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「顧客勘定マーケティング」から考えるCRMとカスタマーサクセス

先日、CRMの領域では大先輩の前田徹哉さんとお話する機会がありました。
日経BPの書籍「売り上げを倍増させる“顧客勘定"マーケティング」の著者であり、CRM施策を中心にタワーレコードのオンライン事業の責任者を行うBtoCマーケティングご経験と、ビービットにてUSERGRAMのBtoB製品の販売をされていたご経験とがあり、大変楽しく勉強させていただきました。
(なお、口述のエピソードからわかるように、前田さんは人柄が明るく、おちゃらけた話をするタイプの方です)

対面でお話すると、とても素敵な方なので、もっと前田さんの考えを知りたいな~とインタビューなどを読み漁ってしまいました。これは単に本を読むよりもCRMやカスタマーサクセスにおいて学びが多かったです。

そこで、本記事は「顧客勘定マーケティング」から考えるCRMとカスタマーサクセス、というタイトルの通り、CRMやカスタマーサクセスで参考になる前田さんのお話を共有したいと思います。

前田さんは性格が大変おおらかで、「本の中で使ってる図もどんどん使っちゃって(パクっちゃって)いいよ!俺もいろんなとこで使われてるところをまとめただけだからさ~どんどん広がってくれればいいから」とおっしゃっていました。笑
とはいえ内容丸パクリは出来ませんので、図のご意図を尊重しながら本記事でいくつか解説いたします。

明るくて大好き、前田徹哉さん

顧客勘定とは?

商品勘定と顧客勘定の違い

顧客勘定は全く初めて聞くワードのため、どういう意味なのか馴染みがないかもしれません。
前田徹哉さんいわく、売上拡大の施策を考えるときに、従来は「この商品をこんな打ち出しにしよう」「この商品の売上が足りていない…」と商品を軸にする会話が多い、とのことでした。
これは『商品』をベースに計算をして施策を立てるやり方で、だから商品勘定(商品で売上を考えている)です。

顧客勘定とは、『顧客』を起点に売上を考える発想方法です。
売上を考えるときに、「じゃあどの顧客で上げる?」「どの顧客の売上が足りてない?」「どの顧客になんの施策を打つ?」といった顧客単位で売上や施策をねっていくのがアプローチとなります。

これが顧客勘定だ!顧客ごとの売上の前年比をみて、CRMやカスタマーサクセスの効果を検証する

顧客ごとに「勘定」を考え、CRMやカスタマーサクセスの効果をみる

顧客勘定のキモは、"顧客ごと"の売上がどう変わったか?を数値で測ることです。これはカスタマーサクセスにおいては売上継続率(NRR/NDR)という言葉で、米国でもトレンドになっている考え方です。前田さんはこの考え方を10年以上前から実践してきたので、大変先進的な人なんです。

表からは、新規の顧客獲得のみではなく、既存顧客の本年度の売上の伸びからも売上が発生していることがわかります。この、新規顧客と既存顧客の売上、という顧客で分けた経営の考え方こそ「顧客勘定」の重要なポイントです。

顧客ごとの売上変化をみる

売上を上げる、といっても様々な売上の増減の動きがあります。顧客勘定のキモのその2は、新規・既存顧客の売上の増減を可視化することです。
新規顧客の数はどの会社においても計測しているはずですが、じゃあその新規顧客が翌年にどうなっているのか?売上は何%変動したのか?を計測している会社はまだ多くはありません。
この顧客の売上の動きを整理すると、上記の図のように分けられます。
文章で簡単にまとめると下記です。

①多く購買されるSランクの既存顧客が、そのまま購買を維持
②Aランクだった既存顧客が、購買金額を増やしSランクにアップ
③Bランクだった既存顧客が、購買金額を減らしCランクへダウン
④Cランクだった既存顧客が、今年は購買なし
⑤これまで購買なしの新規顧客が、新たに購入しCランクへ

このように、売上を顧客の昨年・今年の購買アクションの変化から細かく分ける。そして、分けた顧客分類ごとに数値目標を立て、それぞれの顧客に対し施策を練っていくのが「顧客勘定マーケティング」の考え方です。
この考えにたてば、仮に売上を3倍にしてほしい、とした場合に、どの顧客をどうすることで売上を増やすのか。購買維持・購買拡大・解約抑制・新規獲得の選択肢が出てきます。この考えにおいては、既存顧客の購買拡大や離反阻止が大変重要となるため、既存顧客がまるで資産のように感じられるはずです。

従来、営業マーケティングは新規獲得、CRMは購買拡大、カスタマーサクセスは解約抑制とバラバラに目標に持っていたと思います。しかし事業全体で売上を高めようと考えるならば、新規顧客・既存顧客(お得意様、一般様、一見様)と顧客ごとに売上のポートフォリオを考え、部門の壁を取っ払って、成長戦略を全プロセス一貫して考えるべきでしょう。

なぜならば、例えば新規と既存の施策が別々に動いていれば、実は売上拡大余地の大きい顧客の獲得を、CPAが高い理由で見逃していた、など断裂が起きてしまうからです。
昨今の新規獲得のためのCPAが高騰している市場感では、既存顧客のLTVも考えてバランスさせるようなマーケティングのあり方が求められます。
仮に別チームで分業すること自体は組織である以上は致し方ありません。
しかし、事業全体の売上最大化のためには、例え新規獲得を担当している人であっても、既存顧客のLTVを意識したいところです。

裏話ですが、前田徹哉さんがタワーレコードにいらっしゃったときは、当時の社長が「オンライン事業の売上を3倍にするぞ!」と息こんでいて、会社内は「それは無茶だよ…」という空気が蔓延していたようです。
そこで前田さんが計算した売上3倍のロジックはまさに顧客勘定的。タワーレコードに愛着を持つ顧客の売上を伸ばせば実現が可能だろうと、商品ではなく顧客軸で顧客ごとの単価や購買数を計算し推進していったそうです。

オンライン事業の売上3倍!?の無茶振りにどう応えたか

最先端すぎる!CRMにおけるクーポン・ポイントの限界利益を考慮する

クーポン・ポイントなどによって発生するコストを加味して限界利益を考える

これまで説明した顧客勘定マーケティングの仕組みは、顧客ごとの昨対比の売上分析というお話でした。では、昨年獲得した顧客の今年の売上を上げるためにはどうすればいいでしょうか?多くのマーケター、CRM担当はクーポンやポイントによる販促施策を打っているはずです。
たくさん購入したらポイント還元率が◯%、ゴールド会員なら15%割引クーポン付与、といった割引をステップメールで案内するような取り組みです。

しかし、前田徹哉さんはこのクーポン・ポイントによる安易な値引きは「NO」だとおっしゃいます。というのも、彼が実際に顧客ごとの利益を分析したところ、なんと「売り上げの多い顧客と利益の高い顧客はイコールではない」、「むしろ、上位顧客として定義していた売上の上位30%の顧客の4人に1人(約25%)が赤字」だというのが分かったんです。
これは、思慮を欠いた割引キャンペーンのやりすぎ、クーポンやポイント設計の無計画さ、変動費で実はかかりすぎていたネット広告費などが原因となっていました。

本当に共感します!!!

少し脱線しますが、この限界利益のお話は、株式会社顧客時間の岩井 琢磨さん(写真上)『著書:マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P ✕ エンゲージメント(日経BP社)』は本当に共感していて、すごい内容ですねと前田さんに詰め寄ったようです。

株式会社顧客時間とは、博報堂におけるダイエー再生プロジェクトなどを推進し、コミュニケーションセンター長だった岩井 琢磨さんと、デジタルマーケティングの第一人者であり、「MUJI passport」のプロデュースやオイシックス・ラ・大地の役員として活躍されていた奥谷孝司さんが立ち上げたマーケティングデザイン企業です。書籍「マーケティングの新しい基本顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」ではデジタルイノベーション時代
のマーケティング施策について顧客時間の創業者のお二人が徹底解説されています。顧客と繋がることを大切にする、CRMやカスタマーサクセスに携わる人は要注目の会社です。

株式会社顧客時間とは?

これは対面でしか聞けない内容だと思うんですが、ここ最近、顧客時間の案件に前田さんもお手伝いで関わっていて、「どうも!ニセ顧客時間の前田です~」と笑いを取ろうとして、岩井さんが焦るというコントのようなことが行われているそうです。…話が脱線しすぎました。

話を戻すと、じゃあクーポンやポイント含め、既存顧客の販促施策はどう設計するの?というと、書籍「マーケティングの新しい基本顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」にデジタルの体験設計によるLTV向上について深く触れられており、また別の記事で解説したいと思います。ただし、一つ言えるのは、その施策設計のヒントとなるのは顧客の声であることは間違いありません。

インタビューで顧客の声(VoC)を聞くならうまくいっている顧客に聞くべきだ!

買わない顧客は「無関心」なのでそもそも話が盛り上がらず、不満もない

では、顧客勘定において顧客ごとに施策を考える際に、「買わなくなった離反顧客」「かなり購買しているファン顧客」だとどちらに話を聞いてみるべきでしょうか?
カスタマーサクセスの文脈では、解約顧客に話を聞くべき、が通説とされているのですが、前田徹哉さんは「ファン顧客に話を聞くべきだ!」と考えていらっしゃるようでした。

これはご自身の体験談からくるもので、そもそも買わない、あまり店に来ない顧客というのは「無関心」だそうです。だから話をしてもそもそも無関心なのでふわっとする。「ファン顧客」のほうが、ブランドについて良い面・悪い面いろいろ考えていて、話も盛り上がるし情報も貯まる、とご主張されています。これは私もイメージが湧く話です。

既存顧客の売上を高める・維持するためには、ファン顧客からの声を集め、ブランドの何に好意をいだいているか、不満を持っているかをヒアリングし、それを愚直に事業に反映させていくべきなのでしょう。

ただ商品を流すのではなく、新しい価値観を提案するべき

「提案」する、という役割

これは別のインタビュー記事の中で見たのですが、前田徹哉さんが考える売り場の役割とは、ただ商品を流すのではなくて、「新しい価値観を提案する」べきだとおっしゃっていました。これはまさにカスタマーサクセスですね。
買うことを支援するだけではなく、価値観が広がったなと人生においての小さな成功を実現する企業コミュニケーションのあり方はとても建設的です。
既存顧客からの売上を高めるうえでも、売らんかなの精神でただ販促連絡をするだけではなく、「この話を聞けて良かった」とお客様の成功を支援するような情報を届けるのがカスタマーサクセス的な経営です。

この、顧客の価値観を広げ、小さなことでも人生の成功に結びつけていくような顧客体験作りは、ポイントやクーポンに頼らないLTV向上施策の一つだと私自身は考えてます。
これまではBtoBのカスタマーサクセスに関しての記事を多く執筆してきましたが、本日はBtoCのCRM/カスタマーサクセスの内容を語らせて頂きました。

おわりに

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