きゅうりが届いた。

もう何年も前に
毎週頼んでいた
食材宅配サービスを再開させたのだ。

そのサービスでは
産地直送の新鮮な
野菜を買うことができる。
ここ数年見慣れていたものとは
違った様子に私の心は踊った。

きゅうりは５本入りで
ビニル袋に入っている。
透明な袋は黄色いテープで
閉じられていた。

スーパーで買うきゅうりは
ぴかぴかの緑色で
とても色鮮やかなのに比べて、
今日届いたきゅうりの表面には
白い粉が付着し
全体的にぼんやりとした印象だった。

素人目に見てもわかる。
新鮮で美味しそうなきゅうり。

とげがピンと立っているのが
袋越しでもわかる。
洗う時にきっと手の平が痛いのだろう。

表面に付着したこの白い粉のようなものは
『ブルーム』というらしい。
知らなかった。

なとなく感覚的に
——白いのは美味しいきゅうり
と認識していただけだった。

私はものの名前を覚えるのが
ひどく苦手なため
ブルームという単語を覚えられない。
だから今もネット検索して調べたところだ。

なんでもきゅうり自体が
自然と分泌する蝋物質で、
乾燥を防ぐ役割を担うとか。

そんなことはつゆ知らず
さっと洗って
厚めに均等に切って
夕食で食べると
青くさい野菜の
しっかりとした味がした。

あるべき味と香りと姿の
美味しいものを食べると
とても満たされた気持ちになる。

美味しかった。