見出し画像

【大月書店通信】第169号(2023/2/28)

「大月書店通信」メール配信の登録はこちらから

岸田内閣は「子ども・子育て予算倍増」「異次元の対策」を打ち出し、子どもを産み育てる環境を整えて、少子化に歯止めをかけようとしています。しかし、その本気度はまったく、と言っていいほど感じられません。

そもそも、これまでの自民党政権は、子育ては家族の責任というスタンスで、子ども・家族支援、教育費の公的保障などは、先進国ではきわめて貧弱なままです。そのためもあってか、社会全体で子どもの育ちを支えていこうとする意識は、日本ではとても弱いと感じます。

今月の新刊『ユースワークとしての若者支援』では、子ども・若者の育ちを支えるユースワークを、その先進地であるヨーロッパ、とりわけイギリスとフィンランドの経験に学び、日本でも実践に取り組むさまざまな「ストーリー」を紹介しています。

貧困や複雑な家庭の子ども・若者だけでなく、何かと生きづらさや悩みを抱えるこの時期に、「安心して過ごし、やってみたいことに取り組め、多様な人と交われる“”場”、が必要だ」と掲げる本書。日本の未来に向けて求められているのは、そんな“場”を大人が、社会がつくっていくこと、その本気度だと思います。

【新刊案内】

2月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。

……………………………………………………………………………………………
●支援現場のストーリーを語り、描き、伝える
ユースワークとしての若者支援――場をつくる・場を描く
平塚眞樹[編] 若者支援とユースワーク研究会[著] 1,980円(税込)

若者たちに必要なのは、安心して過ごし、やってみたいことに取り組め、多様な人と交われる「場」だ。ユースワークの公的制度が発達している欧州から学び、「スキル獲得」とは異なる、若者支援実践が共有すべき価値を提示する。

……………………………………………………………………………………………
●防災やSDGsも踏まえた新しい地理の授業づくり
明日の授業に使える中学校社会科[地理]第2版
歴史教育者協議会[編] 3,300円(税込)

全国のベテラン教師の実践・アイデアを結集したロングセラー授業書の改訂版。最新の社会・国際情勢や防災・SDGsなど、これからの地理の授業に必要な観点を網羅。「デジタル資料集」で豊富な資料をダウンロードできます。

……………………………………………………………………………………………
●目が見えない・見えにくい子どもの生活は?
障害があってもいっしょだよ! 6 視覚障害のあるわたしの毎日
マリ・シュー[文] イザベル・ムニョス[絵] 上田勢子[訳]
池谷尚剛[日本語版監修] 2,200円(税込)

主人公は弱視の少女ケイデンス。目が見えにくいことで生じる生活や学習の上での不便、それを克服する工夫や周囲のサポート、日々の楽しみなどを具体的に描きます。当事者への取材にもとづいて描かれた障害理解の絵本。

…………………………………………………………………………………………
●特集=大人になった子どもたちは――3.11から12年
月刊 クレスコ3月号 no.264 550円(税込)

震災から12年、当時小学生以上だった子どもたちは成人している。この間、どのような状況に置かれ、何に向き合ってきたのか。見守る保護者や教職員、地域の人々の思いは――。災禍の下での子どもたちの成長に必要な視点を探る。

…………………………………………………………………………………………
●特集=使える国際人権
放送レポート』3月号 no. 301 550円(税込)

●メディアを志す人のために50人が薦める50冊(下)●使える国際人権~メディアが知るべきこと~(藤田早苗)●なぜ今「男性学」なのか(関口洋平)●ハラスメントのない映画制作環境を ほか

【話題の本】

★ 『沖縄 戦火の放送局』琉球新報に書評 ★

昨年12月に刊行した『沖縄 戦火の放送局――軍隊に飲み込まれたラジオ』(渡辺考 著)。2月26日付『琉球新報』に書評が掲載されました。評者はジャーナリストの金平茂紀さんです。

「読みながら僕は考えた。これは過去のことか? そうではあるまい。」

戦時下の沖縄放送局長・岩﨑命吉が残した手記を軸に、日本軍と一体化していくメディアの実相に迫る本書。ぜひご一読ください。

★ 『差別はたいてい悪意のない人がする』再び注目 ★

首相秘書官(後に更迭)による性的マイノリティ差別発言に関わり、国際政治学者の三牧聖子さんが『朝日新聞デジタル』のコメントで、小社刊『差別はたいてい悪意のない人がする――見えない排除に気づくための10章』(キム・ジヘ 著)に言及しています。

「差別はたいてい悪意のない人がする」といわれる。日本でも翻訳され、多くの人々に読まれているキム・ジヘ氏の著作のタイトルだ(大月書店)。「同性婚を認めれば社会が変わってしまう」「差別の禁止や法的な措置を強化すると、人権侵害など逆の問題が出てくる」(自民党の西田昌司政調会長代理)と発言している政治家たちも、「悪意」はなく、「差別している」という自覚もないのだろう。しかし、そうした「悪意のない」言動が、マイノリティが日々経験している差別を見えなくさせ、差別を禁じる法整備を遅れさせ、婚姻をはじめマジョリティが当然のように享受している利益からマイノリティを排除することを正当化してきた。政治家たちも自分たちが行ってきた無数の「無自覚な差別」を自覚すべきだろう。先にあげたジヘ氏の本の副題は「見えない排除に気づくための10章」だ。

好評につき現在9刷。未読の方はこの機会にどうぞ。

【イベント】

★ 渡辺考×金平茂紀 『沖縄 戦火の放送局』出版記念トーク ★

「話題の本」欄でもご紹介した『沖縄 戦火の放送局――軍隊に飲み込まれたラジオ』(渡辺考 著)の出版記念イベントです。

著者の渡辺考さん(NHK沖縄放送局チーフ・ディレクター)と、金平茂紀さん(ジャーナリスト・早稲田大学客員教授)に対談いただきます。

【お知らせ】

★ 「アトロク・ブックフェア2022-2023」全国書店で開催中! ★

TBSラジオの人気番組「アフター6ジャンクション」(通称アトロク)で推薦・紹介された本およそ70冊が一堂に会する「アトロク・ブックフェア2022-2023」がジュンク堂書店池袋本店ほか全国の書店にて開催中です。

小社からは太田啓子さんの『これからの男の子たちへ』が選書。宇内梨沙アナウンサーによるおすすめコメントがPodcastで聞けるQRコードつきPOPもつけていただきました。特製リーフレットも配布中とのことです!

開催中・開催予定の店舗は公式サイトでご確認ください。

【編集後記】

社内で『資本論』の読書会を始めたというツイートに、かなりの反響がありました。読書会にもいろいろなやり方がありますが、「挫折しないこと」を重視して、報告者は決めずに一文一文、音読していく形式に。時間はかかりますが、これなら続けられそうです。昔はこういう学び合いのコミュニティが、職場にもありましたよね。(Q)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?