見出し画像

幼少期の読書がその後の読書にどのように関係している?

子どもに読書が好きになってほしいと思う人は多いと思います。
今回は、幼少期の読書に関する活動や好きな本があることがその後の読書の好き嫌いなどにどのように関係しているかについて、
国立青少年振興機構が2013年に発表した報告書を使って考えていきたいと思います。
この報告書は、全国の中学2年生と高校2年生(22,202人)を対象に読書に関するアンケートを実施した結果をまとめたものです。

就学前(幼稚園・保育園など)〜中学校までの読書活動

就学前〜中学校までの「本や絵本を読み聞かせをしてもらったことがある」などの読書活動*1と「読書の好き嫌い」「1ヶ月に読む本の冊数」「1日の読書時間」との関係について調べました。
その結果、就学前〜中学校前の読書活動が多いほど、すべての項目で現在の中学生・高校生の数値が高くなることがわかったのです。

読書の好き・嫌いとの関係

中学までの読書活動と読書の好き・嫌いの関係

中学時代までの読書活動が多い中学生・高校生ほど、「読書が好き」な人が多いということがわかりました。
しかも、読書活動が多い人が「読書がとても好き」と答えた人が、少ない人よりも中学生で約2.8倍・高校生で約2.7倍多いことがわかったのです。

1ヶ月に読む本の冊数との関係*2

中学までの読書活動と1ヶ月に読む本の冊数の関係

過去の読書活動が多い中学生・高校生ほど、1ヶ月に本を読む冊数が多いことがわかりました。
読書活動が多いと「読書好き」も増えることから、当然の結果と言えそうですね。

1日の読書時間*2

中学までの読書活動と1日の読書時間の関係

過去の読書活動が多い中学生・高校生ほど、1日の読書時間が長いこともわかりました。
読書活動が多い人と少ない人を比較すると、中学生で約1.5倍・高校生で約1.3倍の差があることがわかりました。
これも、読書活動が多いほど、1ヶ月に読む本の冊数が多いので当然と言える結果でしょう。

*1 読書活動は以下の7項目で、「何度もある」「少しある」「ほとんどない」の3段階で決めてもらい、「高得点群」「中得点群」「低得点群」に分けました。
「家族から昔話を聞いたこと」「本や絵本を読み聞かせしてもらったこと」「絵本を読んだこと」「本を読んだこと」「マンガを読んだこと」
「地域の図書館で本を借りたこと」「地域の図書館で調べ物したこと」

*2報告書に割合を実数値に戻して計算した数値です。
範囲のある選択肢の場合はその中央値をとって計算しています。
例)1〜2時間未満が10.5%→1.5h×10.5

好きな本・忘れられない本との出会い

ここからは、「好きな本」「忘れられない本」の有無が、「読書の好き嫌い」「1ヶ月に読む本の冊数」「1日の読書時間」との関係についてまとめていきます。
なんと、そのような本との出会いが、子どもの将来の読書活動に大きく関係していそうなことがわかったのです。

読書の好き・嫌いとの関係

好きな本・忘れられない本の有無と読書の好き・嫌いの関係

「好きな本」「忘れられない本」がある人の方が、「読書好き」が圧倒的に多いことがわかりました。
「好きな本」などがある人の方が、ない人に比べて中学生は約8.6倍、高校生は約6.3倍も「読書好き」が多いことがわかったのです。
さらに、読書がとても好きな人の数は、中学生では約27.8倍、高校生では約16.4倍もの違いがありました。

これだけでも「好きな本」や「忘れられない本」に中学生までに出会っているかどうかが、その後の読書に大きく関係していそうなことがわかります。

1ヶ月に読む本の冊数*3

好きな本・忘れられない本の有無と1ヶ月に読む本の冊数の関係

同じように、「好きな本」「忘れられない本」がある人の方が、1ヶ月に読む本の数が多いことがわかりました。

1日の読書時間*3

好きな本・忘れられない本の有無と1日の読書時間の関係

また、「好きな本」「忘れられない本」がある人の読書時間が、中学生では約2.1倍、高校生は約1.9倍も長いことがわかりました。

これは読書活動が多い人と少ない人との比較での約1.5倍・約1.3倍よりも差が大きくなっています。

*3報告書に割合を実数値に戻して計算した数値です。範囲のある選択肢の場合はその中央値をとって計算しています。例)1〜2時間未満が10.5%→1.5h×10.5

調査の結果から出てくる疑問

上記の調査結果から新しく出てくる疑問として

  • 読書が多いことでどのようなメリットがあるのか?

  • どのような読書活動が、その後の読書活動に大きく関係しているのか?

  • 好きな本・忘れられない本に子どもが出会うために何をすればいいのか?

  • 読書の時間が長いことは本当に良いことなのか?

などがあると思います。
次回以降の記事では、これらの疑問を明らかにしていきたいと思っています。

まとめ

幼少期の読書活動や「好きな本」との出会いが「読書の好き嫌い」「1ヶ月に読む本の冊数」「1日の読書時間」にプラスの影響がありそうなことがわかりました。
さらに、「好きな本」「忘れられない」本との出会いが、より大きく影響しているのではないか、と言うことも明らかになりました。

子どもに読書好きになってもらいたいと思っている人は、子どもが「好きな本」に出会うことを目的として、子どもにアプローチしていく必要があるのかもしれません。

しかし、読み聞かせなどで出会う本1冊だけで、その本が好きになるとは限りません。
「好きな本」に出会うためには、より多くの本に子どもが出会う必要もあると考えることができます。
質を求める前に量も必要と言うことです。月に100冊本を読むことなどを目的とするのではなく、「好きな本」を見つけてもらうと言うことを目的としながら、たくさんの本と子どもを出会わせてあげる環境を作ることがとても重要でありそうです。

では、次回の記事でもお会いできることを楽しみにしています。
読んでいただきありがとうございました。

引用文献

独立行政法人国立青少年振興機構(2013). 『「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」【青少年調査ワーキンググループ】報告書』, pp.16-19.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?