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日仏デザイン論 ~ 日仏デザインアプローチの違い

フランスのデザイン会社で働き初めて2年が経ちました。
フランスの会社といってもイタリア・北欧・イギリス・アメリカ・ベルギー…とスタッフの国籍は様々ですが、やはりフランス人が過半数を占めています。


渡仏前フランスで仕事をすることを話すと、散々周りから(前任者やヨーロッパ勤務経験者)


「フランスかぁ ・・・(含みのある笑顔)・・・プライベート楽しんでね!!(仕事のことには触れない)」

「洗礼を浴びておいで」


と激励をもらい、色々不安を募らせていました…

フランス人あるある論として一般的に言われる、


・ 労働時間に対する価値観の違い

・ 個人主義国のため、仕事におけるチームワークという概念がない人多数

・ フランス文化への誇り高さ故、英語が通じない、もしくは好まれないシーンが多い 


…といった内容は、たしかに私が体感した限りは頷けるところが多く、フランス人のざっくりした傾向を示していると思います。
(もちろん残業したりチームで働くのが得意なフランス人もいるので一概には言えず、英語も若い世代であれば通じることは多いです。)


一方で、私が仕事をしていく中で自ら気付き、2年経った今でも日々新鮮だなぁと感じ続けているのが「デザイン提案に対する日仏のアプローチの違い」です。

今日はそこを少し掘り下げてみたいと思います。


日本人はチームでの問題解決型

私もそうなのですが、特に企業で働くデザイナーにとっては、

課題があり →
それに対しての市場動向を読み取り戦略を立て →
その解として、デザインを提案していく

上記のようなプロセスが主流だと思います。

1つずつ素材を集めていって、その都度どんな料理がふさわしいか考えながらメニューを決めていくため、提案が固まるまで具体的な料理の内容は割とぼんやりしています。
それゆえ、提案の幅も比較的広いところからスタートすることが多いイメージです。


特に色に関わる仕事をしている私は、

なぜその提案が どうして必要なのか?

と考えることが、いつの間にかクセとして染み込んでいました。
色は形のデザインよりもどうしても個人の好き嫌いでジャッジされやすい傾向にあるため、理屈やストーリーがあることが後々自分の武器にもなるからです。


-  日本の問題解決型デザインの特徴 -
 

・プロセスを重視し、時間をかけて練り上げていく

・それらを基に、デザインを全体ストーリーの中で説明していく能力


これらは、日本人的デザイン手法と言えるでしょう。


対するフランス人は、個人技インスピレーション型

そんな日本企業のやり方にどっぷり浸かっていた私。

フランスデザイナーへの最初の印象は、例えが難しいですが、メニューの説明なしにスタートからいきなりメイン料理を持ってこられた…ような感覚とでも言うのでしょうか。

メニューが無い、と書いたように、アウトプットに対してあまり強い背景ストーリーやロジックが無いことが多いフランスデザイナー。
理由を聞いても、
「好きだから」
「これが感覚的にいいと思った」
「今期コレクションで〇〇なテイストが多かったから、きっとプロダクトでも流行るよ」

などなど、日本人の私にとっては、最初は腑に落ちない回答ばかりでした。

またフランス人デザイナーの傾向として、個人主義という背景もあり製作中のアイデアを他人と共有することをあまりしません。

アイデアソースは個々人でもちろん異なりますが、彼女彼らにとっては何よりも直感的ヒラメキがとても大切。そういった自分の中のインスピレーションをサッと形にするセンスの良さはやはり抜群だと思います。

ビジュアル作りに関しても、説明に使うイメージ写真の1つ1つ、デザインとしてのディティールに繊細なこだわりがあるのに最初は驚かされました。


-  インスピレーション型デザインの特徴 -

・パッとすばやく感性的に作る能力

・論理よりも自分のセンスを信じ、根拠のない自信を持つ


これらは個人差はあれど、一般的なフランス人デザイナーの特徴とも言えると思います。


■ 少し極端な話ですが、例え話を1つ。
フランスの誇るスターデザイナーのフィリップスタルク氏。

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彼がロシアのビリオネアのために設計した世界最大の帆船「A (motor yacht)」が、毎年南仏にリゾートに来ています。

宇宙船のような形、メタルの塊のような質感、帆を張るにはどう考えても巨大すぎるスケール感。

※ちなみに巨大船な左横に小さく見える白い船、あれでも10人以上がゆったり遊覧できるサイズです。
帆を張るだけで相当なスタッフの数が必要らしく、毎年チェックしてますが、帆を張った状態は一度も見たことがありません😂

こんなデザインも、とりあえず感性でイイネ!といってエイッと作れてしまうのが、THEおフランスデザイナーだなぁと思ってしまうのでした。

ではまた次回。


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