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女子1500mが面白い

昨年の東京オリンピックで、田中希実選手(当時・豊田織機TC、現・豊田自動織機)が、日本人初の『出場』・『3分台』・『8位入賞』の大活躍で一躍注目を集めた陸上競技の『女子1500m』。

田中選手の活躍もあってか、全国各地の大会で、同種目においてハイレベルな記録を様々な選手がマークしています。

田中選手と共に同種目オリンピック日本人初出場を果たした卜部蘭選手(積水化学)も、昨年以上の記録を狙えそうな気配がしますし、高校時代から田中選手と共に練習を続けている後藤夢選手(豊田自動織機)も今季に入り既に自己記録を更新しており、過去に日本人3人しか達成していない『4分10秒切り』に手が届くところに来ています。

この『1500m』という競技は、どちらかというと『中距離』の部類に入り、『800m』の得意な選手が力を発揮しやすい競技という印象がこれまで強かったように思います。

けれども、『400m』から『10000m』までマルチにチャレンジする田中選手のオリンピックでの衝撃的な走りは、『駅伝』中心の日本において新たな時代を切り開いた瞬間でもあったのかもしれません。

田中選手は、オリンピックの走りがあまりにも良すぎたことにより、今はもがき苦しんでいる状態かもしれませんが、他の選手にとっては、この種目へ取り組むモチベーションアップにつながったことは間違いないでしょう。

その効果は、高校生にも確実に波及しているようです。

現在、各都府県で『全国高校総体』の予選会が開催されています。

陸上競技で『全国高校総体』に出場するには、各都府県での予選会で6位(一部種目は4位)までに入り、その数週間後の各地区大会で6位(一部種目は4位)までに入らないとなりません。

実力者はいかに余裕を持って『全国高校総体』まで駒を進められるかが試されますし、そういった選手を追いかける選手たちは、自己記録更新等にチャレンジしつつも順位を気にしながら大会に臨まなければなりません。

そんな中、静岡県大会では、2年生の沢田結弥選手(浜松市立)が4分16秒20の高校2年生日本歴代6位の記録をマークして優勝しており、留学生選手と競い合うであろう『全国高校総体』では、更なる記録更新が期待されます。

ちなみに、田中希実選手の高校2年生の時のベストタイムは、4分15秒43で高2日本歴代3位で、同歴代1位は陸上中長距離界のレジェンドの小林祐梨子選手(当時・須磨学園)の4分12秒85となっています。

盛り上がりを見せる『女子1500m』ですが、高校生の中で私が最も注目している選手は、鹿児島県大会で同校で上位独占のメンバーを果たした田島愛梨選手(神村学園3年)。

今シーズンは、4月9日の『金栗記念選抜中・長距離』でシーズンインし、2つの組のタイムレースで行われ、資格記録の遅い選手が出場する1組目ではありましたが、社会人や大学生といった年上の選手相手に積極的についていき、自己記録(4分24秒72)を7秒近く大幅に更新する4分17秒87で3着フィニッシュ。
総合でも5位と格上の選手を相手に互角に渡り合えたことは、良い経験になったと思います。

この結果を受け、世界大会の一つである『セイコーゴールデングランプリ』への出場が決定しました。

同大会には、同校の先輩の中須瑠菜選手(現・九電工)が、2年前に海外選手が出場できなかったこともあり、高校生枠で出場したことがありましたが、今回はオリンピックに出場した選手が複数出場するレベルの高い大会でした。

5月8日に開催された同大会では、流石にオリンピックレベルの高速レースについていくことはできなかったものの、終始自分のレースに徹し、4月に出した自己記録を僅かながら上回る4分17秒57をマークして9位でフィニッシュしています。
ラストの切れこそ後れを取りましたが、格上の選手を相手に、慌てずに淡々とレースを進める姿は正直驚きを覚えました。

2レース連続で、自己記録を更新し、更なる自信を深めて挑んだ鹿児島県大会は、5月27日に予選、5月28日に決勝のスケジュール。

予選は、4分41秒76と余裕を持って、3組目を1着フィニッシュで決勝へ。

決勝は、コンディションにも恵まれたこともあり、昨年、1年生ながら3000mの国際日本高校最高記録をマークし、今季1500mでも4分8秒82をマークしている後輩のカリバ・カロライン選手(4分12秒92)次ぐ2位でしたが、4分15秒86の鹿児島県日本人高校新記録(日本人高校歴代6位)をマークし、実質公式レース3戦続けての自己記録更新となりました。

田島選手の特徴は、コンパクトな腕振りのピッチ走法で、イーブンペースを刻める走りです。
本来、もっと長い距離で結果の出る走り方と言って良いと思いますので、今後の活躍も期待できそうです。

鹿児島県予選は、3位の沖田萌々選手も4分24秒95の自己新記録をマークし、神村学園勢が上位独占となりましたが、昨年の南九州地区予選で4分23秒87の好タイムで2位に入っている小園怜華選手(鹿児島女子3年)も、ギリギリの6位(4分28秒42)ながら次のステップに進んでおり、今年の南九州地区予選はハイレベルな6位入賞争いを観ることが出来るかもしれませんね。

とにかく、これからの『女子1500m』で、日本人選手が活躍する場面を観られる機会が増えそうな予感です。