見出し画像

膀胱炎アゲイン

懐かしい痛みがやってたのは突然だった。
排尿時、針で刺されたような鋭い痛みが走った。

……うーわー。
やっちゃったよ。膀胱炎。

この日は起き抜けから喉に痛みを覚え、泥のような倦怠感が全身を覆い、頭痛の酷きことかぎりなしで、ひたすら家で寝ていた。
夕方になってようやく重い腰を上げて病院へ行ったら、個室に隔離され、例の感染症の可能性はないか丁寧に探られ、PCR検査をしてくれる医院を教えられ、風邪薬一式をもらって帰宅。
その直後の排尿時に、痛みはやってきたのだった。

夫曰く、最近リモートワークなどで自宅にこもる人が増え、運動不足で体のめぐりが悪くなったりストレスで免疫力が下がったりして腎臓をこわし、膀胱炎にかかる人が増えているらしい。
こじらせて腎盂腎炎になるケースもあり、その場合は発熱や、下腹部や腰に強い痛みの症状も出ると。
とりあえず今回熱は出ていないのだけど、この後どう悪化するかわからない。
運動不足やストレスはまさにその通りで、気づかぬうちに免疫の下がる生活をしてしまっていたのだなあと悔やまれる。

医者で処方された中に抗生剤も入っていたので、まずはそれを飲みつつ水分をじゃんじゃん摂って膀胱を洗い、それでも治らなければ泌尿器科へ行くしかない。

……ううう、嫌だ。
検査のために導尿されるのが嫌だ。
他の雑菌が入らないよう、尿道に直接管を、……うっ(気絶)。


膀胱炎になってもいいからこの人の隣りを今は離れたくない

この短歌は2004年に出版した『月は燃え出しそうなオレンジ』に収録した一首である。
ずいぶん昔の歌にもかかわらず、Twitterと親和性が高いのかたくさんの短歌botに取り入れられ、つぶやいてくださっている方々もたびたび見かける。
穂村弘のエッセイ『もしもし、運命の人ですか。』でいちばん初めに出てくる一首でもあり、自分としても思い入れが強い。

短歌のイベントで、わたしを他の歌人さんに紹介してくださろうとした穂村さんが「ほら、膀胱炎の柴田さんだよ」と紛らわしいご紹介をなさったことも懐かしい。

そのときは「ぎゃはは! なんですかそのご紹介! 略しすぎィ!」と笑ったものだが、実はその後しばらくして、本当に膀胱炎にかかったのだった。
その後の泌尿器科通いは、メンタルをごりごりに削る憂鬱な時間となった。
今回は、そのとき以来の罹患である。

たとえどんなに離れがたい相手が隣りにいたとしても、長時間尿意を我慢してはいけない。

生きているうちに第二歌集を出すために使わせていただきます。