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「TATTOO」「日常」を聴いて思う、アップデートされ続けるヒゲダンの音楽

Official髭男dismは、もう大きくなるところまで成りきってて、J-POPの世界で上り詰めあげている。
そう言われ始めて数年が経つが、そのベストスコアをちょくちょく更新してくるのが信じられない…
と思っている5000人くらいの中の一人です。

最近のヒゲダン曲で特によく聴いているのが、「TATTOO」と「日常」。
「TATTOO」は、AORやR&Bに振ったサウンドが印象的で、トラック重視派としては非常に耳が嬉しかったし、藤原さんのヴォーカルワークにも、楽器の一部に寄せたような絶妙なミックスが施されているように感じる。ここ数年の”ヒゲダン節”(「Cry Baby」や「ミックスナッツ」など)とは違う儚さが介在していて、良かったです。
メロディラインは、リズムも声の抜き差しもいつも以上に難しく、とてもじゃないけど一聴して歌えるような曲じゃない…のにキャッチーで耳に残るっていう不思議なバランスを保ってます。

とにかくこれは歌詞がどうこうというよりは、ドライブしながら良い音聴きたい、街中を良い気分で歩きたい、みたいな時によく選曲しました。

次に新曲の「日常」。これはまずイントロがすごいですよね。
ティーザーで藤原さんがこのギターの弾き方に「綺麗な弾き方じゃなくて」っていうようなディレクションをしているのも、うなづけるというか。
曲の方向性が冒頭のギターソロで痛いくらい伝わってきます。人々の色々な感情が”ないまぜ”になった「日常」の幕開けをイメージしたかったのでは?と個人的には想像します。


ちなみに、火サスさながらの断崖絶壁をイメージしたのは私だけかもしれませんが。ちょっと懐かしい歌謡曲のニュアンスも感じますね。

そのあとリズム楽器が入ってくると、非常におしゃれなコードワークとアレンジで、火サスどころか、バンドのミツメのような世界観に変貌しますが、その上にこのギターの旋律が乗ることで巨大な矛盾のような情報が脳に流れ込んでくるっていう。これをこのスケール感でやれるバンドって、やはりすごい。

そういえばヒゲダンと言えば転調ですが…
この「日常」では落ちサビでの半音上げのみというシンプルな作り。おそらく淡々と進んでいく日常を表現する中で、最後に少しだけ光を差し込ませるという意図なんじゃないかと推察します。

また「TATTOO」の方は転調どうこうというよりも、リズムの変調についていくのが非常に難しいというか。まずAメロ→Bメロで譜割りが細かくなりサビ前は歌と楽器がセッションするかのように畳みかけ…
さらに聞き逃せないのが、落ちサビで、ベース主導でマイナーコードに移行するところですね。
この辺りのアレンジのテクニックで、聴き終わった後の満足感が全然違ったのは事実です。

そうそう、今回どうしても書きたかったのは、
こういう、変拍子や転調で聴き手をハッとさせるバンド、というと、私はまあまあ歳なので度々FoZZtoneを思い出してしまいます。

これを聴いた今の若い人たちがどう思うのか興味がありますが…
FoZZtoneは3ピースで、比較的音数が少ないことと、サウンドに厚みはあまりないので、ヒゲダンの音楽とは聴感は全く違ってくると思いますが、曲やアレンジのアイデアには今でも特筆すべきものがあると思っています。

当時は、the band apartの絶対的人気などもあって、演奏、アレンジともにテクニックがあって他にないリフやメロディを奏でるバンドって比較的多かった印象があります。他とは違う曲を出してなんぼみたいなところもあったと思う。そのあと、いわゆる”バンドブーム”が到来してみんなロキノン(ロックフェス)行って…ってなった頃は逆に拡大再生産モードに入っちゃってたという記憶ですが…

そして今は、バンドってやや斜陽なフォーメーションとも見られるわけですが、だからこそ、シーンにおいてヒゲダンのような存在って貴重なんだと、改めて思うわけです。過去にあったバンドシーンが生み出したさまざまや、J-POPとしてのメロディのあり方のさまざまを全て自分たちなりにアップデートして。そして自分たちの音楽そのものもアップデートし続けている。

今後もヒゲダンのアップデートが楽しみな日本国民のひとりによる文章でした。読んでくれてありがとうございます。



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