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バーク・アウト

 読みづらい感情を読み解くことなんてぼくは絶対にしたくなかったしそもそもの話、自分以外の人間なんてサブカル好きが猛烈におすすめしてくる映画と同じように理解ができないから、しかしそれでも知りたくなる、有史以前からぼくたちはそのもやりとした海のようなものに挑み続けている、生きれば生きるほど楽しいこと幸せなこと素晴らしいことから垢のようなものがアトピー性皮膚炎のようにぽろぽろぽろぽろぽろぽろ落ちて、それが次に現れ生えてくるものが毒を取り込んでいく誰が残したのか名前のラベルも貼っていないのにその曖昧なものっていう鎖がぼくらを縛って、知らぬ間に同じ方向を向かされている、給食に嫌いなものが出てそれを食べきれず給食の時間が終わっても席に座り続けていたあの女の子のような、生き物が精製されてしまうんだと思うとぼくはタバコの煙と午前5時のゲロに地球が塗れていく想像をしてしまう、『閉塞は破られるものきっと近いうちに誰かが人を殺し誰かが殺されるもしかしたら世の中に広がっている形にならないふつふつと鍋で煮立っている味噌汁すらも心もどこにも旅立っていかないたくさんの手紙もまとめて燃えてしまう』とこの前駅できみは言ったよねあの駅で、ぼくはそれを聞いて熱い氷の冷たさを感じたんだ、ぼくがどんな気持ちでここに立っているのか微塵もしらないきみは遠慮なく傷を掻き毟り中の肉やら昨日食べたつけ麺やらトマトジュースにしか思えない口に出すのもはばかられるものやらを、遠慮なく日干ししてくる、港に並ぶ海苔、てんぐさ、ぼくはそれを残らず食べたい、食べたその口できみを塞いで星屑の瞬きから宇宙が生まれて牛乳の河を広げていって、布団にくるまるきみが普段なら考えられないような猥雑で鬱陶しい声を上げる、それが産声となるのだぼくのこのどうしようもなく溜まっていっている肥溜めのように、汚さを極めすぎてきらきらきら、月光色をした素晴らしいものですよという顔をしているものを廊下や三和土にぶちまけて、それでもきみはにかにか笑っているんだね、夜毎いろいろなところを触っておきながら何も知らないで砂糖を纏った羊にかこまれて暮らしているきみ、ぼく、いつになったら幸せになれるんやろうか、この世の幸せの総量は決まっている政治家ばかりがいい思いをしているそう思わせてほしい、いつまでぼくは奪われ続けて肉の塊に成り下がらなくてはいけないんだろう教えてくれ、でも神は不在着信で居留守を決め込んでいる他人を救うのに忙しい、人が生まれるのはセックスと神の気まぐれでしかないのにどうしてアフターケアがないんだろう別に産めなんて頼んでない、余計な普通じゃないものを抱え込んでまで生きていたいと思える場所ではなかったのに、きみと誰か、後ろ姿、トイレで喉に指を突っ込むきみ、なにも悪くないのに顔を張られるきみ、髪を切りまくるきみ、全てのきみがどんどんまぶたのうらにスクラップされていってたまらなくなる、隣にいるのはぼくであるという子供じみた絵の具色の妄想が止まらなくて止められなくて、ぼくはなにか生きていて幸せなこと、小銭を拾ったぐらいで大げさに喜べる許可が欲しくて、まだ生きている、まだ

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