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灰色のよる

札幌で過ごすはじめての夏が始まろうとしている。去年の今頃は、6月なのに30℃を超える埼玉にうんざりして、北海道へ脳内旅行をしていたものだった。けれど実際の北海道は、ふつうに暑い。ところによると、涼しいところはあるのだけど、少なくとも札幌はとっても暑い。ここ最近毎日30℃弱で、今日は夏特有の蒸し暑ささえ感じた。通勤するだけで汗をかく。

そうやって、関東と変わらないなと思うこともある一方、やっぱり違うなと思うこともあったりする。びっくりしたのは、19時を過ぎても、19時半を過ぎても、まだ外が明るいことだった。時計を見間違えてしまったか、と思ったくらいだ。

昔から、わたしはなぜだか日の出と日の入りの時間を知ることに熱心だった。そして関東に住んでいたとき、夏は19時を過ぎるとほとんど真っ暗になったはずなのだ。それがどうだ。札幌に来たら、19時半過ぎまで暗くならないではないか。冬は15時には暗くなり始めて、あんなに日照時間をくれなかったのに。

そんなことを話すと、会社の人は「緯度が高いからじゃない? 白夜みたいな」と言った。

白夜。ああこれは白夜みたいなものなのかあ。そう思うようになってからというもの、帰宅する足が軽くなった。なんだかロマンチックでうきうきしてしまうのだ。今日はついに、命名までしてしまったから重症だ。日が沈まない夜のことを「白夜」いうのなら、日がすっかり沈んだ夜が「黒」として、札幌の夜はその中間の「グレー」ってことになる。だからグレーの夜。

暑いのは苦手だけど、できるだけ長くこの夜を楽しんでいられるのなら、悪くないかもな、などと思う。

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