鳩が本屋で雨宿りをしていた

鳩が本屋で雨宿りをしていた。正確には、2階にある本屋へと向かう階段にしゃがみ込んでいた。昨夜から降り出した雨は季節の移り変わりの中で戦い疲れた残暑を、いよいよ10月の世界から追い出してしまったみたいだ。鳩はきゅっと体を小さくして、首をすくめ、頭を干したばかりのおふとんみたいに柔らかそうな羽毛で隠そうとしていた。

最初は特に意識をしていなかったように思う。本屋から出ると、階段の半ば、一番右端に、何かがいる、と感じた。中途半端に長いその階段を降りながら、途中、何かが落ちている、と思い直して、近づくにつれ、違う、いる、生き物がいる、と、ドキドキしてしまったのだった。

雨の冷たさに凍えているのか、と思った。羽毛を毛羽立て丸くなっていたから。何が出来るでもないのに、少しの心配が勝ってしまって、鳩を覗き込んでみると、鳩はぷるぷる震えながら、用を足していた。うんち!なんとなく、この子は大丈夫だなと一人で納得してその場を後にする。階段を降りてすぐ右手にある駅の電車に乗り込みながら、果たして自分に何が出来たのだろうと、悶々と考え込みながら、雨の中の電車に揺られていた。

#エッセイ #つれづれ #思いつくこと #つらつら

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