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まさか、ね。

 楽しさに浮かれスキップを踏むように進んだ円安に、突如激震が走った。1日に3円値を下げた円が、一気に5円高くなった。
 時はゴールデンウィークに突入した直後。「まさかね」の疑問が激震を追う。パパラッチが妃を追跡したみたいにして。
 
 まさかね。
 
「いやあ、姪っ子がハワイに旅行に出たものだから、気を利かせてささやかなプレゼントをだね……」
 
 なんてことではないでしょね?
 
「マスコミにはノーコメントで」
 
 介入は秘密。その秘密で蓋をした内側に、庶民に知らてならぬもっと重要な秘密がある。口が裂けても言えない秘密は、混同した「私」の事情。「公」の威厳を振りかざし、やってしまった姪を思う叔父心。
 なんてことではないとは思うけど。
 
 大人って平気で嘘つくじゃん。嘘がバレたって、嘘を貫き通せばいずれ噂も七十五日、ほとぼり冷めれば元どおり、嘘に気づいた目撃者だって、七十五日を過ぎれば熱弁振るった熱き情熱も冷めちまう。
 
 社会にあふれるオフレコ話。昨今、露呈が相次ぐもので、つい勘繰ってしまう癖がついちゃった。
 
 杞憂に終わればいいのだけれど、と我思う。そして安穏ないつもの暮らしに戻っていく。平穏がいちばん。
 
 だがしかし。
 杞憂に終われ、と念じる黒い影が街角の塀からのぞいてる。
 気づいていないとでも思っているのかい、おまいさん。恣意の円高は疑惑の起爆剤。暴露の爆発は連鎖の途中にあることに、こちとら気づいているのだよ。

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