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映画感想:哀れなるものたち

普段、映画の感想などは知人に話すくらいで満足するので、改めて書き起こすことはしないのですが、色んな意味で衝撃の作品だったので書いてみます。

映画「哀れなるものたち」の感想です。

天才外科医によって蘇った若き女性ベラは、未知なる世界を知るため、大陸横断の冒険に出る。時代の偏見から解き放たれ、平等と解放を知ったベラは驚くべき成長を遂げる。 天才監督ヨルゴス・ランティモス&エマ・ストーンほか、超豪華キャストが未体験の驚きで世界を満たす最新作。

https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings

引用したあらすじだけ見ると、一人の女性の冒険譚、みたいに想像するのですが、見事に裏切られます。

以下、めちゃくちゃネタバレしますので、映画館でみたいかたはそっとブラウザを閉じてください。







中盤までのあらすじ

主人公ベラ(エマ・ストーン)は、若い女性の身なりをしていますが、天才外科医というかマッドサイエンティストに、死後、子供の脳を移植されている人物です。

劇中序盤は、天才外科医の家に閉じ込められ育てられていた環境から、社会性も知能も子供のままです。ちなみにこの家には、動物のキメラが普通に生活していたりします。

外出した時には癇癪を起こしたり、食事中に口に合わないものを吐き出したり、行動はまるで2歳児。

知能は子供、体は大人、そういう状態でベラはたまたま性の喜びに目覚めます。食事中のダイニングで自慰行為を始めたりします。

成長する中、やがて、天才外科医の助手として雇われていた青年と婚約をするのですが、外の世界をみたいという願望から、たまたま家に来ていた男性の実業家と旅に出てしまいます。

男との性行為に耽り、初めて見る街で経験を積んでいくベラですが、彼女を束縛したい男は彼女を豪華客船の旅に連れて行きます、なかば誘拐のような形で。

豪華客船での旅の中、男は奔放に振る舞うベラに手を焼いていますが、心はベラに奪われています。

さまざまな経験を積むベラですが、旅の途中、知り合った黒人男性に連れられて、社会の格差、貧困にあえぐ人々の様を目撃することになります。

ベラは無邪気に男の金(銀行口座に至るまで)を奪い、貧困層の人間に渡します。男は破産、パリで客船を降ろされ、ベラも無一文の状態で放り出されます。

生きていくため、そこでベラが取った行動は、娼館で働くことでした。

その後のあらすじ

働きながら、曲がりなりにも社会性や自己を身につけていくベラ。

紆余曲折あり、結果天才外科医が危篤状態と聞き、故郷に帰り、婚約者と結婚することになります。

結婚式場に「脳移植前のベラ」の旦那が現れ、ベラを連れ去り監禁してしまいます。ベラの運命はいかに…

ざっとしたあらすじはこんな感じです。

仮装×現実, 女性x男性, 自由x束縛

 いろんな視点で楽しめる映画だなと思いました。

「胎児の脳を移植」し蘇生した女性の物語という点ですでにファンタジーなのですが、部分部分で表現される人間社会の生々しさが妙に現実感があったり(娼婦のお店で執拗に性交シーンが描かれるところとか)

女性の経済的・精神的独立の物語にも読めますが、あくまでも古い「男性的観念上の社会」の上でソレが成立している物語であることも皮肉が効いていますし

ベラは生まれた時から(実は生まれる前からも)束縛を受けている人物なのですが、例えば、天才科学者の屋敷での生活、弁護士とのバカンスという名の豪華客船での閉じ込め、娼館で客を取る毎日、元旦那の邸宅での監禁(女性であることの尊厳を傷つける行為までされそうになる)

他にも、「子供x大人」「華美x汚泥」など、必ずしも二律背反にする必要はないと思うのですが、色々な切り口で楽しめる映画でした。

あ、もちろん、音楽も美術も最高です。

それだけでも見て良い気がします。



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