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『小さな世界』

空一杯に両手を拡げ、ぎゅーうっと事象を握りしめる。

ぽんっと手のひらに、小さな世界が誕生した。 

世界は実はオモチャで出来た作り物で、現実世界は実は僕の頭の中の産物で、この世は一人よがりな僕の為に存在しているのだった。

小さな世界が僕を中心に回っている。

自分がこの世に存在していることが、あまりにも突拍子もないことに思えたので、世界は実はゼンマイ仕掛けで出来ていて、僕が住んでる家も実はハリボテじゃないかと内部構造すら疑った。そしてゼンマイ仕掛けの全世界は、まだ幼い僕を支える為にギイギイと音を立ててメリーゴーランドのように動くのだった。

けれど、その小さな世界の中には、小さな動物たちが暮らしていた。邪心を持って触ると粉々に壊れてしまいそうだ。
僕は、小さな世界の動物たちが好きでたまらなくなり、愛おしくてたまらなかった。

僕は産まれたての頃、両親に愛されすぎたのかも知れない。

僕は答えを知りたくて、空一杯に両手を拡げ、ぎゅーうっと事象を掴み取った。

答えはね、実は僕を取り巻く果てしなく広い外の世界にあると知ったのは、実は大人になってからの事だった。

写真 小幡マキ 文 大崎航

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