は一緒にビールを飲みながら観戦している。

帰り道、父はえらくご機嫌だった。
とりあえずは、父の日企画は成功したということでよさそうだ。
私は、彼の息子としてのこれまでとこれからについて、想いを巡らせながら帰路についた。


The easy way becomes harder, and the hard way becomes easier.

父と私、これからも険しい道を前にすることがあるだろうが、互いに発破をかけ合いながらそれぞれの道を前へ前へと進んで行きたいと思う。


父さん、いつもありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。

試合の結果は残念ながら…。
花は父の会社に飾られているらしい

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