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【ルーツの根の全貌をどこまで解き明かせるか(読書感想文:蛇にピアス)】

蛇にピアス、読了。
頭角現していたのね、既に…って感じ。(芥川賞受賞作品だから、そりゃそうだろうけれど)

だって文体も言葉もシンプルなのに、奥行きを出せるってのはセンスよな。1つ間違うとボキャ貧に見えるし…だから若い作家は背伸びしてまわりくどい言い回しや難しい単語使ったりするが、ただこの"スプリットタン"という奇抜な題材にそれを合わせると、一気にイロモノに寄りそう…等身大の言葉かつ端的だから、リアルで勢いもあるけれど荒削りに感じない。
言葉選びも良くて『具合が悪くなるような動悸に、胸をおさえながら携帯を取って、シバさんに投げた。ナイスキャッチ。』この緊迫の中に"ナイスキャッチ"という楽観的な言い回しをぶち込んでくるところも好き、主人公の壊れた情緒が垣間見えるから。

ちなみに村上龍氏のあとがきも良かったのだけれど、本編を読みながらなんとなく"限りなく透明に近いブルー"を思い出していたので(似ているとは言えない。あの作品はもっと客観的というか…荒れつつも自由な若者の暮らしを淡々と書いている感じが魅力的な作品だし。文体もうまく言えないけれど、海外小説の和訳のようだった記憶。)興味深かったな。
というのも、蛇にピアスの主人公の女性"ルイ"がミッシェルガンエレファントが好きな知人に似ていたから。昔、その人の荒れた生活を見て"限りなく透明に近いブルー"をすすめたら「読んだことあるよ、ミッシェルの"リリィ"はそれを元に書かれた曲だから。」と言われて調べたら、本当にそうだった。
本作の主人公を見て、またその人を思い出して、あとがきを見たら村上龍氏で、ミッシェルは昔から自分も聴いていたのにリリィの話は知らなくて…面白いな。人も文学も音楽もそう、芯があればルーツがあり、辿れば必ずどこかでリンクしている、多少ジャンルが違っても。網状に広がるルーツの根の全貌をどこまで解き明かせるか、が僕にとっての人生か。


あけましておめでとう。

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