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つきあい続けられる人は自己完結できる人だったんだなあ。

 話を乱暴に振ってくる人っている。「残務、処理しといてね」と言われても、残務という2文字ではとうてい済まない難題だったり。支払いを立て替えた割り勘で、五円玉を持っているのにわざわざ一円玉5枚をきっちり数えて渡してきた出した御仁もいた。アタイなら相手を気遣い、少しでも負担のないよう迷わず五円玉を出すのにな。
 税金の納付書、立て替えておいてと頼まれたから好意で引き受けてあげたのに、金額は毎月決まっているからその額わかっているはずなのに、「1万円だから釣りをちょうだい」と言われてなんだか腑に落ちない。立て替えで手間を取られたこちらが、なんでお金を返されるのにもう一度手間をかけなきゃなんないの? 好意を苦労で返すなんざ、人の風上にも置けやしない。
 いや、もしかしたら、アタイの顔に、面倒なことドンと来い! と書いてあったのかもしれないな。何事にも寛容で、宇宙にあいた黒い穴みたいにすべての面倒ごとを飲み込むタチだと勘違いされているのかもしれない。アタイ、あまりに多くの人たちに物事を乱暴に頼まれる。本音はシュガーが歌った「からかわないでよ、ウエディング・ベル」じゃないけれど、「巻き込まないでよ、アーメン」なのに。

 ある時、あなたは兄弟姉妹のどこの人? と訊いてみた。 「末妹」と言われた。
 君は? と尋ねたこともあった。 「末弟」とのこと。

 なあるほど。
 数少ない統計が、乱暴な依頼者は末っ子だったことを炙り出した。面倒なことは小さい頃からことごとく兄ちゃん、姉ちゃんに押し付けてきたせいなのね。本人にその気がなくても、甘やかされてきたことが今の大人の君や貴女をつくってる。
 すべてがすべて、このセオリーに則っているとは限らないけれど。だって他人を嵐の渦中に巻き込まず、自己完結できる末っ子もいるからね。逆に、支えられていないと立ってもいられない甘えの兄ちゃん、姉ちゃんもいる。
 ただ、これまで集めた両手に収まるほどのサンプルを観察するに、兄弟姉妹は上から順に甘みが滲み、味濃くなっていたんだよ。

 自己完結できずに甘えの構造を発動する人と、迷惑にもそれを押しつけられる人の価値観はあまりにかけ離れていて、優秀なマニュアルが存在していても二者をすり合わせることはできない。
 寛容に受け入れることを生き甲斐にしている人なら話は別よ。「自己完結できない人を守ってあげたくなっちゃうの」というタイプ、たまに見かけることがあるでしょ? そうした寛容のプロが面倒を見てくれれば、大事に至ることはない。

 だけど人生、都合よく適材適所に人材が収まってくれることなんて滅多にあることじゃない。出会いは乱暴で、喉に刺さった魚の骨みたいに不快な思いをする出会いってものがある。自己完結できない人物に乱暴に物事頼まれたら、潔く運命だと思って諦めるか、その場から煙のように消え失せるか。アナタが乱暴な依頼者に少しでも嫌悪を感じているのなら、それはもはや黄色信号が点っていると考えざるをえない状況に追い込まれている。最初は苦笑いでも笑って済ませられようが、二度三度と繰り返されてくうちに顔から血の気が引いていき、頬ひきつり顔面に広がり痙攣し、しまいに額に怒りの青筋立ってくる。
 我慢の限度が間近に迫ってきたら早めの鎮火を。火種は小さいうちにもみ消してしまわないといけないものだから。

 どうして自己完結できない人は、面倒ごとをさも好意のように人に振る舞ってしまうのだろう? なぜ甘えることが人に余計な負担を与えていることに気づかないんだろう? 迷惑な押し付けは彼らの存在を認めるどころか否定したくなってくることに考えをおよばさないんだろう? このタイプの人たちは、まるで完結できずにいることに人生を賭しているみたいに見える。 
 こうした人たちは、人一倍自分は自立していると思い込んでいる。だけど中身は真逆だから、本当に自立した人から指摘を受けると混乱する。指摘されても理解はできないから、身勝手に理不尽だと反発し、顔を赤くして反論してくる。いつからかは定かでないが、相場はそう決まっていて、過去の誰かがそのように断言していたんだね。
 かつて友と激論を交わしたテーマに「神はいるのか?」があった。神様を信じている人には神はいるけど、信じていない人に神は「ある」だけの存在だ。二者がどれだけ激論を交わそうとも、平行線の距離が縮まることはない。
 自己完結できない甘えん坊に「神様はいない」と言い聞かせても努力は徒労に終わる。

 我慢は体に毒。甘えの押し付けを食らってバカを見て、イライラ募って関係のない人を不機嫌の嵐に巻き込んでは悲しすぎる。だから自己完結できない人とは線を引く。
 この線の内側に入ってこないでね、と距離を置く。

 めんどくさいのは嫌い。めんどくささに巻き込まれるのも嫌い。めんどくさくする人、こっちの指に向かって歩み寄ってくるべからず。どこかよその人の指にとまりにいってちょうだいな。

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