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◆読書日記.《ウラジミール・イリイチ・レーニン『国家と革命』》

※本稿は某SNSに2019年1月6日に投稿したものを加筆修正のうえで掲載しています。

 ウラジミール・イリイチ・レーニン『国家と革命』読了。

レーニン『国家と革命』

 先日読んだ『帝国主義論』は「合法的に出版して広めたかった」という理由でけっこう過激な発言は避けているそうですが、本書はそんなレーニン節が爆発してますね(笑)。

 本書はレーニンによる、資本主義から共産主義共同体への道程を具体的に説明する本になっています。

 今回の引用はほとんどマルクスとエンゲルスの著書から持ってきて「いかにマルクスとエンゲルスが素晴らしい主張をしているか」とか「マルクスとエンゲルスの著書を研究すれば、共産主義はどのような形になればよいか分かる」と主張します。

 メインはマルクス『ゴーダ綱領批判』とエンゲルス『反デューリング論』です。

 本書を読むと、なぜロシアで「マルクス主義」という言葉が流行っていたのか分かりますし、マルクスとエンゲルスがいかに神様みたいに祭り上げられていたのか、その雰囲気が分かります。

 なんとなーく、マルクス自身が苦々しげに「わたしはマルクス主義者ではない」と皮肉を言っていたのが分かる気がしてきました(笑)。

 本書ではもはやマルクスの著書は共産主義者の聖書みたいになってまして、マルクスの著書から文章を引用してきて「だからカウツキーはマルクス主義者ではない」とまたカウツキーをケチョンケチョンに批判します(笑)。

 なので、レーニンの本書での主張は少なくとも「科学的」ではないんですね。

 本書では非常に具体的に「共産主義の世界を作り上げるためにはこのようにしなければならない」という方法や、共産主義共同体の具体的な形などを説明している訳ですけども、それらの根拠が全て「マルクスとエンゲルスがそう主張しているから、それが正しい」になっている。
 教条主義的なわけです。これじゃあ科学的になりようもない。

 しかし、本書を読むと共産主義者の多くがどのような過程で世界の共産化を行おうと考えていたのかがハッキリと分かります。

 レーニンの主張する核は、だいたい「暴力革命の必然論」「プロレタリアート独裁」「中央集権的体制」というみっつの段階で説明ができそうです。

 資本主義社会では政府・官僚組織・金融機関・巨大資本が癒着して国を支配しているので、全ての人が平等に暮らせる共産主義世界を作るには、それら資本主義社会の支配層を全てを取り去らなければならない。
 しかし、選挙やら言論活動やら、穏便な活動でこれらの強力な支配体制に勝利することはまず不可能だ、と。

 そういうロジックで「暴力革命が不可避」なのだ、ということを主張しているようです。

 そして、ブルジョワを排除するプロレタリアート独裁に移行してブルジョワと癒着していた権力を排除し、中央集権体制で共産主義の共同体制を作り上げていく……という青写真までができているようです。

 しかし、その「暴力革命の必然論」「プロレタリアート独裁」「中央集権的体制」のどのプロセスにも、スターリンや毛沢東やポル・ポトみたいな強烈な野心を持った怪物が権力の中央に滑り込んでくる可能性があります。
 これらの理想がいつの間にか抑圧政権に乗っ取られる様は、ジョージ・オーウェルの『動物農場』で理解できるでしょう。

 レーニンの構想した共産主義の姿は、改めて見てみるとほとんど「ユートピア思想」と思えるほど実現が怪しいし、難しい。
 共産主義の世界的実験のほとんどが失敗に終わった現在の状況を、レーニンはどう見るのか? それでも彼はマルクスを読み返して新たな革命論を展開しそうなほどの頑固さを感じます。


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