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クリエイティブの力を高めるコツ(デザイナー・Hさんの事例)

T県を代表するグラフィックデザイナーのHさん。
29歳でデザイン会社を設立。
その後、ニューヨークADCやグッドデザイン賞など、数々のタイトルを受賞。現在は、T県デザイン協会の会長をされています。

そんなHさんに、「クリエイティブの原点」「クリエイティブ力を高めるコツ」について、お話をうかがいました。

◎子どものころの感性を大切にする。

子どものころは、よく自分で遊びを考えていました。
例えば、地面にチョークなどで〇をいくつか描き、そこに足を入れながらジャンプをする。
小さなころにやっていた遊びの一つです。
遊びを考えるということは、ルールを考えるということです。
どんなことをすると楽しくなるのか。
まずはそれを考えてみる。
考えたら、実際にそれをやってみる。試してみる。
物足りないと感じれば、もっと楽しくなる方法を考え、やってみる。
それが子どものころの遊び方でした。
このやり方は、私の仕事にとても通じるものがあります。
私はデザイナーとして、これまで数えきれないくらいの作品を生み出してきました。
仕事の根本には、子ども時代の「遊びの感覚」があるんです。
さっきも言ったように、まずはアイデアを考えてみる。
そしてそれを形にしてみる。
その形にしたものを眺めながら、もっとよくするにはどうすればよいのかを考える。
さらに面白くするための方法を考えてみる。
「やってみるから課題がわかる」と私は思います。
課題がわかれば、よくするための改善策が考えやすくなる。
これが仕事の基本だと思うし、クリエイティブなものを生み出す手法の1つだと思います。

◎「実験したい」と思う感覚を大切にする。

子どものころから私は、「これってどうなっているんだろう」と、そんなことばかり考えていました。
わからないもの、手の届かないもの。
そんなものがあれば、「知りたい!」と思いました。
例えばラジコン。
その仕組みを知りたいと思ったし、仕組みがわかれば自分で作りたいとも思った。
せっかく買ってもらったラジコンを分解し、親に怒られたこともあった。
「知りたい」
「実験したい」
「理解できたら、自分の手で再現したい」
「できないものは、できるようになりたい」

私の中にはそんな気持ちがいつもありますし、多くの子どもたちの中にも同じものがあるのではないかと思います。
その感覚を大切にするのも、クリエイティブな力を養うには、大切だと思います。
私は若い人たちに、よく次のような問いかけをすることがあります。
「ねえ、舞台の裏側、覗きたくない?」
魅力的で面白いお芝居。
それを見るのもよいけれど、その裏側を知りたくはないか。
裏側を知り、自分で面白い芝居をつくれるようになる。
その喜びやわくわく感を味わいたくはないか。
そんな意図を持ったメッセージになります。
お芝居を観る。
それも楽しいとは思うんですが、作り手の方が、見ている側の何倍も楽しいと思うんですよね。

◎「戦ってやる」という感覚がある。

私には、「やりたいことは、やってやる!」、そんな気持ちが強くあります。
取り組みたいことがあれば、取り組んでみる。
自分なりのものを表現してみる。
それが、たとえ誰かに止められても、です。
子どものころ、私はピアノを習っていました。
中学時代に少し自慢したい気持ちがあり、音楽の授業で、ビートルズの曲を即興で演奏してみたんですね。
そうしたら先生から、「ビートルズなんて不良だ!やめなさい」と言われた。
私は「なぜ?こんなにすごい音楽なのに」と思いました。
子ども心に、理不尽さのようなものを感じました。
先生にはそう言われたけど、私は自分の信念は曲げたくないと思いました。
「戦ってやる」、そんな気持ちが心のどこかにありました。
子どものころ、クイーンにも強い憧れがありました。
友人にクイーンのレコードを見せたら、「気持ち悪い」と言われた。
確かに彼らは、少々奇抜な恰好をしていたと思います。
それでも私は、クイーンを好きであり続けた。
誰に何を言われようともです。
「戦ってやる」
人から認められなくても、自分の信念は貫き通してやる。
少々頑固なのかもしれませんが、私がそのように思う理由の1つは、憧れがあったのだと思います。
ビートルズやクイーン。彼らの生きざまに対する憧れです。
ビートルズやクイーンは、戦っていました。
当時の音楽の常識や批評家からの声に対してです。
新しいものを追求する彼らは、それらにひるむことなく挑んでいたのです。
かっこいいと思いました。
自分の中に共感する気持ちもありました。
そして自分もそうありたいと思っていたのだと思います。
その感覚は、仕事をする今も大切な感覚として持ち続けています。

◎クリエイティブを高めるためのアドバイス。

クリエイティブの力を高める。
それはつまり、「生み出す力を高める」ということです。
クリエイティブの力を発揮するということは、「何かを生み出す側にまわる」ということ。
創造者や生産者の側になるということです。
見ているだけでなく、自分なりの何かを表現してみること。
そして発信をしてみること。
自分が生み出したものを人前にさらしてみること。
そういう側に立つということでもあります。
ならば、それらの経験を積むことが、クリエイティブの力を高めるためには有効でしょう。
SNSでいい。
ブログでいい。
TikTokなども面白いと思います。
何か自分なりのものを生み出し、発信する。
その際、先ほどお話したように、「子どものころの遊ぶ気持ち」を思い出してみること。
「舞台の裏側を見てみたい」という好奇心を持ってみること。
「実験をする感覚」を抱いてみること。
それらが行動のきっかけになり、モチベーションになるのではないか、と思います。
人は、同じことをずっと続けていると、飽きてきます。
飽きてきたら、違うことがしたくなるものです。
その時に、「何かを生み出す発想」を持ってみる。
消費するだけでなく、生み出すことを選択肢の1つとして持ってみる。
そういうことが、クリエイティブの力を高めるコツや心がけなのだと思います。


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