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《緊張の緩和》とは何ぞや

よく《緊張と緩和》や《緊緩》とも言われる, 2代目桂枝雀さんが提唱したお笑いの基本的概念が《緊張の緩和》です.

私達が普段目にする映画やドラマなどの物語には, 全て《緊張の緩和》の仕組みがあります.

《緊張》から解き放たれたときの《緩和》が笑いになる, 簡潔に言うとそんな話です.
よく糸に例えられますね.
① 糸がピンと張られた状態 = 緊張
② 糸がプツンと切れた状態 = 緩和

以下で話す内容は全て枝雀さんの著書からの引用, 私なりに噛み砕いた解釈や個人的見解を交えたものです.
私というフィルターを介したくない方は, 是非とも直接著書をば.

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480027777/kamayannokyog-22/

もしくは, YouTubeで[ 緊張の緩和理論 ]で調べてもらうと, 桂枝雀さんと上岡龍太郎さんの動画が出てくるのでそれを是非.


笑いの三段階

① 緊張の大緩和
俗に言う《悟り》の境地です.
緊張も何もなくて常にニコニコしている, そんな笑いを指します.
② 喜びの笑い
嬉しいことがあると「やったー!」って笑いますよね.
古くは原始人のときも, 人々は獲物を狩りで捉えたときは喜んで笑っていました. (笑っていたはずです.)
③ 笑い
一瞬で起こる爆発的な笑いを指します.

この三段階を視覚的に捉えるには, ピラミッドを想像すると良いでしょう.

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笑いの分類

みなさんは普段何気なく笑うことがあると思いますが, そんな笑いにも種類があるとされています.

① 知的な笑い『変』
普通のことが《緩和》で, 異常なこと(変なこと)が《緊張》となる笑いです.
しかし, 《緊張》が過ぎると, 私達は《緩和》が来ても笑えません.
不安や恐怖が勝ってしまうからです.

漫才が何故笑えるかって, 大前提として我々が『変』を受け入れているからです.
これからボケてツッコむやりとり(=『変』)を受け入れているからこそ, 根本にある大緩和と照らし合わせて笑えます.

少しズレているのも『変』ですが, 逆にピッタリ合うのも『変』です.
群像劇なんてのも, 様々なキャラクターが別々の物語を進行させて, 最終的に一つの結末に行き着く, なんてのは普通ではあり得ません.
だからこそ『変』で面白いんです.

② 情的な笑い
『他人のちょっとした困りごと』
困っている状態が《緊張》で, 困っていない状態が《緩和》です.
自分のことだと笑えないから『他人の』であり, あまりに大きな困りごとでも笑えないため『ちょっとした困りごと』なんですね.

貧乏人が転んでも何だか笑えませんが, 金持ちの嫌味な奴が転んだら笑えますよね.

③ 生理的な笑い『緊張の緩和』
①も②も結局は生理的な笑いですが, より根本の話です.
結論から言うと, 信頼関係が《緩和》となる笑いです.

赤ちゃんは, 知らない相手からいないいないばぁをされても喜びません.
しかし, 信頼のある母親のいないいないばぁは喜びますよね.

知らない相手の場合
「いないいな〜い」『誰誰〜?』
「ばぁ!」『……誰?』
母親の場合
「いないいな〜い」『誰誰〜?』
「ばぁ!」『ママだー!(キャッキャッ)』

芸人さん同士のイジりを想像すると分かりやすいかもしれません.

④ 社会的・道徳的な笑い
『他人の忌み嫌うこと』
要はタブーに触れることです.
毒舌なり下ネタなりはこれに分類されます.
タブーに触れるのが《緊張》で, それを受け取る相手のリアクションによっては《緩和》となります.

①〜③は全人類・全世界に共通する笑いですが, ④に関しては国や文化, 育った環境に依ります.
この④は使いどころが難しいため, 下手に手を出すと火傷します.


サゲ(オチ)の分類

サゲとは, 落語のオチのことです.
サゲには元々いくつか種類がありましたが, 枝雀さんが『この分類は視点が統一されていない』とのことで, 《話の構成》に着目して独自に分類しました.

【料理に例えると】
《旧来の分類》
「激辛料理」「日本食」「男飯」
「簡単料理」「ズボラ飯」
→ 分類されないるようでされていない.
《枝雀さんによる分類》
「中華料理」「フランス料理」
「トルコ料理」「イタリア料理」
→ 視点を定めて分類している.

サゲの分類を理解しやすくするための領域区分をまず示しておきます.
と言うか, ここは説明するよりも図を見た方が分かりやすいと思うため, 説明は省略します.

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① ドンデン (合わせ - 離れ)

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② 謎解き (離れ - 合わせ)

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③ へん (離れ)

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④ 合わせ (合わせ)

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直感的に理解出来ましたか?

サゲの相関関係
全てのネタは次の図のいずれかの座標に位置します.
上二つは緊張と緩和がハッキリ別れていますが, 下二つは緊張と緩和が混ざっています.

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終わり

以上のように, 笑いにも理論はあります.
ネタを作る際に毎度気にしろということではありませんが, ネタを評価する材料にはなります.
知っているのと知らないのとでは大違いです.
また, これを活かすことで人を驚かせることも, 人を怖がらせることも出来ます.
漫画家や小説家, 作家志望の方もこの理論は知っておくべきかと思います.

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