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マラソンでよく言われる「人の後ろについて走れ!」は、本当なのか??


(1)「人の後ろについて走れ!」は、本当なのか?

わたしは走ることが苦手です。

大学のときも研究室で駅伝に出るぞと言われたときはあまり乗り気ではなく、出場するのがとても嫌でした。

楽に走るためにはどうすればよいのか。

スマホで検索してみると、いつもヒットするのは、

「人の後ろについて走れ!」

でした。

前で走る人が壁となって、走りやすくなるのだという理論でしたが、私はとても信じることができませんでした。

だって、人ですよ!確かに、もし横幅の大きな人の後ろを走れば、抵抗少なく走ることができるかもしれません。

ただ、マラソンや駅伝に出場するのは、記録更新のために走り込みを続け、ボディを引き締めに引き締めた兵たちです。

そんな細身のボディの後ろについて、走りやすくなるなんて、そう簡単に信じられる訳がありません。

よし、検証してみよう。

そう思って、今回は流体シミュレーションソフトを使って、「人の後ろについて走る」ことの効果を評価していきます。


(2)モデル・条件

今回は、筋骨隆々のランナー二人に来てもらいました。(Free3D:https://free3d.com/ja/3d-models/malerunning

身長は約180cmの設定です。ランナー間は、2m離して配置しています。

ランナーは時速18km(= 秒速5m)で走っているものとします。

ただし、このモデルではランナーは走ることができないので、ランナーに秒速5mの風を当てて、計算することにしています。

ランナー2人

使ったシミュレーションソフトは、OpenFOAM v1912です。
すべり壁なし条件、SIMPLE法、乱流モデルはRAS(komegaSST)で計算。
メッシュ数:97,740、時間刻み:1s(クーラン数 = 1程度)、End Time:500s


(3)さて計算だ

早速計算してみました。家のパソコンを使っているので、そこまで細かくは計算できていませんが、結果を見てみましょう。

先に、早く結果を知りたい方向けに、色々端折って説明します。

説明を端折ると、この図は、赤色のほうが抵抗が大きく、青色のほうが抵抗が小さい、ということを表しています。

これより、後ろのランナーの方が、受ける抵抗が小さいのだ、ということが感覚的にわかっていただけるかと思います。

ランナーが先行者で壁を作る理由

さて、少し説明をします。

この図は、赤色になるほど流速が大きく、青色になるほど流速が小さい、流線図です。ランナーの間が青色になっているのがわかりますね。

右にあるレジェンドと見比べると、前のランナーは4m/s程度、後ろのランナーは2~3m/s程度の流速になっているようです。

ここで抗力の式を元に、前の人と後ろの人で抵抗がどれくらい変わるかを考えてみましょう。

抗力の式は以下の通りです。

抗力

ここで、Dは抗力、CDは抗力係数、ρは流体密度、Uは流速、Sは物体の基準面積です。

抗力係数CDや流体密度ρ、物体の基準面積Sは、今回同じモデル、同じ空間にあるため、一定であるとしましょう。

そうすると抗力Dの大きさは、流速Uの二乗で増減することがわかります。

さきほど、前の人周辺の流速が4m/s、後ろの人周辺の流速が2~3m/sであることを図から読み取りましたね。後ろの人周辺の流速を3m/sとすると、

3/4倍の二乗、つまり、9/16倍 =0.5625 ≒約0.6倍!!

前の人が受ける抵抗よりも、後ろの人が受ける抵抗の方が、0.6倍程度は小さくなる、という計算になります。

人の後ろで走るだけでこんなに抵抗が変わるものなのですね。。。


(4)まとめ

人の後ろについて走ると、前の人に比べて受ける抵抗が約0.6倍になり、走りやすくなる、ということがわかりました。

「人の後ろについて走れ!」は本当だったみたいです。

・・・疑ってすいませんでした。

今回は概算での計算しかしていませんが、メッシュ依存性やタイムステップの検討なども含めてモデルの検証を続けていきたいですね。

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