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尾道での大林宣彦映画監督のお話によせて

"冷暖房完備の教室で
教科書の内容だけ覚えさせても、
それは心の貧しい
金もうけのうまい人間ができるだけ。

いっぽう木造校舎には
冬の寒さと日差しがある。
それはまるで地獄と天国だけれど
だからこそ、友情や優しい心が育つ。"

大林宣彦監督から直接きいた言葉が
いまでも
いまだからこそ、思い出されます。

それにきっとこれからは
教科書の内容を覚えるだけでは
心も懐も豊かさとは縁遠そうです、監督。

***

こんにちは!
おしるこイラストレーション
おしること申します。

キンクマハムスターのおもちと一緒に
広島県の尾道に滞在したことが
動物イラストを描き始めるきっかけとなったお話は
最初のnoteで書きました。

その尾道で
「転校生」や「時をかける少女」などの
映画作品を作られた大林宣彦監督が、
わたしがヘルパーとして滞在した
ゲストハウス併設のカフェにいらして、
お話をしてくださる夜がありました。

今回のnoteは
そんな尾道でかいた旅帖(たびちょう※)と
心にのこった大林宣彦監督のお話から、です。

尾道の旅をちょっと覗き見する感覚で
あるいはものづくりに携わるかたには
わたしが感じた
大林監督の哲学のほんの片鱗に
触れるような気持ちで
お読みいただければ幸いです。

【※旅帖(たびちょう)】
旅のお供として自由に書いたり貼ったりして、後から思い出になるノート。
旅ノートともいうそうですが、私は旅帖と呼んでいます。

✏️旅帖をめくれば

沖縄のゲストハウス滞在時には
ゲストさんとの交流が多い宿だったこともあり、
旅帖には
出会った人たちに名前や一言メッセージを書いてもらっていました。

尾道では、
色鉛筆を持ち歩いて
風景をちょっとスケッチしたり
その時の自分の気持ちをメモしたり。

ページを切りはなして
出会った人に手紙をつくって渡したり。

誰に見せるでもなく気軽に書いた旅帖も
ふと見返せば、
その時の景色や感情がみずみずしく思い出され
お金を出しても買えない
宝物のひとつになるところが、好きです。

✏️最前列で聴くことになった大林監督のお話

まるでうなぎが寝床にするような
奥行きのある尾道町家を改修し、
尾道特産のあなごにちなみ名前をつけたという
ゲストハウス"あなごのねどこ"

そこに併設された"あくびカフェー"も
やはり細長い店内で、
大林監督のお話会のある夜は
ぎゅっと並べられた椅子にほぼ満員の状態でした。

それでもなぜか空いていた
最前列の2席(みんなの遠慮)に
奥で控えめにしていたわたしともう1人のヘルパーが
「座って座って」と促されるまま
着席して、お話会は始まりました。

✏️心掴まれるお話たち

"映画「風の歌が聴きたい」は
耳の聴こえない実在の夫婦の手話の話。
劇中で音楽が流れるシーンの字幕に「♪」と表示することについて
「無いほうがいいか?」と本人に尋ねると
「いい画をみれば自然と聴こえるから大丈夫。
だから全編いい音楽が聴こえるような映画を作ってくれ」
と言われた。"
”(指揮者の小澤 征爾氏について)
なぜオートバイひとつで大陸に渡り
有名な大役をできたのか、謎だった。

オーケストラの指揮をする際、どうもうまくできなかった。
その曲は○○地方(辺鄙な場所)の曲で、
奏者の中で1人だけその地方出身者の女性がいた。
そこで彼はその女性に「母国語で話してくれ」という。
その女性は
「でもみんなにはわからないし、
わたしは英・米・スイス・独・仏と語学はなんでもできるから
それらの言語で話しますよ」
というが
彼は「いいから」と押し切り話してもらう。
すると、
どうやらアクセントが頭のほうに来るのが特徴とわかる。
そこで曲もそのように演奏したら、とても良い名曲となった。”
"雪国の人は、寄り添う。
〈あいにくの雪〉を
〈恵みの雪〉に変える文化がある。
人々が輪をつくる。"

旅帖のメモをもとに書き起こしたので
細かな言い回しは違うかもしれませんが。

このようなことを監督が
次々とお話してくださるので、
わたしも夢中で聴きながら
それを頭に、旅帖に留めようと必死でした。

大林監督のお話は

「"本物"とはなにか」

「ハンデや逆境があってこそ、
強く美しいものを生み出したり
感じ取ったりできるようになるのかもしれない」

ということを、考えさせてくれました。

✏️そして、こんなお話も

"〈観光〉とは〈光を観(み)る〉ということ。
光とは知恵
旅人が知恵を、その土地の最長老に会って聞くこと。
そしてそれを自分の土地に持ち帰って
その風土に合わせたことに繋げること。"

当時は尾道移住もふんわりと夢に見つつ
空き家を探したり
尾道の方々のお話を聞いたりしていたわたし(と夫)でしたが、
最終的には
「尾道の精神を持ち帰って、地元で頑張ろう!」
という結論にたどり着きました。

その想いは
「自分のお店や仕事は自分で作る」という目標となり
"おしるこイラストレーション"として
今日まで繋がっています。

わたしの尾道滞在は
まさに〈観光〉でした。

それでもまだ道半ば。
地元愛はあれど
風土に合わせたことに
わたしはまだ繋げられていません。

〈観光〉はずっと続くのですね。

世にのこる作品を多く生み出され
絵描きの端くれのわたしの心にも
大切な言葉をのこしてくださった大林宣彦監督。
本当に、ありがとうございました。

✏️おわりに

最後まで読んでいただき
ありがとうございます。

また次のnoteでお会いしましょう。

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