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どこにもいかないように、されているみたい。


noteにこういうの載せるん初めてかな。
心に残るワンシーンを。

以前から感覚が狂っていまして、現実についていくので精一杯です。

結果、いつもとはだいぶ違う感じに仕上がりました。

ライトな恋愛系ですかね。よろしければお読みください。

〜〜〜

そうがわハイボール酒場で、旅の話をしていた。
互いが1人海外へ旅した時期が近くて、当時互いのことを少なくとも意識していたようだった。

私はどうして、大人なヨーロッパへ1人で行くことにしたのか、そしてその地で何がわかったのか、理想は果たして見つけられたのか、その辺りをキールを飲みながらいい気持ちで話していた。

キールはどこの国でもキールであり、安定的に美味しいんだ。

メニューが読めなくたってK I Rでキールなんだ、だからどこででもキールを頼んじゃう、とか言って、私は調子に乗りながら、その場でもキールを注文したのだった。

すごく楽しかったのだ。

右隣に座る彼に、理想の場所へ行ったら一体自分はどう感じるのか、そして理想を探す旅を通して出た自分の本当の理想とはなんなのかについて、身振り手振りを使い、表情豊かに、力説していた。

きっと私の魂が宿っていたのだと思う。

自分の自分による自分のための仮説を証明する旅の手応えを、誰かに話した時は。
 

唐揚げが食べたくてハイボール酒場に入ったのに、メニューにはお目当ての王道の唐揚げはなかったため
チキンバッファローにした。
追加で頼んだパイ生地のピザマルゲリータは美味しかった。
 
キールと旅話に程よく現実離れしほろ酔い状態で、店を後にした。
王道の唐揚げを求めて。

おしゃれなお店が立ち並ぶ場所で一回トイレとタバコ休憩。

トイレから戻ってきたら、彼はアイコスを吸っていた。
チラチラと小雨が降り出す中、2人で喫煙所に入った。
アイコスの匂いは切ない。
彼の片膝に座り、彼のアイコスを吸ってみた。
思ったより軽い。思ったより匂いがしない。2回吸った。
もう1回、とはならなかった。
外の寒さがその場を冷静にさせようとしていたし、小雨の音が2人を包み込んでいた。

でもきっと、彼の膝の上で初めてアイコスを吸う時にみた、しんみりとした梅雨っぽい一瞬のあの景色はきっとなかなか忘れないだろうな。

私も彼も、少し酔っていたのかな、そんなに人もいなかったんだけれども。

彼は、片膝に座る私を後ろから抱えるように、腕を回してくれた。

お酒を飲む前は手を繋ぐのいつも私からなんだけれど、お酒を飲んでからは彼の手が私の手のひらをヒョイと捕まえて包み込む。

酔ってる時だけ。私は、捕らえられるらしい。
しかも少し彼寄りに腕をひっぱってくれて、体の距離を近づけてくれる。

まるでどこにも行かないように、されているみたい。

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