見出し画像

ヤフーニュースでは「イングランド封鎖」と「芸能人の結婚」が等価になる件

▼2021年の新年の印象を、「暗礁に乗り上げた」と言った友人がいるが、そうなるかもしれないし、ならないかもしれない。しかし、新型コロナウイルスの影響で、いいニュースが少ないことは確かだ。

日本では1月7日に菅総理大臣が緊急事態宣言を出すようだ。

▼ヤフーニュースの主要トピックス一覧から、イギリスのニュース。2021年1月5日配信。

〈英首相、イングランド全土の封鎖発表 スコットランドに続き〉

〈【AFP=時事】(更新)ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相は4日、テレビ演説を行い、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める措置として、5600万人近くが暮らすイングランド全土を対象に全面的なロックダウン(都市封鎖)措置を再び導入すると発表した。施行は6日からで、2月中旬まで続く可能性がある。

 英国ではこれに先立ち、スコットランド自治政府も同様の措置を5日午前0時から施行すると発表していた。

 今回の措置は、昨年3月末から6月までの3か月間にわたり実施された最初のロックダウンと似た内容で、小中学校の閉鎖や、在宅勤務の要請、外出制限(運動や必需品の買い出し、医療目的を除く)、同居人以外の人との集まりの禁止が含まれる。

 英国では現在、感染力の高い変異種が原因とみられる感染拡大が続き、致死率は世界最悪の水準まで上昇。イングランドでは既に全体の4分の3の地域を対象に最も厳しい行動制限が課されているが、感染拡大を食い止めるには至っていなかった。【翻訳編集】 AFPBB News〉

▼このスコットランド封鎖に続く「イングランド閉鎖」のニュースは、ヤフーニュースの主要トピックス一覧では、次のようなニュースと並んで表示されていた。

〈関脇の照ノ富士 結婚していた/1/5(火) 7:24〉

〈英、イングランド全土を封鎖/1/5(火) 6:28〉

〈緊急宣言へ 暮らしどうなる/1/5(火) 6:10〉

〈板野友美とヤクルト高橋 結婚/1/5(火) 3:35〉

▼筆者が気になるのは、「ふだんネットニュースだけを見ている人は、どのような価値判断をもとにしたニュースに接しているのか」だ。

たとえば、ヤフーの主要トピックスには、芸能ニュースの数が多すぎる。

ヤフーニュースのような、すべてを等価値にするカタログ化には、利点もあれば、心配な点もある。

上記のような並びだと、「照ノ富士が結婚していた」というニュースと、「板野友美という芸能人がプロ野球選手と結婚した」というニュースと、「イングランド全土の閉鎖」というニュースが、等価で並んでいるわけだ。

▼新聞では、これらのニュースが等価に並ぶことはありえない。

新聞を日常的に読んでいる人と、まったく読まない人とでは、「ネットでカタログ化されたニュース群」に接する意味が異(こと)なっていると思う。

▼複数の新聞を読んでいると、まず、世の中には大きなニュースと小さなニュースがあり、それらの大小は、その日のデスクたちが決めていること、そしてメディアによって大小の判断基準が違うことがわかる。

なぜそうしたことがわかるのかといえば、新聞では、ニュースによって「見出しの大きさ」が違うからだ。なぜ見出しの大きさが違うかといえば、それは、その新聞が「編集」されているからだ。

▼ニュースを読む人は、誰でも自分で価値判断し、ニュースの大小を定めているわけだが、それは、多かれ少なかれマスメディアを通して得てきた社会性があって、それがものをいう。

▼いっぽう、ヤフーの主要トピックスには、「わざわざ等価に並べる」という編集が加えられていて、とても便利だ。

しかし筆者には、これだけを情報源にして生きていく勇気はない。

なぜだろう、と少し考えてみたが、「社会性」を失いたくない、自分の人生を「編集」する力を失いたくない、という思いが強いからだろう。

▼たとえばヤフーニュースのような、芸能界の話が多すぎるサイトでしか、「ニュース」とか「報道」というものに接しない人にとって、ニュースの価値判断はどうなっていくのだろうか。

これは、とても新しい問題だと思う。

2021年は、これまで新聞や雑誌が「編集」を通して果たしてきた、社会的な「問題設定」の機能がますます重要になるだろう。

(2021年1月7日)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?