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『人間の絆』 -「人生の目的」を探す-

僕がかなり影響を受けた作家、モームのこの本についてここで僕なりの言葉で表現していきたいと思う。

「人生の目的」とは何か?どのように見つけるのか。それがテーマとして貫かれている約1500ページにも渡る長編小説。

キリスト教への信仰を断念して、「自由」となった主人公は、その自由さゆえに人生の目的を自分で探さなくてはいけなくなった。。。「人生の目的(The purpose of life)」を見つけるために、「人生」という名の放浪の旅に出る。

やりたい事に身を委ね、人生の中で様々な夢を見て、ときには理性が一切働かないような恋もして、まさに紆余曲折を繰り返す。そしてたどり着いた答えは…「人生に目的なんかない。そんなものはない。」という衝撃的なものだった。

自己満足を実現するために生きている内は、本当の意味で他人を思いやることはできない。ある種の「諦念」を抱き、日々の出来事や周囲の人々を「人生という旅の同伴者」と見るような姿勢になってはじめて、他者への思いやりが持てる。そんな広い心を持てる。すべてをありのままに受容することができる。

そんなメッセージが込められたフィリップ(主人公)の人生だったように感じた。

「人生の目的」はなんだろうか。ずっと考えているんだけど答えはまだ出ない。まずそもそも、もし見つかったとしても、それがこれから先永遠に変わらないと言い切る自信が全くない。

僕は焦っていたんだと思う。周りの人達がもう既に、人生で追い求めたい「何か」を見つけていて、それに打ち込んでいるような気がする。一方で、僕は何も見つけていない。

見つけなくてはいけない。僕は野球選手になりたいという夢を断念した身だけど、野球選手になりたいというあの気持ち。がむしゃらに過ごせたあの日々以上のものを見つけられていないという焦り。でも、そもそもその夢っていうのは、自分にとっての人生の目的だったのか?じゃあ、もしその目的を叶えたあとには何が待っているのか?あれは「盲信」以外のなにものでもなかったのではないのか?

そんな中で示された。「人生の目的って結局あってないようなもん」というメッセージ。僕にとってはとてもセンセーショナルだったな。

「人生の目的」は、ある意味で、人を束縛する。~をしなくちゃいけない。常に一貫していなくてはいけない。逆算志向で「目的」に向かって生きないと「達成」なんか到底できない。そういった強迫観念みたいなものが付き纏う。時にそれが恐怖の対象にさえなったりする。

でもモームは言う。たしか、この言葉は彼が70歳の時に記したエッセイ『サミングアップ』の中の言葉だったような気がする。

「人生は、まるで染色されて出来上がった絨毯の模様みたいなものだ」

染色された絨毯の模様

染色される絨毯の模様は、どんな形になるのか最後の最後までわからない。人生もそんなもので、振り返った時に「ああ、自分の人生の模様はこんな感じだったのね」みたいな感じ。だからこそ、人生の場面の一瞬一瞬を必死に生きて、一つ一つの模様を美しく、時には醜い模様になるかもしれないけれど、それも自分のかけがえのないオリジナルとして、形作っていくことが大事なんじゃないか。そう思わせる言葉だった。よくいう、「コネクティングドッツ」の考え方とも通底していると思う。振り返ってみて初めて分かるものがある。

そうして出来上がった僕の人生(絨毯)を、かけがえのないオリジナルの人生を、僕が心から美しいと思えるような『芸術作品』として、染め上げたい。欲を言えば、多くの人に良い影響を与えられるような『芸術作品』にしたいなと思っている。

何が「美しい」のか、何が「良い」のか。そういったことは今後の人生でずっと考え、更新し続けていくんだと思う。

でも大切なことは、そういったことを、人生のタスクとして真剣に向き合い続けること。考え続けることだと思う。そうやって、一瞬一瞬を僕なりに全力で生きて、せっせと自分の人生の模様を染め上げていくことだと思う。

モームの人生はここでは語りきれないほど面白い。大衆劇作家として名声を築いたのちに、40代で純文学作品であるこの自伝的小説『人間の絆』を著した。モームは「一般大衆の観察によってこそ真の人間の本質が読み取れる」と考える。そんなモームが織りなす天才的で繊細な筆致は、まさに具体的で立体的な身体感覚を想起させる。実際に自分自身がそのシーンに入り込んで追体験しているようなそんな感覚を覚えさせる。圧巻だった。

多くの人に、フィリップ(主人公)の人生を、「人生の目的」を見つける旅を、追体験してもらいたいな。

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「自分の言葉できちんと表現する」
僕はこれから、今まで出会ったモノや読んだ本、考えてきたテーマ、自分の専門分野など様々なものごとを、自分の言葉で表現する習慣を作ろうと思う。真剣に向き合い、自分の言葉で表現し、そして自分自身を見つめていく。そういったことをコツコツと積み重ねていきたいと思う。それを通じて、自分自身の「イズム」的なものを確立することができれば嬉しいなと思う。そして、このアウトプットを通じて、多くの人とインタラクションを交わせたら幸せだなとも思う。

こういった目的で書いています。わざわざ貴重なお時間を割いて読んでいただき心から大感謝です。

Taiki
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