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カレーは味噌汁である サラダは漬け物である

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20代で「食」のコペルニクス的転回を経験して以来、世界各地で遭遇した「食」の「常識」を覆す体験・発見について、時には現代の思想や芸術の視点から、縦横無尽に論じていく。
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記事一覧

中央アジアの超絶美味たち――アメリカのはるか彼方で

ユーラシア大陸横断の旅 13年前、パリに1年間滞在していた時、私は国内外、旅を重ねた。国外…

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コーヒーの値段はあなた次第のカフェ

京都は上高野に住んでいた時の、ある日の出来事である。 散歩の途中、偶然、不思議な世界に迷…

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キルギスから中国へ――絶食、カップ麺、「マルガリータ」

国境越えの夜行バス 前回ご紹介した、パリから上海へのユーラシア大陸横断の旅は、いよいよ大…

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日本に理想的なサンドイッチは存在しない?

日本での最高のサンドイッチ 私は、実は、サンドイッチ好きである。しかし、日本でなかなか理…

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糞尿の香りのする高級ワイン?!

ワインとの出会い ワインと私の歴史は、フランス留学時代に始まる。 私が渡仏した1984年は、…

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京都の「おもてなし」の差別主義とファシズム?

京都でのカルチャー・ショック 私は9年前、京都に越してきた。 それまでは、外国生活を除け…

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京都で完璧なステーキ・フリットの肉は○○○○産だった!?

フランス人の「定食」 フランス人が最も好んで食べる料理は何だろうか。地域にもよるだろうが、少なくともパリ(近郊)では、ステーキ(一般に「ビフテク (bifteck)」という――日本の「ビフテキ」の語源)ではないだろうか。 (年代にもよるが)フランス人は基本肉食。鶏豚牛からジビエまで。それにありとあらゆる内蔵の部位を様々な料理法で楽しむ。その中で、家庭、そして外食でも最も頻繁に何気なく食べてしまうものはやはり牛肉のステーキだと思う。 いろんな部位をステーキとして焼くが、e

京都で「寿司飯ダンス」

京都で「江戸前」を探し歩く 私は根っからの寿司好きである、と前に述べた。この世に誕生する…

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二つの「美食」             ――ブリア=サヴァランと魯山人

フランス人にとっての食の「三種の神器」 皆さんは、フランス人の食の伝統的な「三種の神器」…

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ニューヨークの歩道の味は?(前編)   ――「不味」の楽園、ニューヨーク――

前回は、のけぞるほど不味かったアムステルダムのインドネシア料理の話と、なぜプロテスタント…

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二つのヨーロッパ:なぜプロテスタントの国の料理はのけぞるほど不味いのか

『バベットの晩餐会』というデンマーク映画がある。1987年度のアカデミー賞最優秀外国語映画賞…

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サラダは漬け物である

 日本でのサラダの作り方を思い浮かべてみよう。  好みの野菜を食べやすい大きさに切り、小…

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カレーは味噌汁である

 ある日、カレーを作っていて、ふと疑問に思った。なぜ、(少なくとも当時の)大方の市販のカ…

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カレーは味噌汁である、サラダは漬物である ―食の比較文化的エッセイ―

私は、フランス留学中の20歳代、食の「コペルニクス的転回」を経験した。それまで、ただお腹が一杯になればいいとしか思っていなかった私が、ある深夜、自室で食べたカップヌードルのおかげで、以来、食べるものすべてがマンダラのように、あるいは交響曲のように、口の中で展開するようになった。ちょうど、音楽の世界で「絶対音感」があるように、私の舌はいつのまにか「絶対味覚」を身につけ、いかなる情報や刷り込みにも影響されることなく、食の中に、時として常識をくつがえすような経験・発見をしていった。