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自己認識について、炎上YouTuberに代表される『自分教』の罠、破滅に向かう思考の話

私には向井さんと言う凄腕のカウンセラーの友達がいる。彼が言っていた「自己認識」についての話が面白かった。

「オプラ・ゲイル・ウィンフリー(Oprah Gail Winfrey)って知ってる?オバマの出資者で米国で最も裕福な黒人なんだけど、彼女が流行についてのカンファレンスでこの前言ってたことなんだけどね、今、アメリカの流行の第一位は『自己認識』なんだよ」

「自己認識?」

「そう。自己認識。まあ、簡単に言うと"心"だね。これは最近の流行って言うより、第二次世界大戦後からずっと続く流行なの。戦後に『自分が大事』とか、『自分の感情を大事に』みたいなことが言われ始めたの。それってどういうことかって言うと、昔はさ、労働現場が全てを規定してたわけ、労働現場に絶対的な『正解』の基準があってさ、それに従っていたら、みんな満足したり、ハッピーになれたわけ。でも今インターネットで全世界が繋がっちゃってさ、一つの価値基準とか正解がないじゃない。そうすると、『現場』が自分の心にしか存在しないんだよね」

「なるほどー!正解とか、幸せの基準を決めるのが自分の心しかないわけね」

「そうそう。でさ、自己認識をするには、ある程度の距離から自分を客観視することが必要なんだよ。けどね、自己欺瞞に陥ってる人とか、『自分教』にハマってる人ってそれができないんだ」

「自分教?」

「そうそう、これも世界のトレンドなんだけど、例えばセルフィー載せて、いいね!と稼ぐとかさ、ネットで有名になって自己啓発とかファンビジネスで稼ぐとかさ、『Me フォーマー』とも言うかな。そう言う人たち。自分絶対主義。他人の評価なんか気にしない。最近すごく増えてるけどーーまあ、自分の心しか評価の拠り所がないから、そう言う人、増えるよね。そういう人はさ、正しい自己認識ができないんだよ」

「だって自分って、他者からのフィードバックと他者理解によって浮かび上がってくるものでしょ。ある程度の距離からパースペクティブをえて、自分を見てみる。他者と自分を比較する。それで自分の次の行動が決まるわけじゃん?でも自分教の人ってのは、他者に目が向いてないの。そう言う状態で、自己理解なんて、できるわけないじゃん」

「そっか」

私は納得してしまった。最近、DJ社長と言う人がパワハラをネタにして炎上を起こし、非難を浴びていたけど、あれは要するに、自己認識の圧倒的欠如と言う(そして、自己認識が圧倒的に欠如した状態でも信者が多ければ生きてゆけてしまう、と言う)時代の病あるいは特性なんだな。周りがファンばっかりになると、自己認識するためのフィードバックをくれる『他者』がいなくなってしまうから。

「つまりね、自分というものが絶対で、自分のことは自分が一番よくわかってます!他者評価とか気になりません!って人ほど、実は自己認識ができてないってことなの。

でね、ターシャ・ユーリックと言う人が書いた『insight(インサイト)』って本には、この自己認識の方法が書かれてるんだけど。

ターシャは本の中でこう言ってる。

『破滅に向かう思考の形態、それは……』」

「それは?」

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