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匂いのトンネル

毎日新聞にユーロスペースの記事が出ている。

渋谷という街でカルチャーの中心にいるユーロスペースの言葉。
そこにずっといたから見えてくる景色。

円山町のあの一角はほんとうにカルチャーの坩堝のような場所だ。
o-westは前のオンエアイーストで、グループのライブハウスがひしめいているし、club asiaとかさ、ブエノスはなくなっちゃったけど、いつも人だかりができていて、あそこのローソンなんかもうカオスの中心地のようになっている。
僕なんかはちょっと敷居が高かった。それこそ中央線沿線のライブハウスや下北沢のライブハウスよりも、きらびやかに見える場所だった。

今でも平日だとしてもあの辺は人だかりが夜になると出来る。
あの感じがある場所って、今はだいぶ少なくなってきている。
渋谷という町全体の持つパワーみたいなものがあるとすれば、そのパワーの澱のようなものがあそこなのかな。
そこにキノハウスがあることはすごい意味があることだなって思う。

ユーロスペースのあのでかい看板。
あれは夢だなぁ。
まぁ、宣伝費があればできることだろって言われそうだけど。
それはそうなんだけれど、そういうことじゃなくってさ。
あの道を通る人たちだけに見せるっていうのがさ。
なんだかたまらないよなぁって思う。
そりゃ、殆どの人が素通りするのかもしれないけれどさ。
映画の看板って今、すごく減っているでしょ。
その中でも、ユーロの看板って他で見ることがない作品ばかりでさ。
なんというか広告効果よりも象徴的なんだよなあって思う。

映画館って基本的に歓楽街にある。
それは歴史的にそういうものだからさ。
いわゆる興行会社が映画館を運営していたわけで。
キャバレーとか、ストリップとか、そんな劇場もたくさんあって、そういう人が集まる場所の中心地に映画館もあって、その周りに呑み屋や風俗があってさ。
それが今は歓楽街としては錆びれてしまった地域もあるし、運営が変わっていたりすることも多いし、なんというか少し錆色をした街の中心にミニシアターがあるなんてことがよくあるのだけれど、ユーロスペースの周囲はその錆色をあまり感じないんだよな。
どっちがいいということもないんだけれど、というか、あの寂しくなった歓楽街の雰囲気みたいなものもすごく好きなんだけれど、それって映画館に向かう時の感覚もあるし、映画を観てその世界観が体に沁み込んだ状態で映画館を一歩外に出た瞬間のあの感覚にも繋がっていてさ。映画体験としては、だから街の感じというのもセットだと思うのだけれど、ユーロが少し他の映画館と違うよなって思うのは、すごく文化的な体験をしたという感覚が残るんだよなぁっていうこと。

シネコンなんかに行けばすごく娯楽的な体験になるじゃない?
それこそディズニーみたいな?
あれはあれで面白いし、子どもなんかには最高だろうしさ。
そうなんだけれど。
文化的な体感というのはやっぱそれはそれで、細胞が全部生まれ変わっちゃったみたいな、ちょっと信じられないような衝撃になることもあってさ。
そういう場所なんだなぁって思う。

すでに若者の街じゃないなんてタイトルの記事だけど。
内容を読めばそこを中心に書いた記事じゃなかった。
実際、若者もたくさんいるしさ。
うん。

面白がって、ユーロに集まってくれる人がいると良いなぁ。
僕としてはユーロのレイトが活気づくと面白いなぁって思う。
なぜなら、やっぱあの一角は夜が面白いからさ。
映画観て、夜のあの街を歩いて渋谷なり神泉なりまで歩くのが最高なんだよなって思うよ。
匂いとかさ。化粧の匂いや、食べ物の匂いや、人の匂い。
スクリーンから戻ってきて、あのトンネルを通り抜ける。

唯一無二だなぁって思う。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/
劇場窓口にて特別鑑賞券発売中
先着50名様サイン入りポストカード付

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。