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ハートランドの遙かなる日々 第19章  リンデンホーフの丘

「おっそーい」

 リンデンホーフの丘にアルノルトが駈けて来たのは、約束の時間から大きく遅れていた。
 アフラは三十分も前から来ていたので、都合一時間近くも待っていたようだ。手には読んでいたのであろう装丁の美しい大きな本を持っている。
 今日のアフラは真新しい白のブリオーの上から緑のシュールコーを着て、かなり都会人風に着飾っている。

「今日はまた綺麗だね」
「そんなこと言ってごまかしてーっ」

 そう言いつつもその顔は少し赤くなった。

「ゴメン。ホントゴメン。昨夜はワインをかなり飲まされてね」
「ユッテさんに?」
「護衛騎士さ。僕の部屋に入り浸ってるんだ」
「それは災難ね」
「どうせ待つならホテルまで来れば良かったのに」
「本も読みたかったの。ユッテさんに捕まると、かなり時間を取られるから……」
「そうだな。今は顔も合わせにくいし……」
「何かあったの?」
「死刑か、追放か、処刑待ちだ」
「えーっ! 一体何したの?」
「ちょっと偶然入浴中の所が見えちゃって」
「ヤダーッ」
「でも殆ど顔しか見えなかったんだ。その後出たとこをまた廊下でかち合ったけど」
「追い出されても文句言えないわよ?」
「そ、そうなんだ」
「しっかり謝っておいてね」
「そうする」

 地図を示す場所は道を戻って広くなった橋を渡り、その対岸すぐの所にあった。そこは市庁舎で、多くの人がその前の広場に集まって話をしていた。
 市庁舎の中に入ると受付があり、そこにいる係員へアルノルトは紹介状を渡して言った。

「マンネッセさんという人に会いたいんですが」
「マンネッセさん? どっちの?」
「どっち? ここに名前が……」
「ああ、リューティケルさん? まだ会議中かも。少々長くなるので向こうでお待ち下さい」

 案内された市庁舎の斜向かいにある食堂のような待ち合い所で、兄妹はしばらく待った。
 その間にアルノルトはインクとペンを借り、昨日書きそびれた父への手紙を書き上げた。
 しばらくすると、さっきの係員がやって来て、ある部屋へ通された。
 そこには豪華な衣裳を着たハの字の髭を生やした騎士と初老の紳士が待っていた。二人の顔には見覚えがある。ラッペルスヴィル家の結婚披露パーティーで見た顔だ。

「ウーリの子かい?」
「こんにちは。僕がアルノルト・シュッペルです」
「はじめまして」

 アルノルトとアフラはだんだん貴族風になってきた礼の仕草をして言った。
 体格の良い髭の騎士が言った。

「私がリューティケル・マンネッセだ。こっちはここの市長だ」
「市長?」

 市長と言われた老紳士が言った。

「ヘンリッヒ・マンネッセだ。リューティケルとは親戚でね。紹介状の件は読んだよ。相手が王族とあれば話を聞かせてもらわねばな」
「まあ、座ってくれ」

 騎士と老紳士は書類をいろいろ持ってテーブルを囲み、二人と向き合って座った。
 まずはリューティケルがいろいろ聞いてきた。

「ルードルフ王子から銀貨十枚を取り戻したいとの事だが」
「はい。壺を割ったのは王子に押されたせいですので、弁償分を返して欲しいんです」
「王女が連名だと書いてあるが?」
「ええ。弁償は僕が銀貨二枚、こちらの妹が四枚、王女が残り四枚を分担して払っているんです。ですので、三人で連名として、全額を取り戻したいと思っています」
「なるほどそう言う事か。妹さんは同意済みと」
「はい! もちろんです」

 アフラは力強く頷いた。

「ならば、今日は王女はいないのか?」
「王女は……連れて来た方が良いですか?」
「連名ならば意志確認が必要だ。勝手に名前を語ったら大変だ」

 アルノルトは頭を掻いていると、アフラが言った。

「私、呼んで来る」
「大丈夫か?」
「近いし、大丈夫と思う」

 そう言ってアフラは部屋を出て行った。
 市長が首を捻って言った。

「しかし、ミュルナーは帝国執政官だ。本来王の側に立って施政する方の人間だ。よくこんな王族への訴えを取り持ってくれたものだ」
「そうなんですか? そこで偶然会ったんです」
「これから訴える当面の相手がミュルナーになる、と言えば判るだろう?」
「それは公正というか、何というか……」

 アルノルトはミュルナーの公正な処置に驚くよりない。

「まあ、あの人はコンスタンツ司教のお抱えでもあってな。となるとシュヴァーヴェン司教区全体の廷吏だ。法には公正で、市井にも理解がある人だ」
「本当にそうでした。助かりました」

 リューティケルはしかし苦い顔をして、髭を擦って言った。

「しかし代理人を私に持ってくる所が何とも策士だがな。これで王族と戦う羽目になったのだから」
「ご厄介をおかけします」

 市長がリューティケルに言った。

「王族をやり込められる稀な機会ではあるぞ」
「それも一興ではあるがな。だが、それなりの覚悟は見せて貰おう、代理人の費用は高いぞ」
「お幾らです?」
「成功報酬でいい。銀貨十枚返ってきたら、二枚貰おう」
「それなら大丈夫……です」
「あとは、始めに手付け金を少しは出して貰う事になっている。これは幾らでもいい」

 アルノルトは持っていた昨夜のチップのコインを出した。

「これで全財産です」
「いいだろう。この仕事、請けた」

 リューティケル・マンネッセはニッコリと笑った。
 王族を訴える社会的なリスクに比べれば、貰える額は決して多いとは言えなかった。しかしマンネッセ、そしてミュルナーも、気安く仕事を引き受けてくれた。
 アルノルトは彼らの公正な処置に尊敬の念を禁じ得なかった。

 しばらくすると、アフラと一緒にユッテがやって来た。二日酔いで寝ぼけ眼の護衛二人も引き連れている。
 リューティケルと市長は入り口まで迎え出て、丁重な挨拶をした。

「これはユッテ王女。お呼び立て致しまして恐縮です」
「どう言うこと? 連名で訴えるんですって?」

 アルノルトが立ち上がって言った。

「訴えて王子から銀貨十枚を取り返すんだ。四枚は君の分だからね」
「少し待てば私から言ってあげるのに」
「自分達で取り返すから意味があるのさ。少し協力してくれないかい? 君の名前があるとかなり強いらしい」

 アルノルトに期待を込めた目でそう言われたが、ユッテは頷けなかった。
 仮にも跡取りである兄に訴訟するというのは、家族からの批判が大き過ぎた。

「協力はしたいけど、私は外して。私の分は後で自分で言うわ」

 豆鉄砲を喰らったような顔で、アルノルトは一度リューティケルの方を振り返ってから、ユッテに言った。

「そうか。仕方ない。僕らで何とかするよ」
「その代わり、証言はしてあげる」

 アルノルトは「十分だ」と頷いて、リューティケルに言った。

「じゃあ王女の分は外して、妹と僕の分、銀貨六枚でお願いします」
「報酬は変わらないが、それでいいか?」
「構いません」
「まず調書を作るとしましょう。ユッテ王女の証言はかなり重要になるでしょう」

 リューティケルはユッテからその時の状況を聞き、その証言を基に調書を作り、訴状を書き上げて行った。
 出来上がった訴状はミュルナーに渡され、それを受けてルードルフ王子に告訴状が送られる。その返答を待って参事会とミュルナーで審理に掛けられ、しばらくすれば、結審の結果が出るとの事だった。

「五日を過ぎるとウーリに帰ってしまうのですが、間に合うでしょうか」

 アルノルトは手の空いていたマンネッセ市長に聞いた。

「王族が相手ならもっと気長に構えなきゃいかん。王子本人からの返答によってはかなり時間がかかるかも知れない。示談になればすぐ終わるだろうが」
「示談?」
「告訴取り下げを条件に示談金を支払うんだ」
「それが早いなら一番いいです」
「選ぶのは向こうだが、そうなる公算は大きい」

 ユッテはそれを聞いて言った。

「示談にするように兄に手紙を出しておくわ」

 これにはアルノルトは感謝せざるを得ない。

「ありがとう、ユッテを味方に付ければ心強いよ」
「それは光栄ね。因みに兄の連絡先は変わるわ。住所これね」

 ユッテは住所を書いた紙を取り出して、二人のマンネッセに見せた。

「これはユッテ王女。ご協力非常に助かります」

 市長は改めて恐懼して敬礼をし、その住所を写し取った。

「これなら一週間でお釣りが来るかも知れませんな」

 市長のその言葉にアルノルトとアフラは笑顔を向け合った。


   ◇   ◇   ◇  

 帰り道、橋の上でアルノルトはユッテに礼を言った。

「流石に歩いて来たようだね。ご足労ありがとう。これで何とかなりそうだ」
「連名出来なくてごめんなさいね。仮にも兄だし」
「いや、かえって証言の方が良かったかもしれない。ユッテ王女の証言があれば誤魔化したりは出来ないだろう。最大のサポートだよ。ありがとうユッテ王女」
「イヤよ。ユッテって呼んで」
「護衛がいるここで?」
「なおさらよ。あなたとの間に王女は抜き。良くって?」
「じゃあ、ありがとうユッテ」
「どう致しまして」

 そう言って微笑むユッテはいつもより眩しかった。
 アルノルトは昨日の事を謝るつもりだったが、どうにも言い出せず、横を向いた。

「いい眺めだ」

 橋から見るリマト川は水が湖から入ったエメラルド色で、両岸に高く立ち並ぶ建物も中欧の伝統様式で揃っていて美しい。
 両岸に教会の高い尖塔が見え、見れば川の中に建っている教会があったり、どういう訳か河口の真ん中に塔も建っている。
 川沿いにはパラソルを立てたオープンテラスが幾つもあった。

「わあ。チューリヒは本当にキレイな町ね」

 ユッテが欄干に乗り出してそう頷くと、アフラも並んで指を差した。

「オープンテラスで気持ち良さそうにワイン飲んでる」
「僕もいつかここでワインを飲みたいものだ」
「今すればいいじゃない?」
「もうすぐ仕事だし、さっきあそこで全財産を置いて来たんだ」
「じゃあ、示談が決まったらここでお祝いしましょ?」
「いいね。でも帰るまでに間に合うかな」

 ホテルに戻ると、ユッテとアフラは一緒にホテルの部屋へと上がって行き、アルノルトは早めだが仕事場へ行った。
 しかし今更ながら、アフラは療養中の身でユッテの部屋に入り浸っているようだと、アルノルトは内心でぼやいた。
 もっとも今日は自分の用事で連れ出したのではあったが。

 アルノルトはボーイ服に着替えると、コック長に荷物運びをさせて欲しいと願い出た。

「皿洗いも両方やりますので、お願いします」
「そうか。ボーイと両方はきついから控えようかと思っていたが、そう言うなら支配人に言っておこう」

 アルノルトは皿洗いが暇な時に、荷運びのボーイをする事になった。昼ご飯時が終わった頃にチェックイン客が多く来るので、それは丁度良かったのだ。
 玄関にチェックイン客が来ると、そこから客の大きな荷物を持って階段を上がる。
 それは予想外の重労働だったが、予想通りなことには重労働なもの程チップが貰えた。
 給料が週終わりしか出ないので、それまでに貴重な現金収入が貰え、アルノルトは内心大喜びだった。
 加えて、ユッテの部屋へ手紙や買い物の品を届けると、受け取った護衛騎士は客の中では一番多い額のチップをくれるのだった。
 この日はチップだけで一日の給料分くらいを稼いだ計算になった。
 そのお金の一部を使って、夕方には父への手紙を出す事が出来た。

 仕事が終わって部屋へ帰ると、護衛騎士二人にそのことを報告した。
 一人はレオナルド、もう一人はマルクと言った。

「これはすごいな」
「そんなに稼いだのか」
「ええ。レオナルドさんの助言のおかげです」
「俺もチップ弾んだぜ?」
「はい。マルクさんにも感謝してます。昨日貰った分も早速代理人の手付け金になりましたし」
「これならもしここを追い出されても帰れるんじゃないか?」
「今まで働いた分を合わせればそうですね。でも僕一人じゃなく、妹の分も稼がないといけないので」
「独り者の俺達よりしっかりしてるぜ。また何かあったらチップ弾んでやるよ」
「ありがとう。期待してます」

 そこへセシリアが扉をノックして入って来て言った。

「アルノルトさん。ちょっと……」

 レオナルドは「最後の審判が来たぜ」と言った。

「はい……行きます」

 アルノルトは部屋を出てセシリアに随いて行った。
 何を言われるかと思うと、心臓の鼓動が早くなった。
 通された部屋はベッドのある小さな個室だった。

「あれ? ここは」
「私の部屋です。そこに座って下さい」

 セシリアに椅子を勧められたが、アルノルトは座る前にまず謝った。

「昨夜はすいませんでした。ウロウロして浴室や王女の湯上がりを見てしまって」
「それは護衛騎士のせいもあるし、いいのです。ユッテ様はお咎め無しとの事です」
「でも、気にしてたようだったし」
「あれからすぐ気を取り直したようです。大丈夫でしたよ。ああいう事もありますから、あまり前の広間でウロウロしないでいて頂ければ、それで大丈夫です」
「良かった。追い出されるかと心配してました。騎士さんなんて普通に死刑だって言うんですよ」
「そんなことを? それは非道いですね」

 セシリアは不意に笑った。いつも大人びた神妙な顔をしていて笑顔を見たことが無かったので、ひどく可愛く見える。
 しかし、その顔はすぐに引き締まった。

「それより、お話が三つあります」
「そんなに? 何でしょう?」
「まず一つは、朝食をいつもご用意しているのですが、いつも食べに来て下さいませんね。ユッテ様はひどくそれを残念に思っていらっしゃるようです」
「あ、そうでしたね。今日は朝からちょっと出かける用事があって」
「ユッテ様は最近は早めにご起床されて、あなたの出勤前に設定した朝食時間に待っておられます」
「えっ。それは悪い事をしてました?」
「明日からは食べに来て下さいますか?」
「実は今日から仕事が昼からなんです。明日からは食べに行くと約束します。時間も遅くしましょう」
「それはユッテ様もお喜びでしょう。では、二つめです」
「何でしょう?」
「お風呂に入りませんか?」
「お風呂?」
「はい。今からロザーナとお湯を張りますので」
「あと一週間くらいは入らなくても平気だと?」
「いいえ。失礼ですが、少し匂います」
「そうかな?」

 アルノルトがあちこち匂いを嗅ぐが自分では判らない。
 セシリアはアルノルトに近付いて鼻を鳴らすと、手でバッテンを作った。

「仕事に影響しますでしょうし、ユッテ様と近く接する事もありますから、綺麗にしておいて貰わなくては」
「確かにそうですね。じゃあ入ります」
「良かった。じゃあ用意しますね」

 笑顔を見せたセシリアは部屋を出て行こうとした。

「あの、三つめは……」
「それは…………お風呂の後に、お渡しします」

 セシリアはそう言ってお風呂の用意に出て行った。
 風呂の用意はかなり大掛かりな仕事だ。釜場で炊いたお湯を湯桶に汲み、セシリアとロザーナで何度も往復してフォーレと言われる楕円形の風呂桶に入れて行く。さらにここのフォーレは普通サイズより一回り大きいので、往復回数は並大抵ではなかった。
 お湯の用意が終わるとアルノルトは浴室へ行き、たっぷりと張った湯に浸かった。
 湯加減も良く、体が伸ばせて入り心地は満点だ。
 たっぷりのお湯に浸かっていると皮脂汚れが浮き出て来て、疲れまで溶け出て行くようだ。

「結構汚れてたのかな」

 そこへセシリアがやって来た。

「お背中をお流ししましょうか?」

 アルノルトは慌ててカーテンを閉めて言った。

「大丈夫です。自分でやりますから!」
「まあ。アフラさんと同じですね」
「うちでは自分でやるんです!」
「実は、例の……お着替えを置いておきますね」

 カーテンの向こう側で、セシリアはそう言って浴室を出て行った。
 アルノルトは頭と体をしっかり洗い、風呂桶から出ると、着替えの置き場所に真新しいコットとパンツが置いてあった。コットは下着にも部屋着にもなりそうな質素な貫頭衣状のものだ。
 パンツは紐付きの猿股のウエストを長く、紐掛け箇所を多くアレンジして新調したものだ。三つ目の話というのはこれの事なのだろう。

「かっこいいな、これ」

 早速アルノルトはそれを穿いて紐を締めてみた。サイズは少し小さめだが大丈夫そうだ。
 ウエストが少し高いのはコルセット風にウエストを締める効果があるようだ。ここは女性用のアレンジと言えよう。
 何より生地にはシルクの光沢があり、只ならぬ高級感がある。

「もう男向けじゃないなこれ」

 アルノルトは着てしまえばもう返すことも出来ず、頭を掻いた。
 浴室を出ると広間の長椅子に座ってセシリアが待っていた。

「如何ですか? 着心地は」
「三つ目って、これですね?」

 アルノルトはコットの片方を一瞬捲ったが、若い女性に見せる物ではないとすぐ降ろした。

「着心地はとても良いです。亜麻布よりすべすべだし、かっこいいし」
「良かった。職人さんに掛け合って特注で作ったんですよ」

 そう言われると、女性用みたいだとはもう言えなくなった。

「でも、こんな高そうなの、いただけません」
「たくさん作りましたし、アフラさんにはもう渡す約束をしましたので、その一部だと思って頂ければ。それに、お着替えがあまり無いとお見受けしましたが」
「正直それは助かるのですが……。では、給料が入ったら、服のお代はお支払いします」
「アフラさんもそう仰ってましたが、ユッテ様はお金はいいと仰るし、そうなると間に立つ者は困るものです。ご遠慮なさるよりも、そこをお汲み下さいましたらと」
「そうですか……では、黙っていただくことにします」
「それが男らしくて素敵だと思います」
「いやあ、それ程でも……」

 アルノルトが予想以上に照れるので、セシリアは言った言葉を取り消したくなった。

「じゃあ、素敵ですくらいに訂正します」
「セシリアさんに褒めて貰えるなら、何でも嬉しいです」
「まあ」

 二人は笑い合ったが、細く開けたドアから覗いていたユッテがそこにいた。

「あれ、ユッテ?」

 そのドアを押し広げ、勢いよくユッテが出て来た。

「ちょっと! 聞いてれば、何よ。私がその服をアフラとあなたに作ってあげたのよ。私が感想を聞くべきだわ」

 アルノルトは腕を組んで言った。

「聞いてたんじゃないのか? それに立ち聞きは良くないな」

 ユッテは一度怯んでから言った。

「ここはドア一枚だから聞こえるの!」
「じゃあもう感想も聞いただろう?」
「そうだけど……そうじゃなくて! 服は気に入って貰えたかしら?」
「まあまあかな?」
「まあまあ? 穿き心地はいいんでしょう?」
「いいね。すごく。でもちょっと女っぽいのがね……」
「男女兼用だと聞いたけど? でもアフラには似合いそうだと思わない? その為にサイズも余分に作ったの。私も着たかったのもあるんだけど」
「そうだね。着せてみないとね。今日はアフラはいないのかい?」
「ええ。借りてる聖書を帰るまでに読破しないといけないんですって。ドイツ語とラテン語の聖書を比べ読みしてるのよ」
「うーむ。意外と勉強熱心だ」

 アルノルトは改めて感心して頷いた。

「そうでしょう? アフラは勉強を続ける方がいいと思うのよね」
「そうしたら君もしょっちゅう遊びに来れると?」
「そうしていたいけど、私は一週間の約束なの。城の家庭教師が待ってるから」
「まあ、村では日曜学校だけだから、ラテン語までは出来ないしな」
「何ならアフラを城で預かって、勉強させてあげてもいいのよ」
「馬鹿言うな!」

 アルノルトは急に声を荒らげて※怒鳴った。
 ユッテは目を丸くして手を口に当てて、急に黙り込んだ。
 アルノルトはこの目を見たことがあった。これはもう泣く前の顔だ。
 セシリアが責めるような目でアルノルトを見ている。
 アルノルトは仕方なく謝ることにした。

「怒鳴ってゴメン。でも……それは約束違反だ」
「ごめんなさい。ただ、アフラに勉強させてあげたいというだけで言ったのよ。でも、あと少しで別れてしまうのは、とても辛いわ」

 ユッテはそう言うと涙を滲ませ、自室へ駆け込んだ。そして扉の向こうからは泣き声が聞こえた。
 アルノルトは意気消沈してしまい、セシリアに謝って、部屋へ戻った。
 タダで泊めて貰っているというのに、無礼極まりない事を言った事は、他の女中や護衛騎士にも聞こえていた事だろう。
 今度こそ追い出されるかもしれないと、また今日も想いが巡った。
 そして、アフラに生まれたもう一つの危険を感じつつ、眠りに就いた。


 次の朝、目覚めたアルノルトは気が重かった。
 昨夜はユッテを泣かせた後だと言うのに、約束をしたので朝食には出なければいけない。
 部屋を出ると、セシリアが広間の奥に立っていて、一番奥の部屋へと案内された。
 今まで入ったことが無かったが、そこは少し豪華な大部屋になっていて、細く長いテーブルがそこにあった。
 ユッテは既にそのテーブルの先端の正面に座って待っていて、食事の準備も整っていた。

「おはよう。早起きだね」

 アルノルトがユッテに声を掛けると、ユッテはいつもより小さな声で言った。

「おはよ……」
「僕の座る席は……」

 セシリアが椅子を引いた場所は、ユッテの逆側、つまり長いテーブルの最終端だった。
 ユッテとの距離はかなり遠い。既にそこに食事も用意されていた。
 アルノルトはそこへ座り、取り敢えず食べようと手を伸ばしたが、ユッテが食事に手を付けないので、ここは貴族流のマナーがあったと思い直して短い食前の祈りを唱えた。
 ユッテもそれに合わせて短く「アーメン」とだけ祈り、二人は食事を始めた。
 テーブルの距離が遠いと会話も出来ず、マナーとしても食事中に大声で話すのは良くないので、極めて静かな朝食だった。ユッテは一口食べては手を休め、あまり食べる気が無いかのようだった。

「ごちそうさま」

 そしてパンだけを食べ終わると、アルノルトは見えない圧力に耐えかねて、すぐに自室へと帰った。
 ユッテはそれを物悲しい目で見送るだけだった。

 
 アルノルトはユッテの部屋にいるのも落ち着かず、ミュルナーの所へお礼に行く事にした。
 ミュルナーの公館は以前は裏の家に入ったが、表口の建物の方は広場前でもあり、アルノルトのいるホテルからは至近距離だった。尖り屋根の建物を確認し、アルノルトは戸を潜った。
 まだ誰もいない待合室からアルノルトは「スイマセン」と声を上げた。

「ああ、君か」

 奥の家からやって来たミュルナーは、アルノルトを見てすぐ判ったようで、すぐに応接室へと誘った。

「先日はご紹介ありがとうございました」
「朝食中だったんだ。もう食べたか?」
「はい。あ、いいえ」
「どっちだ? まあいい」

 ミュルナーは再び奥に引っ込み、婦人と一緒に応接室に朝食を持ち込んで来た。

「どうぞ。ご遠慮なく」

 夫人はアルノルトにもパンとサラダ、そしてハーブティーを出してくれた。

「ありがとうございます」

 アルノルトは二回目の朝食だったが、さっきは気を遣ってあまり食べられなかったので、まだ入りそうだった。
 ミュルナーは食べながら話を始めた。

「早速、訴状が来とるぞ」
「王子の新住所も判りますか?」
「ああ、もう昨日のうちに王子への書状は送ったよ。すぐ届くだろう」
「素早いご手配で、助かります」
「王女は連名で無く、証言に回ったようだな。それがかなり有効だった」
「あの方が良かったと思ってます」
「そうだ。あれで大正解だった。王族同士で訴訟なんて世間が奇異に見て騒ぎ出すからな」
「王女に断られただけなんです。そう言う考えは無かったので、少し考えが足りませんでした」
「では王女が賢明だったと言うべきか。それで、用件は何だ?」
「今回のお礼をしたくて」
「謝礼はいらんぞ。賄賂だと思われる。それにお前の代理人はマンネッセ、王子の代理人は私だ。訴訟相手には礼を言うものではないぞ」
「はい。あとは……なるべく早く示談にして貰えたらと」
「示談はほぼ確実だろう」
「本当ですか?」
「ああ、王族は基本的に遠方だし、忙しいからな。側近が対応するだろうが、彼らは何度も来るよりその方がいいんだ。後は額面だが、訴状通り銀貨六枚でいいのか」
「はい六枚です」
「それでいいなら話は早い。お前さんが額に納得すればそれで決まりだ」
「明明後日にウーリへ帰るので、早いに越した事は無いです」
「そうか、それでか。しかしそれは間に合わないかもしれんな。ところで本来示談金はもう少し高くてもいいものだ。代理人にも諸費用が掛かるかからな」
「あ、そうですね。それがありました。銀貨二枚払うんです」
「それは安いな」
「それも足して示談金は八枚になりませんか?」
「そう言うやり取りは代理人を通すものだ。直接やり取りすると、教唆が疑われる。儂の信用に傷が付くからな」
「はあ、気を付けます」
「まあ、そんなにバカ正直で明け透けなのは、こちらもやり易いというものだがな」

 そう言ってミュルナーは大きく笑った。

「市庁舎でこの件を話した時、リューティケルさんと一緒に市長にも話したんです。代理人と市長とは一緒に動くものなんですか?」
「市長も一緒だったか。まあ同じマンネッセ家だからな。市長は参事会員の筆頭だ。最高判事にはなるが、参事会の中にいるという事ではそれ程違いは無くなって来ている。むしろ参事会員のリューティケルの方が行動的で力があるくらいだ。有りすぎて困っとる」
「へえ。そうなんですね。参事会やマンネッセ家と帝国執政官とはどういった関係になるんですか? 敵対しているようにも見えますが」
「敵対というより単に派閥争いだな。チューリヒは帝国自由都市だから基本は参事会員による自治だ。参事会員にも派閥があってそこに私も一枚噛んでいる。しかし私も忙しくてな。今や参事会に任せっぱなしだ。ここ以外にコンスタンツ司教の案件を扱っているから、彼の依頼で司教区やいろんな修道院関係を渡り歩くようになっているしな」
「そう聞いてすごい方に会えたと思ったものです」
「まだあるぞ。君のような自由人だ。普通の人はなかなか参事会員とパイプが無くて公訴が出来ないから、それをここで受け付けている。帝国執政官というと王の代理のように言われるが、ツンフトの職人や市井の人に努めて公平に接しているのがこの私だ」
「それもまた、私の父のようですね。いえ、もっと素晴らしい!」
「そうか。今、この辺の帝国執政官では一番忙しいだろう。昔は相方で手伝ってくれたラッペルスヴィル家も、先代は若死するし、今や余所者が来てしっかりしないし、困ったものだ」
「ラッペルスヴィル家に婿入りしたルーディックなら、友人ですよ」
「なんと! 早くそれを言え。ラッペルスヴィル家の名はここでは最大の力があるぞ。チューリヒは彼の保護国のようなものだったからな。彼というのは今やもう先代、先先代だが」
「そうなんでしたか? どおりで色々大きいと……そう言えば、ウーリもそうでしたか」
「友人と見込んで、一つ伝言をお願いしたい。一度ここに勉強に顔を出せと伝えておいてくれ」
「お安いご用です」
「頼んだぞ。私にも息子がいてな。そろそろ本腰で次代を育てんとな」

 アルノルトはミュルナーに一つ礼を返せそうで、内心喜んだ。

 そして、仕事場へ戻ったアルノルトは、ボーイ服に着替え、少し早めに仕事に出た。皿洗いをいつもより早く終わらせると、ボーイ仕事が出来るよう玄関のフロントに行ってみた。
 そこには二人のボーイが既にいて、一人はアルノルトと同じ背格好、もう一人は背の高い年長の青年だった。

「やあ。同じに仕事待ちだね?」

 アルノルトが声を掛けるが、二人は何か内緒話をしている。
 クオニーがアルノルトのところに来て言った。

「コック長がさっき呼んでたよ」
「本当?」

 アルノルトは厨房のコック長の所へ行ってみた。

「呼んでないぞ? 今行ったばかりだろ。皿はまだ溜まってないし」

 コック長はそう言って不審がる。

「誰に聞いた?」
「小さい方のボーイです」
「クオニーか。してやられたかもな」

 コック長はそう言って笑うのみだった。
 アルノルトがフロントに戻ってみると、家族連れのチェックイン客が到着していて、二人のボーイが鞄を担いで階段を上がって行く所だった。
 手伝おうとして近寄ると、背の高い方のボーイは「触るな」とアルノルトを牽制した。
 そして一人で残る二つの荷物を持って階段を上がって行った。
 残されたアルノルトはどういう事か判らず、フロントの陰で首を捻っていると、大きな鞄を持ったチェックイン客がやって来た。
 客の後に立ってフロント係からの指示を待っていると、階段を降りて来たクオニーがやって来て言った。

「上で女の子が呼んでたよ」
「女の子?」

 アルノルトはユッテかアフラかと思いつつ、そこをクオニーに任せ、階段を上がって行った。
 ユッテの部屋へ行って見ると、そこにはユッテは不在で、アフラと一緒にエーテンバッハ教会にいるのだとセシリアが教えてくれた。

「セシリアさんも呼んでない?」
「ええ」
「呼んでるって聞いたんです。どういう事だろう?」
「きっと人違いでしょう。頑張って下さいね」
「ありがとう」

 セシリアに励まされて少し元気を貰ったアルノルトは、再びフロントへと戻って行った。
 フロントに戻ると、今度は年長の方のボーイ、グランがスイートルームの清掃を指示して来た。

「上客の部屋だ。隅々まで念入りに綺麗に磨いてくれよ」
「はい」

 アルノルトはトンボ返りでまた階段を上り、スイートルームの清掃をした。高級な壺や美術品が多く置いてあるので、アルノルトはその周辺は怖くて近寄れなかった。
 この清掃にはかなりの時間が掛かり、気が付けば日が暮れていた。夕方からは休憩を挟んで皿洗いの仕事になるので、今日はチップを一銭も貰えず仕舞いだった事になる。
 休憩時間になってアルノルトが部屋へ帰って来ると、広間で騎士レオナルドが声を掛けて来た。

「どうだい。今日も稼いだかい?」
「それが、今日はチップがゼロだったんだ」
「ゼロ? 愛想が悪かったんじゃないか?」
「それが、ポーターするのを邪魔されてたみたい」
「邪魔? 誰が?」
「同じ年くらいのボーイとか。変な用を言われてウロウロし通しだったんだ」
「やっかみだな」
「そうみたい?」
「大方、昨日チップをアルノルトに持ってかれたから、やっかんでるんだろう」
「そうか! そう言う事だ!」

 そう話していると、扉が開いて、ユッテが出て来た。

「何? 嫌がらせされたの? 苦情を入れる?」
「いいよ。向こうも生活が掛かってるだろうし、自分で何とかする」
「出来る事があれば言ってね」
「今日は上で女の子が呼んでるなんて嘘で呼ばれたんだ。呼ばないでくれれば」
「何それ。それじゃあ全然解決にならないわ。実際呼びたい時もあるし」
「じゃあ、呼ぶ時は何か符丁を決めておこう。水が欲しいと入れておくとか」
「わかったわ。そうしましょう」
「俺も協力するよ。用があったらアルノルトを指名してやるさ。もちろんチップも付けてな」
「私もそうしようかしら」
「でも、あまり無理はしない程度で……」

 そうは言うものの、アルノルトは感謝で頭が下がる想いだ。

「食事はちゃんと出来てる? 夕食は?」
「食べて来たよ。厨房で出てるからね」
「足りなかったら言ってね。ここにあるフルーツは自由に持って行っていいし」
「ありがとう。じゃあ、早速一つ戴くよ」

 葡萄を手に取り、アルノルトはそれを食べながら部屋へ戻っていった。

 次の日の朝、アルノルトは目覚めると大部屋へやって来た。
 まだ時間がいつもより早かったが、既にユッテはテーブル奥の頭端に座っていた。

「おはよう。今日は早いのね」
「おはよう。君もいつもこんな早いのかい?」
「いつもこれくらいかしら? 食事はまだ揃ってないようだけど、どうぞ座って」

 アルノルトはテーブル後方の最終端に用意された席に座ろうとしたが、パンの皿を手に取ってユッテのすぐ近くに持って来て座った。

「朝は大抵パンだけなんだ。あそこだと席が遠すぎて話も出来ないから、ここに座るよ」
「そうね。食べながら話さないようにだったそうだけど、いいわ。早めだけど、もう食べましょう」

 ユッテは短く祈りの言葉を唱え、アルノルトはそれに「アーメン」とだけ合わせ、二人は食事を始めた。
 食事の順はやはりユッテが先が正しいようで、ユッテは合図のようにパンを控えめに小さく囓り、少し首を傾げてから話し始めた。

「仕事はきつくない?」
「ああ、良くして貰ってる。休憩を多めにくれるんだ」
「牧場の仕事とどっちがいい?」
「当然、牧場の方がいいさ。ここでは心がすり減るようだ」
「そう。でも、どうして人は町やお城ではそうなるのかしらね」
「それは……人は自然があってこそ生きてるってことだよ」
「自然? アフラの先生もそんなような事を言ってたわ」
「羊は自然から切り離したら生きていけない。人だってそうだ。どこかしら生きて行けてないんだ。それを心のどこかで感じるんだろうね」
「そうかもしれないわね」
「自然と生きてるって言うなら、ジェミのような山に生きる民の方がもっと凄いけどね。山の壮絶な自然の中では、僕なんてとても敵わない」
「アルノルトが言うなら相当ね」
「どうせこんな足留めを食うなら、ジェミの家で留まりたかったよ」
「ここだと不服みたいじゃない?」
「そうじゃないよ。ジェミの山の家に一度来てと言われてたんだ」
「そう。一つニュースがあるわ」
「何だい?」
「イサベラが裁判が終わり次第、チューリヒに来るそうよ」
「向こうでも裁判してるんだ」
「ウーリでの裁判って言ってたけど? 例の牛の件で重要な証人なんだそうよ」
「そう言えば犯人捕まってたよ。見たかったな。それで何しに?」
「何でもクヌフウタさんの希望もあって、この辺りの修道院の巡礼だとか。私が手紙書いたのもあるんだけど」
「この辺は修道院が多いからね」
「会派が全部あるんじゃないかしら。アフラお気に入りの先生みたいな最先端もいるし」
「お気に入りの先生なんているんだ」
「何回も言ってたじゃない。最終日に講義があるって言ってた先生」
「そう言えば言ってたっけ」
「兄としては気にならないの?」
「お気に入りの先生がいるのは良い事じゃないか?」
「アフラったらその先生の話を聞いて泣き出しちゃって、弟子にして下さいとまで言ったのよ」
「へ、へえ。そんな事あったんだ……」
「どう? 気になって来た?」
「そうだね。かなり特別な先生みたいだ」
「じゃあ、日曜日には一緒に講義に来るわね?」
「日曜は仕事は終わってるけど、帰る日じゃなかったっけ?」
「一日期間延長って言ってたのはどうなったのかしら?」
「そう言う事だったのか。でもまあまず父さんはダメだろうな」
「まあ、ダメって言ってもアフラは絶対行くわね」
「そうなのか? じゃあ、アフラが行くなら、僕は行かなきゃな……」
「そう来なくちゃ。じゃあ決まりね。隣の州、ヴィンテルトゥールまで行くから、少し早起きしてね」
「そんな遠いのか。気に入り過ぎじゃないか?」
「熱心でしょう? 先生に褒められるくらい覚えもいいの。アフラはもっと続けて勉強するべきだと思うのよね」
「前の話なら無しだぞ。アフラはウーリで生きるんだ」
「アフラは自由だわ。私なんて敵わないくらい。つい最近だってうっかり王妃になりかけたり、修道女にもなりかけたくらいよ?」
「そんなに危なかったのか……」

 アルノルトは事実の示すその意味を知って溜息が出、それを苦労して呑み込んだ。

「言っておくけど、私は勧めてないわ。止めていた方よ。アフラが何処へ向かうかなんて、すでに誰にも予想出来ない所にあるの。でも、もしアフラが望む所なら、それを止めないで欲しいものね。それが、アフラの自由を奪わない事ではなくて?」
「ウーリからは何も奪わない、連れて行かないと言うのが、約束だったはずだ」

 そう言ってアルノルトとユッテはしばし見つめ合った。そうとは言わないが、二人の意思が互いの視線の先でぶつかり合い、火花を散らした。それは頭が痛くなる程だった。

「ごちそうさま。いい食事だったよ」
「ええ。とても有意義なお話だったわ」

 アルノルトが椅子から立ち上がると、すぐ後でセシリアが椅子を引いた。

「セシリアさん……いつからそこに……」
「始めからいますよ?」
「また怒鳴ったりしないで良かった……」

 アルノルトはそう言って、部屋を出て行った。
 仕事まではまだ時間がある。
 アルノルトはこう言う時、リンデンホーフの丘を散歩して過ごすのだった。


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