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元講師が打ち明ける「歌手やシンガーソングライターを夢見る君へ」:個性について

あまり努力しなくても受け入れてもらえる「個性の尊重」の落とし穴

個性がないという悩みは最近減っているように思う。

また会社や学校教育などでも、一人ひとりの個性を尊重、というようなことを言うこともあると思う。

最近は、何もアピールしなくても、少々変わっていても、「個性」として受け入れてもらえる可能性がある社会なのかなとも思う。

まあ建前としては、

「相手に敬意をもって、その人をよくよく知るよう努力して、自分とは違う個性があることを理解したうえで受け入れる」

という感じのことなんだろうけど、実際は、

「薄味でよくわかんないけど、モラルとして周囲が否定していないだけの個性の受け入れ」

になっているだけなんじゃない?とか思ったりして。


加えて、モラルにはとても厳しい世の中になった。

薄味の個性、つまり相手のことはよくわからないけど、お互い深く入り込まずにとりあえず浅く受け入れる。

そしてモラルに反することをしてしまうと、受け入れたはずの個性も含めて拒絶、なんなら迫害される目に見えない怖さがある世の中だなあと思う時もある。

悪いことをした人を叩く時はずんずん進んでしまう人もいる。


自分の個性を伸ばさなくても浅ーく受け入れてもらえちゃう。

何か下手をすると周囲や社会から攻撃される。

そんな世の中に合わせるだけの毎日だったら、その人の個性が大きく育つということもないだろう。

目につくことさえしなければ、なんとなく受け入れられるから、まあ安心はできる。
檻の中って安全なんだよね・・・檻の中だけど。

でも・・・どこかつまらない・・・あ、気づいちゃいましたか?


君はどう思う?

今って個性的な人がたくさんいる世の中だと思う?

むしろ逆じゃない?
個性的なのは大変な感じしない?

まあ脱線しちゃっているので話を戻すとして。

プロとしての歌手やシンガーソングライターを目指す君にとって強い個性を持つことは必要不可欠だ。

それはモラルとしてとりあえず否定されない個性ではなく、
他の誰でもない、君だけの魅力となる個性のことである。

この記事では、歌手やシンガーソングライターを目指す君に特化した形での「個性」について取り上げる。

どこかつまらない世の中・・・それを君の個性でブチ壊してほしいのだ。


「個性がない人間はいない」は事実

もし君が「個性がない」と悩んでいるのなら、個性がない人間は存在しないので、そこで悩む必要はない。

これは慰めではなく事実だ。

君も読みながら考えてみてほしい。

個性とは

そもそも個性とは何なのかといえば、自分は他の人とは違うということだろうし、さらにそれを他人から認識されていることなのだと思う。

でもそれなら、すでにお互いが、自分と他人とで認識の区別はできているわけで、考えるまでもなく、個性がない人間はいないということになる。

自分と自分以外の人間の区別がつくから、普通に生きていけるのだ。

誰にお金を貸したのか

自分の親が誰なのか

自分の恋人が誰なのか

社長は誰で、部下は誰なのか

友達のA君、B君が誰で、友達ではないC君やD君は誰なのか

見かけた人が見たことある人なのか見たことない人なのか

目の前にいる人がお姉さんなのかおじさんなのか

そんなふうに自分や他人、しかも他人1人ずつについて個性を区別できるから、人間の全ての社会活動は成り立つわけだ。

個性、そして互いにその個性を区別できることは、ほとんどの動物に備わっている本能的な機能だと思う。

この事実は空気のように、生きる上で不可欠なのに存在しないものかのように、忘れられている。

だから、自分には個性がないと思う人がいるのだと思う。

個性とは、何も特別なことではなく誰にでもあるものなのだ。



歌手やシンガーソングライターを目指すうえで、本人が「自分には個性がない」と思う状態とは、「武器になるような個性を見つけられていない」または「個性を際立たせていない」状態ということになるのだ。

じゃあ、どうやって「個性を見つけていく」「個性を際立たせていく」のか。


何をどうやっても「自分流」にしかならない

自分の好きな歌手をたくさん歌って、その歌手に歌い方がよく似ているということがある。

そういう人は一般的に個性がないというように思われることもある。
君自身の歌い方をしなよ、的な指摘をする人もいるかもしれない。

でもちょっと考えてみてほしい。

君が好きな歌手に似ている歌い方で歌っているその時、聴いている人は、いかに音楽に詳しくない素人でも、「似てる」とは思っても「同じ」とは思わない。

これが重要なのだ。この時点で聴いている人は「君が好きな歌手」と「歌っている君本人」を無意識に、本能として区別しているのだ。つまり、有名な歌手とは違う個性として認識されているのだ。

ちなみに、「似ている」から「同じ」への一線を越えるのはかなり難しい。

「似ている」でも、「同じ」というレベルまでかなり近く再現できる人なら、もうそれはモノマネ芸人としてお金がもらえるくらいの「芸」になる。

これは、君がどれだけ好きな歌手を真似たとしても、結局、何をどうやっても自分流にしかならないという真理を証明している。

これは、君が「個性を見つけていく」「個性を際立たせていく」ことへのヒントになる。



どうすればわかりやすく「個性的」になるのか

ここまでで、どんな人にも個性はあり、何をしても自分流にしかならないのもわかってもらえたと思う。

では、一般の人にわかりやすく「個性的」と思われるにはどうするのかというと、以下の方法などが考えられる。

自分が思う自分、他人から見える自分をよく調べる。

とにかくいろいろなものを取り入れる。

個性的な行動をする。

君の不満に思うことを裏返す

一つずつ解説していこう。

自分が思う自分、他人から見える自分を調べる

まずは、自分が思う「自分ってこういう人」「自分は〇〇が好き・嫌い」みたいなものをリストアップする。

そして、複数の知り合い、親・友達・先生でもいいと思うが、他人が自分のことをどう思うか、何が似合いそうか、何が好きそうで何が嫌いそうかなどを聞いてリストアップする。

歌手やシンガーソングライターを念頭に置くという意味では、君の声についても、さまざまな角度から印象を聞いてリストアップするようにしよう。

〇〇に似てる、と言われた場合は、そのままでは後で活かせないので、追加質問で掘り下げよう。
「なぜ〇〇に似てると思うのか」「どんな所が似ていると思うのか」


テレビである芸人さんが、「お客からキモいと言われて、自分がキモいことに気がついた。自分ではキモいなんて思っていなかった。」と言っていたのを見た。

これはもちろん本人が気持ち悪い人なのではなく、笑いの芸として、自分に合う武器を見つけたということになるが、個性を際立たせるためにアンテナをはっている努力という部分で君の参考になると思う。

他人の評価に合わせてブレるということではない。
自分の個性を見つけて育てていくのはあくまで自分だ。

だからこそ、「自分が思う自分もリストアップ」するのだ。
加えて、「他人から見える自分」もヒントにしながら、個性を見つけ、際立たせていこう。

とにかくいろいろなものを取り入れる

服でも歌でも言葉でも考え方でも、世界中のいろいろなものを自分に取り入れて、マネしてみるということになる。

誰の何を取り入れたって自分流にしかならないから、安心してとにかくいろいろやってみよう。

好きな歌手1人の歌ばかり歌うからその歌手っぽくなってしまうのだ。
いろんな人の歌い方を真似すれば、いい具合に混ざり合ってくる。

ちなみに、別の歌手の歌を、その歌手の歌い方を真似て歌うことを「コピー」という。これは、その歌い手のテクニックなどを習得する目的の練習で、歌手やシンガーソングライターを目指す人には必須の練習だ。

目指すのは、目をつぶって聴いたら本人と間違えるくらい似せる「完全コピー(完コピ)」だ。
コピーについてはまた、別の記事で取り上げたい。

歌の世界も広い。民族音楽民謡だって歌だし、その独特な節回しを取り入れることもできるだろう。ラップに近い、何かの掛け声祈りの言葉呪文、そういうものを探してもいいと思う。

また、JAZZトランペットのソロっぽい音を声で再現するとかもありうる。
ボイスパーカッションはその部類に入ると思う。
まだあまり真似されていない楽器はないだろうか。


また、歌や音楽以外のジャンルのものを取り入れてみるというも非常に有効だ。

例えば、単に「音」で言えば、すでに使い古されている例で言えばマクドナルドのポテトの揚がる音とか、ファミリーマートの入店音、乗り物の音などはわりと歌に取り入れられていると思う。

音でなくても、歌の中に自分の好きなものを取り入れている例もある。歌詞は言葉なので、音楽以外のジャンルも入れやすい。

料理とか、歴史とか・・・もうすでにいるでしょ。そんな感じ。

髪型やメイク、ファッションなど、外見にいろいろなものを取り入れるのもいいだろう。

何かの被り物をかぶるとか、統一感のある凝ったメイクとかはバンドで結構多い印象がある。
外国人ぽいメイクや衣装とかもある。

まあ、そうやってたくさんのものを取り入れていくうちに誰にも似なくなってくるのだ。

そうやってあなたが、元から持っている個性を自分で見つけたり、個性を際立たせたりしていくうちに、だんだんと「誰から見てもわかりやすく個性的」と思われるようになってくる。

個性的な行動をする

個性的な行動をするというのは、実際に普通の人はしないようなことをするということだ。

芸人さんをよく見ていると、面白い人というより、面白い体験をした人というタイプの人がちらほらといることに気づく。
そしてその体験談が面白かったりする。

珍しい行動をした人は個性的と思われることがあるのだ。

これを個性として歌に活かせないだろうかということだ。

かっこいい感じになりたいなら、普通レベルよりもハイレベルなかっこいい行動をしてみる。

その経験が何かのひらめきを自分に与えることもあるだろうし、歌詞の言葉として表れることもあるだろう。

珍しい仕事をしていたとか、珍しい場所に暮らす、旅行に行くというのもいいと思う。

例えば、アメリカ大陸とか、南米とか、何年か放浪の旅をしたというフレコミでデビューするアーティストもいるだろう。誰とは言わないけど。

歌と行動がセットになっている例は意外に多い。

わかりやすい例で言えば、アフリカの飢餓を救うためのチャリティーとして制作されたWe Are The Worldとか、ビートルズがビルの屋上でライブをしたGet Backなどになると思う。

人々の記憶には歌と行動がセットでインプットされている。こういうのはYoutubeとかでも探しやすいので自分でも探してみよう。

まあ、このへんについては「来歴」という部類にもなってくるかと思う。
「来歴」についてもいつか別の記事に取り上げようと思っている。


君が不満に思うことを裏返す

「自分の個性ってなんだろう」と考えてもあまり浮かばない場合、「自分が不満に思うこと」をリストアップするのも一つの手だ。

曲を聴いていて、「もっとこうなればいいのに」とか思ったことはないだろうか。
それが君ならではの「やりたいこと」=「個性」なのだ。

ここの歌詞がもっとこうだったら・・・。

自分ならこう歌うのに・・・

そういう歌を作ればいいのだ。


派手でわかりやすいばかりが個性でもない。

もしも君が、パッと見が地味というか、どこにでもいそうな感じであっても、その他の部分で個性を際立たせればいい。

スパイシーなものばかり食べていたら、お出汁のやさしい味が欲しくなる。例えるとそんな感じだ。

高級でもB級でもいいし、貴族的でも庶民的でもいいのだ。

とにかくいろんなモノサシで、個性を際立たせることができる。


性格は関係なし

個性とはちょっと違う話だが、思い出したので。

プロになることについて、向いている性格とかははっきり言って特定できない。

短気な人、おっとりしている人、おしゃべりな人、無口な人、元気いっぱいな人、静かな人、いたずら好きな人、お人好しな人・・・。
いろいろな性格の人がいる。

君も今までの学校のクラスやバイト先などで、いろいろな性格な人と出会ったことだろう。

実は、この「いろいろな性格の人がいる」というのは、どんなステージの、どんな組織やグループでも、ある程度の人数がいればあてはまるようだ。

私も数十年、様々な音楽関係の職場で働いてきたが、プロの歌手やシンガーソングライターにしろ、クリエイターにしろ、スタッフにしろ、講師にしろ、本当にいろいろな性格の人がいた。

音楽の仕事以外の職場にも多数顔を出したが、やっぱり怒りっぽい人もいるし、おっとりした人、気が弱い人など、いろいろな性格がいるのだ。

だから、実感として、プロとして向いている性格というのはないな、と思うようになった。

君がどのような性格だろうと関係ない。
心配はいらない。
君は、君が何をすべきかを考え、行動していけばいい。



個性を見つけ、際立たせることがなぜ大切なのか。

個性がなぜ大切なのかというと、個性にギャラが支払われるからだ。

プロの世界で言えば、例えばゴスペルシンガーの歌声が欲しいならお金を出してアメリカから本場の人を呼べばいいのだ。
というか、日本にもたくさんいるのだ。比較的簡単に用意できる。
そんな需要に君の入り込むスペースはない。

コーラスのお姉さんでもギタリストでも、上には上がいるのであなたより上手な人をお金で呼ぶことはいくらでもできる。

プロデューサーがお金を使っても用意できない、あなたにしかない魅力(個性)を作っていくことが必要なのだ。

楽器ができない、とかは小さい悩みなのだ。
そんなのさっさと猛練習するなり、見切りをつけるなりすればいい。
大切なのは、君が見つけるべきなのは、お金で代替できることじゃない。


また、強い個性を持つことで、リスナーからは嫌われやすく、または好まれやすくなる。

それはプロとして仕事を続けるためには必須のことだ。

これは次回の記事で取り上げる。


とにかく、いろいろなことについて試行回数を増やすほど、
個性は極まってくる。

ということは、日数がかかるということでもある。

今のうちから、いろいろ試して、自分の中身を豊かにしていこうね。

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