メディアだけに頼らない自給自足のコンテンツマーケティング

◼︎ジャニーズ再生のキモはファンクラブ?
竹中平蔵氏、8日放送の読売テレビそこまで言って委員会NP」でジャニーズ事務所に対して、企業再生のプロが注目している案件と語った。
再生のキモはリソースマネジメントで、ファンクラブ会員1400万人、年4000円、560億円の売上基盤がある。企業再生のプロならこの顧客基盤を真っ先に活用する。

日本の音楽市場は、ジャニーズのような巨大事務所のレントシーキング的な動きが大きい。
メディアも投資するドラマや映画などへのキャスティングに強く影響を与えながら、音楽の著作権やタレントの肖像権は強く牽制するという姿勢だ。
しかし、メディアの裏側にあるスポンサー(広告主)のガバナンスリスクを考慮すると、従来のメディア頼りの施策は継続が難しいだろう。強制的にK-popと同じ路線に変わらざるを得ない。

◼︎自社の顧客基盤、コンテンツ基盤へ投資するK-pop
K-popはBTSの事務所であるHYBEが有名で、特徴的なのはドラマや映画、漫画などのコンテンツを、自分らで生み出して、ストーリーコンテンツの自社IPを持つという動き方だ。
自社のプラットフォームであるWeverse(ウィバース)を中心に、コンテンツ発信、ファン投稿、ECを統合している。
自分でコンテンツを作って、自分でモノを売る、いわば自給自足のビジネスモデルになっている。
K-popではよく「供給が足りない」という表現がファンの間でなされる。これは事務所の自社コンテンツが足りないのでもっと発信してほしいという意味だ。

◼︎ BtoBビジネスにおける自給自足
弊社 openpageはBtoBビジネスの案件数のほうが多いが、BtoBにおいても同様のことは実は起こっている。
SalesforceのストリーミングサービスSalesforce+の発表、MailChimpの雑誌クーリエ買収など、自社自体が顧客と直接接点を持てるようコンテンツパブリッシャー側に行こうとする動きだ。
自分でコンテンツを作って、自社の製品に誘導すれば自給自足ができるわけだ。

◼︎企業の競争軸が変革している
私自身は、元々はメディア業界にいたことも、広告主サイドにいたこともあり、両方の立場で広告の出稿と掲載を行っていた。また、自社のプラットフォームや顧客情報DBのシステム開発を行ったこともある。
そこで見えていることは、マスメディアももちろん重要で広告効果は高いということ。ただ、企業競争は外部出稿のマーケティングだけではなく、BtoCもBtoBも自社によるコンテンツ発信(自給自足)に競争軸が移動してきていると分析している。

◼︎芸能人のYouTubeによる自給自足
お笑い芸人の宮迫 博之さんや渡部 建さんが、不祥事の影響で、TVのスポンサー問題の厳しさからTVでの再活躍が難しい。その代わり、本人たちは致し方がなくネットの自社コンテンツ発信のほうに軸を移している。
めちゃ×2イケてるッ!で活躍していたが、不祥事で干されてしまっていた山本圭壱さんは、株式会社LINGUS(リンガス)の松本泰治さんと共にYouTubeチャンネルを設立して、生き生きと仕事をしている。
松本泰治さんはめちゃイケのチーフディレクターを勤めていた、めちゃイケ演出のキーパーソンだ。けいちょんはYouTubeでの自らの発信に加え、カルタや大型ライブイベントなど、積極的な展開をしている。

◼︎自給自足の売上効果
有名YouTuberのヒカルさんが展開している自社アパレルブランドであるReZARDは、実は売上が25億円以上ある。今はYouTube主体で活躍している元AKBの小嶋陽菜さんのHer lip toは従業員が100名以上の規模になっている。
自分でコンテンツを作って、自分で売るという効果は実は恐ろしく高い。

私自身は、ITmedia、日経BP、NHKなど現在もメディアと協力した発信活動を行っており、メディア自体の価値を否定するつもりは全くない。
ただ、企業競争の観点からメディアへの広告出稿だけでは差が付きにくくなっており、トレンドとしては自給自足が重要であることは間違いない。