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オクトパストラベラーでロールプレイに目覚めよ(レビゥー記事)

さっそくカマしていく。見てしまってガッカリするようなネタバレはしないつもりだが幾つかの要素を紹介することはあるかもしれない。レビゥー記事なのにもう少しなんか総括できないのか? という疑問に関しては自分も内なる自分に問うてみたが、無理だ。ゲームの面白さをぎょうしュくして語ることは出来そうにない。代わりに自分が面白いと思ったポイントについては
まんぞくするまでレビゥーを続けていく。

無力なヒナになるな

インタビューによると「オクトパス」はタコという意味ではなく八人の、という意味の造語ということらしい。この八人の冒険者がゲームの主人公であり、プレイアブルキャラクターだ。そこをまず抑えておきたい。そしてもうそれだけでいい! 八人いる! 旅に出る! 情報はもう十分だ。
WikiやSNSで効率の良い攻略法を探る理由はない。旅は待ってくれない。

ゲームを開始すると世界地図が広がり、各地に点在する八人の主人公の一人を選ぶことになる。カーソルを合わせると各キャラクターのストーリーと一枚絵が表示され……まずここで息を呑む。画面に向かって前のめりになる。
まだここで鼻やスマッホをほじっているお気楽な奴は死ぬ。
冒険についてこれないからだ。

知識や経験がある人ならわかるかもしれないがこの画面はテーブルトークRPGにおけるキャラクターシートに似ており、実際オクトパストラベラーにはそうしたエッセンスがふんだんに盛り込まれている。

主人公の一章を終えると他のキャラクターとの合流が次の目標となる。
その順番はどこからでも良く、この時点である程度は好きに旅ができるというわけだ。メインシナリオをプレイしていない時のキャラクターはかなり自由であり、どこへでも行けるし誰から仲間にしても良い。ここからロールプレイは始まっている。

だがまずここに落とし穴がある。このオクトパストラベラーをあらゆる
ユーザーへ配慮した優等生JRPGだと思い込んでいた未だお客様気分が
抜けない冒険者を深い谷底に突き落とす仕掛けが地獄の口めいて待ち構えているのだ。だが焦ることはない。後退りもしないでいい。自分はまんまと谷底に落ちたが岩肌を掴みこらえ、這い上がってきた。その方法もちゃんと書く。

テリオンは盗賊だ。スリがとくいで、このアートから見て取れるように
ニンジャめいて俊敏に何かを盗んでは生計を立てている。この後アッポルを食べるだろう。なにがしかの過去を背負っており、声は低い。低すぎて何を言っているか聞こえなかったので自分はテレビに一歩近づいた。とにかくそれがテリオンだ。まあ盗賊ということだけ覚えていればいい。

ボルダーフォールという町に流れ着いたテリオンは富豪の屋敷にあるといわれるお宝を盗むために行動を開始する。それがテリオンの一章だ。ボルダーフォールは断崖に造られたイカれた町でありヒンプの差が激しく、当たり前のように盗賊がたくさん酒場にいる。幾つかの腰抜けの盗賊からテリオンは勧誘を受け、共に盗みに向かおうと提案されるが過去の出来事から他人と組みたくないテリオンはそれを突っぱねる。男の中の男だ。

だがしかし自分が操作する狩人・ハンイットがテリオンに話しかけると
流れから二人はあっさりとチームを組むことになる。先ほどは共同戦線を頑なに断り、過去に人と組んだことでトラブルが起きたことが窺えるテリオンがとつぜん、パーティーの一員となるのだ。ここでかならず混乱するはずだ。自分もそうだった。

つまり……このゲームは自由度のために物語の整合性を度外視しているのだ。クソ溜めに捨ててしまっている。そんなことに気づかない我々は哀れなヒナめいて空を見上げ口を大きく開いているが、そこに落とされるのは滋養のあるエサではなくクラスター爆弾だ。拡散して襲い来るそれから逃げられず、ヒナはばくしする。

つまりどういうことなのか? ここで腰ぬけは思考停止に陥りワンカップを開けてグビグビとやりながら愚痴をたれ、クリアするまでえんえんと言い続ける。しかし自分は思い至った。ロールプレイだ。
テリオンが整合性の取れない行動を取ったことに理由を用意してやればいい。つまり、こうだ。

テりオンはペンみたいな大きさのしょぼいナイフしか持たない雑魚中の雑魚とは組むつもりはなく、いつものように一人で屋敷をハックしようと考えていた。そのつもりで歩いていたところ、ハンイットがボルダーフォールの渇いた風を切り裂きながら町へ降り立ったというわけだ。

ハンイットはホットだが筋肉と矜持にあふれておりユキヒョウを連れている。まずオーラが違い、ダーンドルみたいな服を着てのたのた歩いている他の女とはワケが違う。目つきは鋭く、旅の目的を果たすための鋼鉄のような覚悟を持っている。只者ではない。そしてテリオンもまた一端のゴロツキではない。

この二人が出会う。そこを想像する。歴史が変わるような邂逅ではないが、
二人にとってきっと意味のあるビッグバンだ。ハンイットは己の目的のため、テリオンは己の目的のために手を組む。そう難しいことではない。
強者はシンパスーを感じるからだ。

当然テリオンに手を貸すということがどういうことなのかをハンイットはわかっていなければならない。盗みに加担するということだ。そしてここがネックになり多くのユーザーは物語の整合性についてさも重要な指摘をしたというようにふんぞり返り、温度のない見せかけのレビゥー記事を書きまくっては自己満足に浸る。だが本質はそこにはない。

そこに至る経緯を想像しろとオクトパストラベラー制作チームは言っているのだ。当然、作る段階でそんなユーザーに指摘されそうな部分を死ぬほど遊び尽くしている制作チームは既に知っている。指摘されるまでもない。だが放置している。何故だ? むろん言うまでもなくロールプレイ……想像で解決できる事柄だからだ。それをやれと制作チームは言っている。

ダークベリアルからの注意:本記事を書いているあごるんからのオクトパストラベラー制作チームにはやや歪んだ偏見と強いリスペクトがあり、おかしいと何度も言いましたが文は直りませんでした)

オクトパストラベラー制作チームと聞いて青白いインテリの顔をユーザーは
思い浮かべる。だが奴らは明らかにアルコールとサイコ妄想が入っており腕っぷしも強く、整合性をカラテや想像でことごとくねじ伏せてきた。それをこちらにもやれと強要してくる。生ぬるいことを言うとボルダーフォールの木箱の裏から制作チームの普段はシャツに隠されて見えない入れ墨が入った逞しい二の腕がニュッと伸びてきてつまらないことにいつまでも拘泥するユーザーの頭をぜんりょくで殴りつけるわけだ。

かくして二人は旅の仲間となり、ハンイットは先頭に立ち慎重な目つきで
クリアリングしながらランタンを掲げ、テリオンは低い声で何かを呟きながら(テリオンの音量だけ上げさせろ。マジで聴こえない。このゲームに唯一文句を言うところがあるならそこだ)殿を務める。ハンイットは自らの目的のためにテリオンに助力を頼み、盗みに関してもある程度は仕方がないと割り切る。そういうお互いのリスペクトがあってようやくパーティーが成り立つ。ハンイットはテリオンの母でも姉でも妹でも恋人でもない。
共に旅する仲間として、一線を引いている。そういうことをイマジネートしろ。

ロールプレイで物語と物語の間隙を埋めることができるようになったとき、
我々はすでに間抜けなヒナではない。自らの足、翼で外界に出てエサを自力で探す本物の旅人になっている。空っぽの巣穴でいつまでも囀りながらメインシナリオについての不評レビゥー記事を書いている奴がいたとしたら外界で見つけ出したアップルを食べながら自分は笑うだろう。
そいつは今に餓死するからだ。

コマンドを使ってロールプレイする

今回のインストラクションで第一章の落とし穴から生還したユーザーが
いたとしてもまだ旅は始まったばかりだ。ロールプレイの一端に触れただけに過ぎない。このオクトパストラベラーにおいての真のロールプレイは
コマンドにある。

コマンドには二種類あり、「正道」と「邪道」がある。
正道はレベル制限があり、邪道にはないが邪道のコマンドをしっぱいしすぎると町の雰囲気が悪くなり、人々はパーティーと口を利いてくれなくなる。
ファック野郎認定されてしまうのだ。そうなると酒場に金を払わないと元には戻らない。

この対になるコマンドは結果的にはほぼ同じことが起こる。
では何の意味があり二つに分かれているのか? それがこのゲームの
本質を解き明かすことに繋がっている。

神官・オフィーリアのコマンド、「導く」は人々に光の道を示し
パーティーへと引き入れることができる。こちらは正道だ。

踊子・プリムロゼのコマンドである「誘惑」は人々をその美しさで誘惑し、パーティーへと引き入れる。こちらが邪道。結果的には同じことではあるが、前者は「良い」ことをしており、後者は「悪い」ことをしている。
プレイヤーはそのどちらを選んでも良い。
「良い」ことをしたければ「導く」、「悪い」ことをしたければ「誘惑」。
またシステム的な成功率を考えて選択するのも自由だ。つまり、これがロールプレイだ。

「導く」「誘惑」で仲間にしたキャラクターはたまにコマンド元をかばう。
これがとんでもない悪党だった場合、「導く」で加勢させていればまるで
神官オフィーリアの誠実さに浄化され、勝手に体が動いており何の得があるわけでもなく危険を冒してオフィーリアを助けたような形になる。
逆に踊り子であるプリムロゼと熱いファックをしたいと考えて仲間になりチャンスを窺っていたものの、プリムロゼの危険を察知して死に至る可能性も考えないまま飛び出して魔物の痛烈な一撃を受ける……そういうこともある。

それはただのバトルの一シーンのはずだが、なんだかドラマティックでいい。ここにロールプレイの素晴らしさが詰まっている。そこに気づいた時、
遠くで見守っていたオクトパストラベラー制作チームがニヒルな笑みを浮かべてサムズアップしている。自分にはそれが見えた。

商人・トレサの「買い取る」コマンドはキャラクターの持ち物を良い値で
買い取ることができる。アイテムの価値はまちまちだが、たまに
そのキャラクターが大事にしているものなどがラインナッポされている。
トレサは駆け出しの商人だが温かい心を持つ少女なのでこれは無理に買い取らない。

だがテリオンは違う。テリオンは盗みで生計を立ててきたのでそんなことに
一々こだわらないし、声も低い。低すぎて何を言っているのかたまに聴こえないくらいだ。そんなテリオンは形見だろうと何だろうと盗む。良心の呵責などにかかずらっていたらすぐに自分は裏路地でゴミと一緒に冷たくなり、カラスのエサになることを知っているからだ。
容赦なく盗み、二束三文で売るかもしれない。その金はテリオンの酒代に変わり一晩で消える。形見はもうどこにいったのかも知れない。そういう結果も起こせる。

ロールプレイをする上で何が重要かと言うと相手の素性を知ることだ。
薬師・アーふェンの「聞き出す」、あるいは学者・サイラスの「探る」というコマンドを使うことでキャラクターの素性を知ることができ、それは
ロードラテキストめいてPOPする。この情報を元に判断を下すのもアリだ。
例えば相手が善良そうな人間ならば盗まずに「買い取る」をし、
悪辣そうな人間ならば買い取らずに「盗む」。また逆も然りだ。

世界を旅する上で治安を守ることに全力を尽くしても良いし、
弱き者から容赦なく奪うニンジャ簒奪者になっても良い。
ちなみに自分は盗賊であるテリオンをメインパーティーに入れておきながら
「盗む」はあまり使わない。別に良心からではなく、ケチな木の実を盗んで
バレたりすると非常にカッコ悪く、テリオンの矜持に傷がつくと思ったからだ。

ロードラを思い出せ

オクトパストラベラー制作チームには宮内Dとアクワイアチームを含む
歴戦の猛者たちが集まっていて、このゲームにありとあらゆる宝物めいた体験を詰め込んでオクトパストラベラーの酒場のどこかでスピリタスとエナジードリンコを混ぜたクソヤバいカクテルをジョッキで呷りながら我々の旅を見守っている。

このビジュアルを見てくれ。幾つかのキャラクターは後ろ姿で
顔が見えない非常に挑戦的な構図だ。このアートを見た時に自分が感じたのはこの旅に参加したいという一念のみだ。キャラクターに寄り添い、それぞれの主人公が映えるように行動させたい。つまりそれがロールプレイするということだ。

主人公同士の掛け合いがあまり多くないことやメインシナリオが若干うすいことでロールプレイ生活に関して自信が持てない輩は確実に出てくる。だがそこで甘い言葉を掛け慰めてやればそいつは負け犬になり、二度と誇り高い野生には戻れなくなる。
そのまま老い、大切なことをあの日の思い出に置き忘れたまま生き……そしてやがて死ぬ。

重要なのは想像力だ。そして間違いなくそれを我々は持っている。
ロードラを思い出せ。
一つのストーリーを見て嘔吐しながら床をのたうち回り、誇大メガロ妄想の中で白地のパズルピースめいた捉えがたい真実を探し続けたあの日の記憶が
イマジネーションに火を付け、我々を一人前の旅人にしてくれる。
どのようなスタンスでも良いからコントローラを握り、ボタンを押しまくれ。もう旅は始まっている。

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