見出し画像

経営観点でカスタマーサクセスが意識するべき数字指標4選

先日、カスタマーサクセスの投資金額目安に関する記事を書きました。では、カスタマーサクセスの投資に対して目標として追っていくべき数字は何かを説明し、その計数改善方法について解説します。

カスタマーサクセス指標その1. 解約率を減らす

SaaS/カスタマーサクセスで最もよく聞く指標は解約率(チャーンレート)かと思います。実際に、カスタマーサクセスの立ち上げ初期は解約率が高いことも多いです。

さて、解約とはなぜ発生するのでしょうか?openpageの考えでは、解約されるとは、ストレートに言ってしまえば費用対効果があっていないことがほとんどの原因です。

しかし、意外にもカスタマーサクセス活動で、顧客にとっての効果はどうだったのか?という観点は意外に抜け落ちがちです。
なぜなら、自社で取れるデータが結果データというよりプロセスデータ(自社製品の機能利用データ)であるため、顧客に効果が出ているのを確認するためには、社内にあるデータをかき集めるのではなく、一歩踏み込んだ顧客へのヒアリングが必要です。

製品機能の導入率も大事ですが、まずは顧客に深く入り込んで、共に効果に向き合ってみる。これが解約率改善の最適アクションとなります。

顧客がお金を支払ってでも続けたい効果を出せるか?これを考えるには、効果についてより深く考察しなければなりません。
というのも、効果には、その裏に企業としての課題やニーズがあるものです。
顧客企業の中に課題もしくはやりたいこと、ニーズや戦略があって、それに叶えるためにSaaSを導入する=効果を出そうとする。という構造になります。

そして、この効果に向き合うということは顧客の課題、ニーズ、戦略、取り組みに向き合うということでもあります。そのため、解約を防ぐというのは、製品を活用してもらうのが目指すのではなく、顧客が考えるニーズや課題に合致して製品が使われて、その結果が出ていることが目指すということとなります。

そして、解約率の観点では一つ注意してほしいことがあります。
それは、そもそも顧客にとって優先度が低い/困り度合いが浅い課題やニーズを解決しても、効果感覚は薄くなるということです。
自社が叶える期待効果がそもそも顧客の求めているものでなければ解約されるのですが、それが盲点になりやすいです。
顧客にとって、カスタマーサクセスを実現するぞと選んだもの(=自社の製品活用)が、数多ある目標やゴールを考えたときに、そもそも取り組みの優先度が高い必要があります。
ですので、解約率を改善するとは深い顧客理解に立つ取り組みにならなざるを得ないのです。

さて、仮に顧客にとって高い優先度の課題が見えたとして、その効果を出すためには、製品機能とサービス(カスタマーサクセス)の磨き込みが欠かせません。

こちらは注意点その2なのですが、カスタマーサクセスが必要となる理由とは、SaaSの製品拡張性にあります。
どういうことかと言えば、SaaSというのは、開発リソースがあれば、機能をいくらでも増やし続けられる特質があります。つまり、価値を増殖させられます。
しかし、顧客の課題やニーズを深く理解して機能を開発しなければ、効果の出ない機能を開発し続けてしまいます。
SaaSは機能が増えるに従って「後戻りできない実装」も増えていきます。短期的には機能が充実して選ばれていた製品が、後発の製品にリプレイスされてしまう理由も、このSaaSの機能拡張性(機能はいくらでも増やせる)と開発の不可逆性(元に戻れない)によるものです。
「昔は良かったけど、今はこれがいいよね」が容易になりやすい事業の性質がSaaSにはあるのです。

ですから、開発の道を正しく歩むため、顧客の課題やニーズに確実にジャストミートするよう顧客の声(VoC)を拾うことが欠かせません。
また、機能要望単体だけ挙げること自体もプロダクトマネジメント上は役に立ちますが、望ましいのはその機能要望や課題感の背景にある構造まで共有することです。
というのも、表面的には便利だと思って作った機能が他の企業にとっては不評。要望をあげた企業も触ってみたらそもそもの期待と違う機能だった、ということがよくあるからです。そして、その負債の積み重ねが開発の不可逆性により蓄積し、競合他社にじわじわと抜かれていく=解約になりえます。

加えて、解約率を下げるには、顧客の声をただ聞いて開発すればいいものではありません。例えばいくら声が強くても、1社だけに当てはまる問題を解決しても効果は薄いです。
解約率は契約企業全社から計算されるものなので、製品サービス改善の影響の範囲度を意識しながら製品を組み立てていきます。自社の顧客全般に当てはまる重要課題順に着目して製品機能を作り込み、なるべく多くの顧客の製品の利用満足度を高めて、契約の継続を目指すことが望ましいです。

この製品の舵取りが、結果的にカスタマーサクセス支援に大きく影響するので、解約率に向き合うとは、単にカスタマーサクセスのタスクやスコアをどうこうして解決する話ではありません。

コミュニケーション上、顧客の重要な課題解決に集中して取り組む。開発上でも同じく多くの企業の重要課題から取り組む。そんなサービス(カスタマーサクセス)と製品の両輪の改善を、顧客の期待にジャストに応え、高みを目指していくことで、解約率は改善されていきます。

openpageの支援:

解約率改善のためのキーポイントの分析をしたり、契約が継続に至るまでのストーリー設計を行います。またそのためのハイタッチ/テックタッチの業務設計を行い、openpageの製品を活用してカスタマーサクセス品質がより高まるよう支援しています。
またプロダクト部門にフィードバックするための顧客要望の定性管理機能を提供しています。

カスタマーサクセス指標その2. カスタマーサクセス効率を上げる

ストレートに言えば、日本企業のカスタマーサクセスの8割以上は赤字コストになっています。
しかしこれは仕方のないことで、海外企業の事例を見ても、ベンチャー企業としての資金調達ラウンド初期はどうしてもカスタマーサクセスコストが膨らみます。
そして、SaaSのビジネスモデルとして利益を回収するのは、シリーズD〜上場あたりのマルチプロダクト戦略によることが多いです。
上場に向かっていく過程でカスタマーサクセスコストを効率化し、エクスパンション工程(ポストセールス工程)に人員配置できるようにすることで、SaaS企業は利益がでる体制になるのです。

はじめはエクスパンションするためのプロダクト自体がないため、まずは単一プロダクトのカスタマーサクセスをいかに効率化するか?がベンチャーSaaSの論点になります。
立ち上がり期はローテクなハイタッチで取り組みつつ、徐々に型化・デジタル化・テックタッチ化に取り組み、少ないコストで製品活用が自発的に進むモデルにしていかなくてはなりません。

さて、ではどのようにカスタマーサクセスは効率化されていくのでしょうか?キーワードは「セルフサービス」です。
カスタマーサクセスのコストを下げるとは、顧客のセルフサービス比率を上げるということです。
顧客がカスタマーサクセスいらずで製品を活用し、長く使い続けるなら人員を張らなくてよくなります。飲食店のレジや配給が人ではないシステムによるセルフサービスに変わってることのように、SaaS製品もいかにカスタマーサクセス体験の中に自然にセルフサーブの要素を含められるかが重要です。

はじめは労働集約的なカスタマーサクセスからスタートしつつ、年数が経つにつれ、徐々に製品活用はセルフサービスで完結出来るようにし、その分人はポストセールスで契約拡大の提案をリソースを割けるようにするのです。

もちろん、エンタープライズ顧客に向けたホリゾンタルSaaSで高単価の請求ができている事業に関しては、セルフサービスよりもヒューマンサービスが必要となります。

しかしその場合に課題となるのは、ヒューマンサービスCSとしての拡張性、再現性です。仮にハイタッチでのサービス提供を主とするサービスであっても、それが再現出来なければ顧客数を増やさないません。カスタマーサクセス活動のデジタル化と効率化は、再現性の観点で必要不可欠になります。

openpageの提案:

openpageはハイタッチからテックタッチに至るまでの各種機能を製品に実装しています。カスタマーサクセスのハイタッチのDXを行いながら、業務の型化やテンプレート化によって拡張性のあるカスタマーサクセス体験を提供可能になります。
加えて、顧客のセルフサービス強化のためのテックタッチ機能を搭載しておりますため、案内工数の削減をサポートさせていただきます。

カスタマーサクセス指標その3. ARRを伸ばす

カスタマーサクセス立ち上げ期は、正直いって契約継続の売上よりも取引社数増加による新規売上拡大のほうが大事だったりします。解約率を防ぐのも、既存顧客で売上を伸ばすというよりは、新規顧客で売上を伸ばしたいというニーズのほうが強く、新規ARRを安定的に増やすためのカスタマーサクセスというニュアンスが近いです。
そしてこの新規取引を増やす観点でカスタマーサクセスを考えるなら、営業で売れるようにするためにちょっと過剰サービスでもいいので、成果を出すためにコミットするということも時にはあります。
また、営業と同席して、こんな風に運用して効果を出しますと新規受注のためのプレゼンテーションに協力することも必要です。従来で言うところのプリセールスのような立場も求められるのです。

導入社数が安定して、営業完結でも売れるようになってきたら、じゃあ次はカスタマーサクセスの効率化、その先のポストセールス強化ということを意識するのが一般的なステップでしょう。

通常は、信用力のない単一プロダクト→単一プロダクトのPMF→マスプロモーションによる契約数の拡大→マルチプロダクト展開の仕込み→マルチプロダクト戦略による顧客獲得コスト/NRRの最適化のような順番でSaaS企業は収益力が高い事業モデルに進化していきます。

とすると、カスタマーサクセスのARR拡大に貢献するうえでの役割は、初期フェーズは営業同席など前工程よりでARR拡大を支援して、後期フェーズはポストセールスなど後工程寄りでARRを高めるという活動をすることです。

openpageの支援:

営業段階から顧客の運用成功を提案できるような顧客提案管理の機能提供を行なっております。つまりopenpageを営業の受注率を高め、ARRを拡大するために利用いただくのです。
また、openpageはカスタマーサクセスツールが元となっているため、ポストセールスを実現するための顧客情報管理や提案マネジメントの高度化も実現可能です。

カスタマーサクセス指標その4. クロスセル/アップセルの強化

上記に述べた通り、単一プロダクトの初期フェーズはそもそもクロスセルアップセルが発生しません。
この時期は、どちらかと言えば前工程の営業提案のサポートを担うほうがカスタマーサクセスの配置としては合理的になります。

ただ、製品数が増えていく過程でクロスセル/アップセル工程(エクスパンション工程)の重要度が増していきます。
なぜなら、既にリードや取引顧客を抱えている状態で顧客に製品提案をできるため、経営パフォーマンスが高くなるのです。

openpageがご相談を受けている会社として、上場企業や資金調達20億円以上後のベンチャー企業はエクスパンション工程の導入や改善がテーマとなるものがかなり多いです。
複数SaaSの製品ポートフォリオを上手くクロスセルする体制を作るというのは、多くの人が未経験ですので、手探り状態なのでしょう。

プロダクトが増えることで起こる障壁はさまざまです。
まず、覚えなければならない製品機能が単一プロダクトの4〜5倍と膨らんでいくので、社内の体制、特にナレッジマネジメントも重要になってきます。
複数機能のカスタマーサクセスを担うということは、3〜4社で覚えなければならないことを1社で全部覚えるようなものですので、相応の知識負担を課します。
顧客の成功のためにあらゆる製品を組み合わせて業務改善を行う、そんな提案が誰でも出来るようにする学習の仕組みがないと回りません。

また、仮に知識があったとしても、製品運用の提案は出来るが、他の商材の新規営業をする営業慣れがない、というシーンも出てきます。
カスタマーサクセスが営業工程に慣れていない場合は、営業経験者をカスタマーサクセスに異動させ、役割分担しながら複数製品を顧客にデリバリーするという意思決定も起こりえます。
しかし、それはそれで顧客体験や取得できる顧客の声がバラバラになってしまう懸念があります。

また、エクスパンション工程を考えるときに重要となる、エンタープライズ営業のノウハウも必要です。エクスパンションといっても顧客にない袖は振れませんので、取引金額を拡大するうえでは大手顧客との取引を真剣に向き合っていかなくてはなりません。
大手企業に対する営業はプロジェクトマネジメントにも近くなります。関係者や押さえるべきポイントが複雑になるため、商談工程をしっかり管理しなければなりません。
とすると、顧客との大手案件を進められるための人的・システム投資も行なって、会社として提案レベルを引き上げることも求められます。

openpageの支援:

openpage複数製品に拡張した際の各製品知見の整理、学習コンテンツとしての整備にご活用いただけます。
また、提案が複雑となるエンタープライズへのPMや総合提案の管理にopenpageをご活用頂き、大手顧客との商談成功確率を高めることを支援しております。