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狼藉~「狼煙が呼ぶ」~

自分で企画して出演している「セブンガールズ
去年の9/29に公開されてほぼ一年が経過した。
5月に上映が終了したと思っていたのに。
念願だった九州での上映が決定した。
大分県の別府ブルーバード劇場。9/20~26。
公開から一年経過した今も上映出来るなんて奇跡のようだと思った。
有名な俳優も出演していなくて、大きな予算の映画でもないというのに。

そんな中で嬉しいニュースがあった。
以前「泣き虫しょったんの奇跡」に僅かばかりとは言え出演させていただいた豊田利晃監督が、不当な逮捕から不起訴を経て「狼煙が呼ぶ」という映画を完成させて、その公開日がセブンガールズと同じ9/20~26ということがわかった。それだけならまだしも同じ別府ブルーバード劇場でも上映があって、23日まではセブンガールズの前、それ以降はセブンガールズの後という連続での上映が分かったからだ。実はプレミア上映のチケットが取れなくてどこかで観ようと思っていて、それなら別府で観ようと決めていた。
それが自費での全国行脚を豊田監督がすると発表されてなんと自分の登壇する25日に別府でお会いすることがわかって偶然にしては出来すぎていると思った。

別府でお会いしましょうという連絡の中で、初日も来たらとのお誘いを頂いて大分に行けるわけでもなく、どのみち別府を思ってドキドキしているならと思い切ってUPLINK吉祥寺まで行くことにした。まだUPLINK吉祥寺に行けていないし舞台挨拶も豪華であることも背中を押した。

ミニシアター全国一斉公開なんて初なのだと言う。
今はセブンガールズのことだけを書こうと思っていたけれど26日までしかないのだから書いておかなくてはいけない。

16分という時間や、豪華な出演陣など、多分調べればすぐにわかる情報が公式ページでもネット記事でもいくらでもみつかるだろうからその辺はもう割愛したほうが良い。時間やキャストを越えたところに作品があるのだと感じたからだ。

観る前から自分はなぜ「~呼ぶ」なのだろう?と考えていた。
日本語的に正しいのは「狼煙を上げる」のはずだ。
元々は焚き火に乾いたオオカミのフンをくべると色の濃い煙がまっすぐ上がりそれを戦国武将が合図にしていたという意味で、転じて「戦闘開始」的な意味が一般的な理解だと思う。それを「狼煙が呼ぶ」にしたのには、恐らく明確な意味とテーマが隠されているはずで。それをもし見落とすのであれば自分は何も見ていないのと同じなんだろうなと思っていた。

激しい和太鼓のリズムと、低音で鳴り響くほら貝の音が壁を揺らす。
登場人物たちはそれぞれが何かを手にしている。
その何かは具体的でありながら暗喩でもある。
その目、その表情、覚めているようで青い炎が燃えている。
そして全員が睨みつけるのは、最初のアレだ。
そしてそのアレと現代のアレがラストにシンクロして行く。

それぞれの暗喩やアレは観た人だけがわかることだから書かないけれど。
瞬間、現代シーンで少女が拳銃を手にしたシーンを思い出す。
そしてそれは監督自身にとって祖父の形見の拳銃が不当逮捕によって強いテーゼに変化していることを深く理解する。

映画が終わると同時に気付くのだ。
「狼煙」が映画の中のどこに映っていたのかを。
そして「狼煙が呼ぶ」というセリフを誰が口にしたのかを。
それは同時に観ている人間に語り掛ける。
お前は呼ばれていることに気付いているのか?と。

おおお。自分も試されているじゃないか!!

不当逮捕の時。
ニュース速報まで流れた。
だというのに不起訴になったことはほとんど報道されていない。
記者会見を開くという提案もあったのに。
映画監督は映画で答えると、この映画を製作したという。
大賛成だし、最高だし、かっこいい。
その答えは、こういうテーマですよなんてチープに書けるものじゃない。
そして冷静に映画にしようと考えただけじゃないとわかった。
豊田監督は怒りの中から衝動を見つけたのだと思う。
衝動をそのまま作品に昇華させた、そういう作品だった。

亡くなった人を鬼籍という。鬼の籍に入ったという事だ。
乱暴者は狼藉である。オオカミの籍に入ってる。
野生であり、本能で生き、孤独を恐れない象徴こそ狼だ。
正しいとか正しくないとか公正だとか公平だとか。
そういうものではない。
自分を狼藉に置いて衝動で野山を駆ける。牙をむきながら。
舞台挨拶に立つ出演者たちは誰もが狼藉に属する人たちだった。
若い人が初期衝動で表現するのとは段階が違う。
様々な経験をした人だけが持つ衝動だ。

26日まで上映は続く。
自分もセブンガールズの上映が続く。
正反対とも言えるほど違う作品同士だけれど。
映画を創ろうと決意した瞬間の、その衝動だけはきっと同じだ。

呼ばれたのだ。
色濃いあの狼煙に。
呼ばれたのだ。
真っ暗闇の山の中に響く孤狼の遠吠えに。

25日に別府で!
観た直後に話したくないからすぐに帰った。

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