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世界で一番好きな茶屋 前編

茶狂なのでコーヒーのことはさっぱりわからぬが美味しいお茶について聞かれたら自信満々に答えられる。世界で1番おいしい茶屋はどこかと問われれば、私は2つの店を挙げる。

西荻窪の「一芯二葉」と、ベトナムはホイアンの「Reaching Out」である。


「Reaching Out」は聾唖者の人々が働くカフェだ。”手を差し伸べる”という意味の店名の通り、聴覚障害者の就労を支援するNGOが経営するお茶屋だが、その由来や目的を知らなくったって、訪れた人は皆、この店の持つ魅力に感銘を受ける。

そう、この店の提供する、世界で唯一無二の価値ーー豊かで美しい、他では味わえない”静けさ”に。


ホイアンは世界中から人の集まる観光地だ。旧日本人街には日本統治時代に建てられた和建築がそこここに立ち並び、過去にタイムスリップしたようなのんびりした空気が流れる。ただし、街の中心部は観光客向けのレストランや土産物店が密集し、少々騒がしい。ここが外国人にとってとても魅力的な街であることの証拠ではあるが、長逗留していると流石に少し疲れてきて、静けさの中に逃げ込みたくなる。

そんな時、私はこの店を訪れる。

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