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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースを見て勝手に思ったり考えたりしたこと

ネットに蔓延る情報を知識として蓄えているタイプのニワカではあるが、映画化されたスパイダーマンは全て履修し、一部アニメシリーズやコミックやゲームを履修してきた一応?スパイダーマン・ファンボーイの一人として、字幕版・吹替版両方をしっかり履修してきた。

両方を見終えて、エモが熱いうちに思いを形にしたいという感情が沸き上がったものの、記事として成立する形で文章をまとめきる技量が僕にはないので、わーーーーーーっと書き上げたものを上げる。

既知の「運命」を「スパイダーマン」をブッつぶすこと

スパイダーマンは苦労の多いヒーローとして描かれてきた。ヒーロー活動を行う傍らで日常生活も送らなければならず、数多くの敵とたった一人で戦わなければならない。そんな中で彼は愛する人を失い、ヒーローとして精神的に成長して「大いなる力には大いなる責任が伴う」ことを学ぶ。

しかし、今作でマイルスは全スパイダーマンに定められた愛する人を失うという悲しき運命を事前に知ってしまい、決められた運命に逆らってしまうと幾多もの多次元宇宙が崩壊してしまうと告げられるのだ。

「全てのスパイダーマンは不幸と悲劇の元に成り立っている。正しい犠牲を払うべきだ」と他のスパイダーマンたちに諭されるが、果たしてスパイダーマン足り得る為には、悲しい運命を前に何もせずただ従わなければいけないのか?

「大勢の命」と「愛する者の命」が天秤にかけられた際、どちらか一方を失わなければいけないのか?…両方とも救おうとすることは許されないのか?
マイルスは全次元のスパイダーマンを敵に回して一人走り出す…。

日本語版ポスターのキャッチコピー。この物語を一言でうまく表現している。

テンプレ化していたスパイダーマンの成り立ち・在り方に対して真っ向から立ち向かうアンチテーゼ的存在としてマイルスを描いており、これは新しい観点だなあと感心した。

ただ、現状で少し気になるのは…
「何の根拠もなしに父親も多次元宇宙も救うという可能性にかけて、多次元宇宙を危険に晒す無責任な大戦犯」としてマイルスを描いてしまっていること。考えなしに突き進むのもまた若さだよね…と片付けてしまえばそこまでだが、次回作でマイルスのロジック・行動に説得力を持たせないと、途端に消化不良気味な作品になってしまうだろう。

結局運命には逆らえずに犠牲を伴う展開…。
マイルスによる隙のない天才的発想で問題が解決される展開…。
ご都合主義と運の良さでみんなにとってのハッピーエンドが訪れる展開…。

色々と先んじて考えることはできると思うが、次回作のビヨンド・ザ・スパイダーバースではどうか自分のちんけな考察・想定の「その先」を行ってくれることを祈る。

「オリジナル」な「オリジン」を作り上げる事の重要性

主人公のマイルズ・モラレスは、それまで我々がスパイダーマンとして愛してきたピーター・パーカーとは異なる別人。ピーターを差し置き、彼にスパイダーマンとしての役目を背負わせて成功させるのは至難の技と言えるだろう。(実際、コミック版で初めてマイルスが登場した時は一部ファンからは支持されず、論争の種となることがしばしあったとか…)

コミックで初めてマイルスが登場した『ULTIMATE FALLOUT』

しかし、前作映画を含めたこの「スパイダーバース」シリーズはマルチバースというプロットデバイスを駆使し、マイルズ・モラレスというプエルトリコ系の黒人少年が大いなる力を授かったのちの葛藤・成長・バックボーンをしっかりと作り上げ、唯一無二のスパイダーマンとして成立させているのだ。

もともと存在しているキャラクターをそっくりそのまま人種や属性だけをすり変えて、多様性に配慮しました~!とのたまうのは浅い。浅すぎる。

既存のキャラクターを上書きするようなことはせず、同じ信念を持つ異なる人種・属性のキャラクターに『オリジナルとは異なるオリジン』を与えて、新たなアイコンとして魅力を持たせる。これよ。

特にポリコレにぴーちくぱーちく煩いメリケンたちはこれを見習え。(過激派)

…と言おうとしましたが(?)ジェシカ・ドリュー(スパイダー・ウーマン)に関してはもともと白人女性という設定だったのが、なんの説明なしに黒人女性にすげ替えられているようなので…

…まあ、ハイって感じ(尻すぼみ)

←コミック版 スパイダーバース版→

大勢出てきたスパイダーピープルについて

…小難しいお話はいったんさておき…。マルチバースを題材にしたお祭り映画よろしく、数多くのスパイダーマン世界線からいろんなキャラが出てくるので自分が特にキャッキャしたスパイディをピックアップする。

①スパイダーマン・インディア
苦悩を知らないスパイダーマンになりたての陽気な若者。声優はデッドプールのドーピンダー役として有名なあのカラン・ソーニ氏。インド版ピーターであるパヴィトル役にピッタリである。吹替版、佐藤せつじ氏のお調子者っぷりあふれる演技も良い。
原作コミックでは普通のスパイダーマンのスーツに、インド特有のダボダボパンツを履かせたちょっとダサいデザインしてたけど、今作で超良改変されていた。マージでいいデザイン。

←コミック版 スパイダーバース版→

②スパイダー・パンク
イギリス発祥の(原作ではおそらくアメリカ)アナーキーな思想の持ち主のスパイディ。ヒーローを名乗らないものの、自身の正義はしっかり持っている。声優はゲットアウトの主役も演じたダニエル・カルーヤ氏。野心的でありながらも知的な声色とキツめのイギリス訛りの演技が特徴的。吹替版の木村昂氏の力強いボイスも彼のパンクな性格を反映していて良い。
たった数分の登場だが、しっかりと印象に残るキャラとなった。マージでいいキャラしてたので次回作でもっと見たい。

新聞や雑誌の切り抜きのようななかなかエッジーな画風

⑤スペクタキュラー・スパイダーマン
数秒だけだが、名作アニメシリーズ「スペクタキュラー・スパイダーマン」のスパイディがセリフ付きで出ており、声がしっかりジョシュ・キートンだったのでキャッキャした。吹替版では同作アニメと初代ライミ版のスパイディ吹替を担当した猪狩学氏。これもアツい。ソニーとマーベルのいざこざで元アニメは打ち切りエンド迎えちゃったけど、シーズン4やってくれよな…。

アニメ化されたスパイダーマン作品の中で個人的ベスト

⑥スカーレット・スパイダー
スカーレット・スパイダーことベン・ライリーも出ていたが、脳筋ギャグキャラになってしまっていたのはちと残念…。スパイダーマンを殺す為のクローンとして初めは作られたものの、物語の途中で自らのアイデンティティに苦悩し、最終的には正義の心に目覚めて、一時引退したピーターに変わってヒーロー活動を続けたりした魅力的なキャラなのだが…。

…まあ大量のスパイダーマンがいる中で明確なキャラ付けが必要だったんだろう。コミック準拠の赤青と黒の陰影がはっきりとしたヴィジュアルはしっかり再現されており、かっこよかったので、まあ良しとします…(何様)

ヴィジュアルはマジで優秀。かっこよすぎる。

ちょっとしたニットピック

「映像」「音楽」「脚本」どれをとっても素晴らしい出来で、個人的には今世紀ベストアニメ映画であると思っているが(スパイディ好き補正有)ちょこっと気になる点もあることにはある。

今作の「敵役」の一人となるスパイダーマン2099の描き方について

ミゲル・オハラことスパイダーマン2099がわかりやすい悪役のような描き方されているのは、見終えた後も「ぬぅーん…」と思うところであった。

元のコミックは1992年に出版されていたようで

凄惨な過去の体験を経て辿り着いた彼なりの正義の元で動いていることは描かれていたし、一概に悪とは言えない立ち位置のキャラなのは良くわかるんだけど、機嫌が悪くなって物に当たり散らしたり、マイルスやグウェンに対して暴言吐いちゃうような部分が目立っている。最終的にテンプレ的悪役イメージが残ってしまうのが惜しい。

根は優しく、非情な判断を下すことを望まずとも、多元宇宙を守るという「大いなる正義」ために静かに淡々と異常分子への対処をする疲弊しきったヒーローとして描いていれば、より深みのある「敵役」になったかもしれない。

…いやわかるよ?酷い体験した後やさぐれちゃうのもわかるんだけどさ…?





あと…東映版スパイダーマンがいなかった。…なんで?(殺意)まあ続編に期待ってところでしょうか…。


総括としては…最高の映画なのでみんな見ようって感じですね(雑)
ただ、物語の盛り上がりがピークを迎えたタイミングで「to be continued...」になるのは軽犯罪だよ(?)

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