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幸せの形って人それぞれだよな〜と思う話

きっとあの瞬間、世界でたった一人、僕だけだったかもしれない。漬物鉢を昼休みに買って、ほくほくしていたのは。

僕は、長年色んなお店を巡っては、「良い感じの」漬物鉢を探していた。「良い感じの」というのは、見た目がスマートで、適度な大きさで、蓋が付いていて、重しがちゃんと機能する、というもの。お察しの通り、僕はこだわりが強い。欲しい物を手に入れる時に、妥協はしたくない。漬物鉢なんて、どこにでも売ってるものではないし、おそらく需要も減っているだろうから、なかなか求めている漬物鉢には出会えなかった。

なぜアラサーのサラリーマンがこんなにも漬物鉢を欲していたのかというと、ジップロック的な便利な袋を使わないようにしているから。無添加のラップは使うけれど、口に入れるものを保存する容器には、プラスチック製品を使わないことに決めている。

出逢いは突然訪れた。

こ、これは!理想的な漬物鉢!!

お昼を食べたあとにふと立ち寄ったアンテナショップで、その漬物鉢は輝きを放っていた。あまり目立たない場所で、僕だけが見えるスポットライトを密かに浴びているように見えた。即決!

その日は仕事が終わるのが楽しみで仕方がなかった。もう心が満たされて、ほくほくしていた。

心の中でスキップをしながら真っ白なカブを仕事帰りに買って、早速漬物鉢を使ってみることにした。翌朝、珍しく早起きをして漬かり具合を確認すると、カブは美味しい漬物に変身していた。この漬物鉢に間違いはなかった!

その後、漬物鉢で漬物を作るたびに、良い仕事してくれるな〜、と感心してしまう。きっと、長い相棒になるだろう。今夜もまた、君と共に何を漬けようか。


#創作大賞2023 #エッセイ部門