カブ的生活 ♯9

真夏の太陽の下、国道を延々と走るのは暑かったが、バイク好きの高校生には快感だった。道は有田市を過ぎたあたりから海を離れ、山間部へ入っていった。気温が下がり風が心地よい。
二人が山間部を走りだしてすぐに、前をDAX50が走っていた。小柄で、ヘルメットから髪が伸び、どう見ても女の人だった。荷物を満載していたのでよく見えなかったが、近づき、ナンバーを見るとなんと土佐清水市。高知県だ。驚いてスローダウンし

もっとみる

カブ的生活 ♯8

八月の終わり、ツーリングの日を迎えた。早朝に謙一の家でキャンプ道具を二台に分けて積んだ。キャンプ道具は謙一の父から借りた。テントは三角のオレンジ色、二人で寝るには十分な広さだった。道具の積み込みが終わり、バイクに跨り謙一の母に別れを告げ、走りだした。大阪北部から大阪市内は見慣れた景色だったのであまり面白くなかったが、堺を超えたあたりから、非日常を感じて、旅行気分になった。北部の人間は、あまり堺より

もっとみる

カブ的生活 ♯7

放課後になり、二人はバスロータリーでいつもの様に話しをしていた。そこへ岡田がやってきた。岡田は謙一のクラブマンが気に入り、無免許でバスのロータリーを何周も回った。このバスロータリーは、昼は近くにある運動公園へ行く人で賑わうが、閉園後はほとんど誰も来ない。バスも一時間に一本だ。岡田はクラブマンが欲しくなり、二人に健一と色違いのクラブマンを買うと宣言した。今からバイトをしてお金を貯め、中型免許を取りク

もっとみる

カブ的生活 ♯6

夏も終わり秋になった。学校は文化祭の準備一色になっていた。博と謙一はあまり興味が無かったが、放課後は軽音楽部の部員で、共通の友人岡田の練習を見に行っていた。岡田はとにかく明るい。二人とは中学校は違うが、博と同じクラスになりすぐに謙一とも仲良くなった。岡田の入っているバンド以外にもいろんなバンドがあり、レベッカやミーシャ、佐野元春のコピーが多かった。
文化祭当日も岡田のバンドを見に行った。佐野元春の

もっとみる

カブ的生活 ♯5

今日は昼休みの間に放課後京都に行く約束をしていた。学校が終わると二人は急いで家に帰り、謙一がクラブマンに乗り、博の家のそばで待った。すぐに博もやってきて出発した。今は7月でもうすぐ夏休み。暑い盛りだ。博は白のTシャツ、ヘインズの青ラベルにジーンズ。謙一は白の半袖のボタンダウンにジーンズ。二人ともすっきりとした恰好だ。京都に行くといってもあては無い。ただ国道を京都に向けて走った。久世橋を渡り京都市内

もっとみる

カブ的生活 ♯4

謙一のクラブマンが納車され、謙一が博の家に来た。ヘルメットは二人で選んだアライの白いジェットヘルだ。白バイ警官みたいに見え、二人は笑った。とりあえず何処へ行くかを相談し、5キロほど山手に走ったバスロータリーに行くことにした。そこは自動販売機があり、小学生の頃よく自転車に乗り、二人で行った場所だ。小学生の時はコーラやファンタだったが、高校生になった二人はコーヒーを買い、日が暮れるまでバイクの話をした

もっとみる

カブ的生活 ♯3

謙一のクラブマンが納車され、謙一が博の家に来た。ヘルメットは二人で選んだアライの白いジェットヘルだ。白バイ警官みたいに見え、二人は笑った。とりあえず何処へ行くかを相談し、5キロほど山手に走ったバスロータリーに行くことにした。そこは自動販売機があり、小学生の頃よく自転車に乗り、二人で行った場所だ。小学生の時はコーラやファンタだったが、高校生になった二人はコーヒーを買い、日が暮れるまでバイクの話をした

もっとみる

カブ的生活 ♯2

SR400を手に入れた後、平日のバイトはやめたが、日曜日だけはバイトを続けた。クラブに入っていない博は学校が終わるとすぐに家に帰り、バイクに乗って出かけた。ただし毎日ガソリン代は500円。毎朝、母に貰った学食代の500円を、昼ご飯抜きにして浮かせ、ガソリン代に充てていた。その分、朝ご飯はドカ食いだ。毎朝、食パンを一斤食べていく姿を、博の母は不思議に思った。博には幼なじみの友達、謙一がいた。謙一はホ

もっとみる

カブ的生活 ♯1

吉田博、今年49歳になる男がいる。仕事はある上場企業の課長。順風満帆のサラリーマン生活だ。大阪郊外に家を建て、専業主婦の妻、高校生の娘、中学生の息子、犬。絵に描いたような幸せな家庭だが仕事はきつい。この生活を守るためと頑張っている。博の趣味はバイクだ。今はSR500に乗っているが、もう何年もまともに乗っていない。車検後に少し乗るくらいで、あとはガレージに眠ったままだ。キック式のスターターが堪える年

もっとみる

金沢から岡山へ、女ひとりリトルカブで走った2日間450kmの旅路 ~後編~

10年前の夏、女子大生だった私は、思い立って金沢から岡山までカブで帰省しました。大きなザックを荷台にぐるぐるとくくりつけ、地図片手に原付ツーリング。トラブルを人情(?)で乗り越え、なんとかたどり着いた中間地点の琵琶湖。48時間の旅の後半戦、そしてその後のお話です。

前編はこちら。

峠を越え、眼前には琵琶湖。450kmの旅も折り返しです。
日も暮れてきたので、琵琶湖沿いでひとやすみ…が、しかし!

もっとみる