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公園で犬に噛まれた...対処法は?【ドクターに相談!002】

息子が犬に噛まれました。
公園まで散歩に来ていた老夫婦の飼っているゴールデンレトリバーに噛まれ、出血してしまいました。
傷口はあまり深くないかと思うのですが、狂犬病などに感染しているんじゃないかと、とても不安です。

どう対処すればいいのでしょうか?

相談者:37歳女性(息子6歳)

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犬に噛まれた場合に自分でできる対処法や、病院に行くべきケースにはどのような症状が挙げられるのでしょうか。
また、狂犬病などに対する処置方法や、狂犬病発症に関する情報についてもドクターに解説してもらいました。

犬に噛まれたら、3種類の対処方法を検討する

基本的には、犬や猫、小動物などに噛まれた場合は以下3つの確認が必要になります。

1. 傷の洗浄と処置
2. 抗生物質の服用
3. 狂犬病ワクチンと破傷風予防注射

これらの対処について一つずつ詳しく見ていきましょう。

犬に噛まれたときの対処法1:傷の洗浄と処置

まず最初は、噛まれた箇所の止血処置をおこないます。

キズが軽いものであれば、ティッシュやタオルなど汚れが付着していないもので、キズを5分ほど圧迫します。5分ほどしたら、ゆっくりと圧迫を解除していき、出血がとまっていることを確認してください。

万が一、キズが大きくて圧迫で出血がおさまらない場合は、圧迫し続けた状態で速やかに医療機関を受診してください。

次に、止血してからの洗浄処置についてです。
出血が止まったら、次はキズをキレイに洗浄することが大切になります。
ご家庭であれば水道水で構いませんので、流水でよくキズを洗浄してください。

もしも痛みが強い場合や、キズが深くて十分に洗うことが難しい場合や傷が大きく、周囲の腫れが強い場合には、医療機関で速やかに処置を受けるようにしましょう。


犬に噛まれたときの対処法2:抗生物質の服用

二つ目は抗生物質の服用についてです。

犬や猫の口の中には、数多くの細菌が常在しています。
これらの動物に噛まれたり、引っかかれたり、あるいはキズをなめられた場合には、パスツレラ菌やブドウ球菌、連鎖球菌といった細菌に感染する危険性があります。

こうした細菌への感染を防ぐために、まずは流水でキズをきれいに洗うことが大切です。傷口が小さくて深い場合は、ご家庭で十分に洗い流すことは難しいケースが多いため、医療機関を受診するようにしてください。

また、キズの程度にもよりますが、傷口からの感染が心配される場合は抗生物質の服用が必要となります。傷口から入り込む可能性の高い菌に対して効果が期待されるお薬を処方してもらいましょう。
(抗生物質の処方例:アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®)3-5日間など)

犬に噛まれたときの対処法3:狂犬病ワクチンと破傷風予防注射

三つ目は、狂犬病ワクチンと破傷風の予防接種を打つことです。

特に、犬に噛まれたという相談をいただく患者様の多くは狂犬病の感染を心配される方が多くいらっしゃいます。
では、日本で犬に噛まれた場合には本当に狂犬病ワクチンを必ず接種しなければならないのでしょうか。犬に噛まれた場合に狂犬病ワクチンを打つべきか否かという点を客観的情報をもとに考えていくことが好ましいです。

また、狂犬病と同様に注意が必要なのは破傷風です。破傷風の予防接種に関しても正しい情報を理解しておく必要があります。

狂犬病ワクチン接種の必要性について

犬にかまれた場合、ワクチンといえば狂犬病ワクチンを連想される方が多いかもしれません。

たしかに狂犬病は適切な予防策がおこなわれていない状況で、速やかな治療がおこなわれないと非常に致死率の高い疾患です。

しかし、日本での発症数は過去50年間で、わずか3例の報告のみ(2006年の2例と、2020年の1例)で、そのいずれもが輸入事例(フィリピンで動物と接触して発症)でした。
世界で毎年5万人以上がなくなっていると推計されている狂犬病ですが、日本では国内でのケガが原因で狂犬病を発症する報告はなく、日本国内は狂犬病に関しては安全な国といえます。

ではなぜ、日本では狂犬病が発生しにくいのか。

日本で狂犬病の発生が少ない理由には様々な理由が考えられますが、特に『予防』『早期発見や蔓延防止』の仕組みが確立されている点が大きいと挙げられます。

『予防』という点では、日本では狂犬病予防法により、生後91日以上の飼い犬への狂犬病ワクチンの予防注射を年に1回おこなうことが飼い主に義務付けられています。

『早期発見や蔓延防止』という点では、2022年6月からは環境省の取り組みで、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫にマイクロチップを装着し、「犬と猫のマイクロチップ情報登録」システムへの登録も義務化されました。

このような対策により、輸入感染例を除き、日本国内では狂犬病の新規発症は今日では0にコントロールされています。

もちろん海外(特に東南アジア)で犬や猫などの小動物に噛まれた場合には、キズの状態にもよりますが、すぐに医療機関で狂犬病ワクチンの接種が必要となります。
とにかく、海外での狂犬病予防はスピードが重要です。ケガをした場合は、まずは放置せず速やかに現地医療機関を受診し相談してください。

破傷風予防注射の必要性について

日本国内で犬や猫にかまれた場合、先述したように狂犬病ワクチンの重要度はそれほど高くはありません。しかし、狂犬病ワクチンよりも大切な予防接種として、破傷風菌に対する予防接種(破傷風トキソイド®やテタノブリン®)があります。

破傷風菌は、芽胞という形態で土壌を中心に環境中に広く生息している細菌です。土壌に生息している細菌であるため、ケガをした場合、傷口に破傷風菌が入り込みテタノスパスミンという神経毒素を産生します。その毒素は3〜21日間の潜伏期間を経て、筋肉のけいれんや硬直など、さまざまな全身症状を引き起こします。

破傷風に関しては、地域を問わずに発症の報告があるため、海外はもちろん、日本国内でも毎年100例ほどの発症、5〜10例程度の死亡が報告されています。

破傷風に対する予防接種は、海外に限らず日本においても命を守るために重要な処置方法と言えるでしょう。

前に述べた通り、日本国内での狂犬病発症報告はここ50年間で見受けられません。その事実をご理解いただいた上で、どうしても心配だという方は遠慮なく医療機関へご相談ください。
また、傷の深さや破傷風の感染に対する心配がおありの場合は、速やかに受診いただくことをおすすめします。

9月28日は世界狂犬病デーとして制定

狂犬病ワクチンを開発したパスツールの忌日が由来となり、9月28日は世界狂犬病デーとして制定されています。
世界狂犬病デーは、狂犬病の影響に対して注意喚起をするとともに予防法の情報発信を提供することが目的となっています。

犬はペットとして長いあいだ人間に親しまれてきた動物です。しかし、さまざまな有害な菌を保有しているケースがあるということを忘れてはいけません。

狂犬病をはじめとした病気に対する正しい知識をもつことで、犬と飼い主どちらも健康に暮らしていきたいですね。


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